第31話
「こ!?こいつ何してくれてやがる!」
「ちょ!?何だコイツは!?」
「おい!話がちげーだろうが!襲ってこないんじゃ無かったのか!?」
「そう言う場合じゃ無いだろ!構えろ!こっち向きやがったぞ!?」
余りにもその行動は遅い。しかも構えも稚拙。コレに私は溜息しか出なかった。
(いや、だからと言って許さんが、な。とは言え、時間も掛けてはいられん。貴様らの様な下らん者たちに慈悲を掛けてやる気も無い)
相手の持つ悪意が私には手に取る様に分かる。邪悪、こいつらはきっと反省もせずに自分のこれまでの行動を顧みず逆恨みをするのだろう。
何処までも他責、その様な輩への罰には今後の一生を苦悶に塗れた物にしてやるに限る。自責の念が持てない輩に慈悲は必要あるまい。
(これまでの被害者と同じ目に遭わせてやろう。いや、それ以上の悪夢を受けて生き地獄に堕ちろ。さあ、お前らの様な者たちの子種などこの世に残しておく価値もあるまい・・・死ね!)
私は剣を抜く。しかしこれは使わない。
奴等に剣を意識させて隙を作り出させる為だけに抜いたのだ。
その意識の隙間を見逃さずに私は踏み込む。と同時に蹴り上げを行う。
それは見事に命中。私に一番近くに居た男の「玉」へと的確に衝撃を与える。
この展開に残りの三人は驚きで硬直するだけ。
後はその隙に三人への人中に一撃ずつ加えて戦闘継続困難にしていく。眉間、鳩尾、喉。
奴らは私の動きに付いて来れていない。素人も同然だ。受け止める事も、避ける事も、そもそもにこちらの動きに反応すらできちゃいなかった。
(武器を持って気を大きくしただけの馬鹿、屑、その類だな。先程までの怒りもこの様では霧散もする)
しかし私がこいつらに与える罰に容赦は無い。打撃を受けた男たちは呻きを上げて体を曲げ悶えている。
(貴様らに神が罰を下さぬなら、私が下す。まあ、貴様らの様な者たちは痛みを知れども改心する事は無かろうが)
戦闘困難に陥ったその男たちのそれぞれの「サオ」と「タマ」を順に潰して行く。そこに加減は無い。手心も無い。徹底的、ソレを心掛ける。
私は神を信仰はしてはいないが、その存在を否定もしない。
人の犯した罪には人が罰を下す。ソレが傲慢だと分かっていようとも。
(私は私の正義に従う。そしてこいつらはダメだ。見逃すに値しない)
私の祖国の法に従えば、ここで斬り捨てて命を奪ってしまっても良かった。
しかしここは他国、その法に従わねばならない。無法はいけない。
(だからと言って只こいつらを捕縛するだけ、と言うのは私の中の正義が許さなかった。ここらが落し所だな)
きっとこいつらはこれまでにも女性に対してこの様な真似を幾つもして来たのだろう。それは許せる事では無い。
国が今までこの者たちを捕まえてこなかったからこそ、今、制裁を加えるのが私になった。
只それだけの事だ。
ここで私を追って来ていた女性冒険者四名がやって来た。
「うっわ、こいつ等って例のあれじゃん?って、全員死んでるんですけどー?ウケる。」
「いやいや、虫の息って感じかしら?あ、奥の子大丈夫?被害者?」
「アンちゃん正義の味方したっぽい~?カッコヨ!屑どもザマァじゃんね!スッキリスッキリ~。」
「あーあ、これ、報告と被害者の保護しなくちゃダメでしょ。通報しなくちゃ・・・あーもう、面倒だわ。取り調べも私たち受けなくちゃいけない展開じゃん。いっその事に見なかった事に出来ないかな?・・・できないですね、ハイワカリマシタ・・・」
一人だけガックリと肩を落としている。ソレを慰めてやりたくても言葉が理解できていないし、私は喋ろうとしても「うが・・・」とか「ぐおぉ・・・」とか「がぁぁ」とか呻くしかできないので諦める。
そもそもに何にそんなに気落ちしているのかの理由なども分からない。
取り合えず後はこの場をこの四人に任せて私は下の階層を目指す事にしてここを去る事にして動く。
だが駄目だった。そんな私を引き留めて来る者が居た。
しかも腕をグイッと掴んで来て引っ張られた。
「もーう!ちょっとちょっと!アンちゃんが居なくちゃダメでしょー?ホラホラ、ヒーローが現場をクールに名も告げずに去って行く展開も好きだけどー。」
何て自由奔放なんだと、そんな感想を抱く。無邪気で、そして大胆に過ぎる。
その冒険者はアンデッドの私へ恐怖の欠片すら持っていない様子。
そうで無ければ腕を掴んで引き止めると言った事など出来ようはずがない。
(生者に対してどの様な影響が出るか分からんから、こうして直接に触れて来るのは止しておくべきだ。そう伝えたいのだがな)
しかし多分ソレを伝えた所で無駄なのだろうなと言うのが何となく分かった。その輝く笑顔に。
こうして私はこの場に留められてしまった。今後の展開が全く想像も付かない。




