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第30話

 私は小さく溜息を吐いた。何処に行っても人と言う存在の根本にあるモノは同じなのだなと。


 目の前で暴漢に襲われているであろう少女を見て、そう思った。


 私はここに来て一度外の様子をこの目で見ている。


 そこでここは祖国を圧倒的に超える文明を持っている国なのだと、即座に理解できた。


 そんな高度で恐らくは緻密な社会であろうが、そこに住む人の、そう言った中身と言うのは国が変わっても同じ、変わらぬのだと、今目の前にしている光景から悟りを無理やり押し付けられている。


 五人組の男たち、外道の臭いをまき散らして汚らしい笑みを浮かべて壁際に追い込んだ少女を見つめている。


 その手には武器、脅しを掛ける様にして少女へと向けられているソレ。


 少女の顔には殴られただろう痣がある。怯えきっていて男たちへと向ける視線には困惑、恐怖がふんだんに混じった顔になっていた。


(ああ、私の姿が視界に入っているなあの様子では。悪党どもはこちらに背を向けていて一向にこちらに気付いていない。間抜けが。貴様らの様な輩が私は一等嫌いだ・・・いや、まだ悪と決め付けるのは早かったな)


 この者たちの間に何か理由があってこの様な場面になっていると言った可能性も無くは無い。


 もしかしたら少女の方が殴られて当然の事をしていると言った事もあり得るかもしれないのだ。


 けれど、私のこれまでの経験上、この様な状況で「少女の方が悪い」などと言った事案は皆無だった。


 ならばこの男どもを制圧しても問題は無い。いたいけな少女が痛みでその顔を歪めている様な状況が目の前にあるのに、そのニヤケ面には反吐が出そうになるから。


 さっさとこいつらをぶっ飛ばせば問題は解決だ。そう、私情だ。今の私は既にもう死んだと言える身。騎士団に所属していた頃とは掛け離れた。


 ならば、もう、良いのだろう。この男たちが「救い様の無い」と判断したなら、私は私の正義に則って、この剣を抜く。


 もしも少女の方が寧ろ悪党で、ここで助けた瞬間に逃げだそうとする動きを見せたなら、その時はその時に動けば良い。


(まあ、あの様子であれば私への恐怖で足腰が立たぬと言った感じだろう。さて、ここで先ずは音を立てて男共の行動を観察するか)


 問答無用で男共をぶっ飛ばす、などと言った事をする気は無い。確認は大事だ。


 なのでここで「私が来た」と言った事を示す為にワザと音を出す。その場で足を踏み鳴らして。


 その音で男共は私に気付いて勢い良くこちらに振り返る。


 そこで男共は驚愕と言う間抜け面をこちらに披露して来た。


「何だと!?ここら辺にはもうゴブリン共は一切いなかったんじゃねーのか!・・・あん?」

「は?おいおい、アンデッドナイトだと?アイツはもうコボルトの階層の奥に行ってコッチに居るはずがないだろ。」

「へっ!別にどうでも良いだろ。こいつはどうにも俺たちに対しては攻撃してこないって話しだっただろ?なら気にしなくてもいいじゃん。」

「あっちに行ってろ、しッしッ!テメーの出る幕じゃねーんだよ。興が削がれたぜ。」

「こんなの気にせずにさっさとやっちまうべ。俺、もう辛抱堪らんのだが?これまでにも何回かやって来たけど、一番良い顔してるぜこの小娘はよぉ。」


 言語は分からない。だが、こいつらが普段から悪行を積み重ねて来ていた者たちだと言う事だけは分かりたくも無いが、理解した。


 だから、容赦はしない。この国の法に則って本来ならこいつらを裁くのが良いのだろう。


 しかし、この沸々と湧いて来る怒りはどうにもこいつらを過剰に痛めつけなくては治まりそうにない。


 私には分かった。こいつらが普段からこの様な真似を重ねて来ている事が。


 そして救い様が無いと。


(拳で行くか。ああ、後方からはあの四人が来ているな。ならそちらにこの場を任せると言った事も出来そうだが、許せんな、特に、股間を膨らませているヤツ、先ずは、お前だ)


 しかし私はきっとここでは「流れ者」とか「部外者」とか「異物」とか、そう言った立場である事は承知している。


 ならばここでこの男共を斬り捨てて殺す事は、してはならないと冷静な判断を出す。


 私を後を追って来ている女性冒険者たちに後を引き継ぐ、それで収める事にした。


 しかしどうしても一人だけ、堪忍が出来ぬ者が居る。


 興奮、怯える少女の姿を見てなのか、暴力に酔いしれての事か。股間を弄って今にもズボンを脱ごうとする仕草をしている輩。


 ロクでも無い、そう断ずる。私は全力の一撃をそいつに加える為に四肢に力を入れ、そして。


「ぬがッ・・・!」


 その男の股間を思い切り蹴り上げてやった。


 そうして男がその衝撃で隙を作り出した所に間髪入れずに無防備になった顎を打ち抜いて意識を朦朧とさせる。


(ここで完全に意識を断たぬ様にする力加減が肝心だ。さあ、キサマはこれまでにどれだけの者たちに危害を加えて来たのだ?その十分の一でも、五分の一でも、痛みを味わえ。そして悔いろ、一生涯だ)


 ソイツを突き飛ばして倒れさせ、仰向けにすると私は一息に踏み抜く。


 何を?それは、その男の「ナニ」と「タマ」をだ。


 そいつの汚い悲鳴が通路に盛大に響くが、ソレを私は一切気にしない。何度も何度も、その二つを「破壊」する為に踏み抜き続ける。


 この一連の事は一瞬で終わった。これに余りの激痛にいつの間にか男は気絶している。


 残りの四人は今目の前で起きた事に即座に対応できず、信じられないと言った顔で私を見てきていた。

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