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第29話

 私は今、椅子に座らされている。そして目の前でピーチクパーチク、女性三名が対面に座っていてお喋りを続けていた。


(話しかけられているが、分からん。言語理解がされていない事に彼女らは何時になったら気付く?何らの反応も私はしていないと言うのに。彼女らは私の事を見ていない?これ程に私に興味を向けておいてソレなのか?)


 言葉をかけて来ているのは解る。しかし、こちらの事など一切何も考えずに自分たちの言いたい事だけを一方的に口にしている様な感じを受けた。


 だが一人だけ立ったままで腕組をして私を難しい顔で睨んでいる者が居る。


 時に首を傾げ、時に眉間に皺を寄せ、時に目を細めてこちらを睨む。


(観察されているな。まあ、そこに悪意などを向けられていない事は分かるぞ。どうやら一人だけ冷静な様だな。・・・だったらこの者たちを止めるか、引かせるかして欲しいモノだが、どうにもこの様子は「無駄」だと結論しているみたいだがな)


 内心で苦笑いを私はする。どうやらこの四名は長年の付き合いと言う奴なのだと察したからだ。


 だから、今の状況は「どうもできん」と諦めているんだろう。


 その表情からは「この後どうするんだよ・・・」と諦めの空気が混じり滲んでいるのも気づいた。


(さて、驚嘆させられた隙を突かれて引っ張られこの様な状況になっているが、そろそろ発つか)


 私は彼女らに用は無い。自分の決めた「人助け」をしにダンジョンへと入る事とする。


 そう決めて椅子から立ち上がれば周囲で遠巻きにこの光景を警戒していた冒険者たちが一斉にその手を自身の武器の柄にかける。


 だけどもそれらを無視して私はダンジョンの入り口へと進む。


 背後から付いて来ている気配に気づきながらもソレも無視する。


(何で?一緒に来る気か?この者たちが何を考えているのか一向に掴め無い。まあ、本来忌避されるべき存在のアンデッドにあれ程に気軽に、無防備に近づいて来れる者たちだ。しかも肌の接触までして来ると言うのは思考の死角を突かれた。私がその思考回路を察する事など土台無理な話しなんだろうな)


 あの四名の女性冒険者たちがどうにも私に同行するつもりでいるらしい事に私は驚愕を禁じ得ない。


 しかし私の感性ではこの者らの頭の中は理解不能だと結論を出して自身の「やりたい事」へと気持ちを切り替える。


 そうしてダンジョンの中へと入った。


 ===  ===  ===


 初めの階層は既にもうゴブリン共の掃討は終わっていると見ても良い。


 なので私は軽く走り出す。ここにはもう私が必要とされる場は無いだろうと見做して。


 その走り出した私の後方をあの冒険者たちが追いかけて来ている。


「もう!ちょっと!いきなり走り出すとかあり得ないし!」

「軽く走ってる様に見えて早くない?速過ぎパなくない!?マジで!」

「もうちょっと速度落としてくれても良いじゃんねー?こっちはか弱い女だけのパーティなんだよー?うえーん、アンちゃん話し聞いてくれて無ーい、カナシーい。」

「お前らさー、あーもう、どうにでも成れよ、ホント。何事も起きない事を祈るしかないよね、全く。遠くから見てるだけなら気楽だったのに、何でこうなったかなぁ・・・」


 どうにも泣き言と言った空気がこちらに流れて来るが、これを私は気にしない。


 ソレとは別で何時の間にか背後斜め上にはあの空飛ぶ魔道具があり、また観察されていると察する。


(転移罠には私しか掛かっていない。なら、アレは全く別の魔道具だな。誰かが新しくこちらに差し向けたのだろう。まあ、別に良い。特に問題は無いだろう)


 どうやら私は経過観察、その対象と言った具合らしい。まあそれは深く理解できる。


 何故なら私自身がそもそもに「私に起きている事」が心の底、その奥深くで信じ切れていない部分があるから。


 アンデッドになっているのにこれ程に「自分自身」がその中にあるなどと、どうしてもこれまでの経験的にも信じ難い事であったのだから。


(アンデッドならアンデッドらしく、その衝動に身を任せて動いてやろうじゃないか。皮肉も嫌味もドンと来いだ。神よ、楽しませて貰う事とするぞ?文句があるのなら私の目の前に現れて事情説明でもしに来て欲しいモノだ、なんてな)


 特に私は神と言った存在を信仰していない。


 戦場で生き残る為に必要な事は徹底的に「自分自身が強くある事」だと、私は実感しているからだ。


 敵の強さに負けない、運などと言った物に左右されない、神頼みなどと言ったアヤフヤな事に頼らない。


 何処までも、これまでに自らが鍛え上げて来た「強さ」だけが戦場で信じるに値する物だからだ。


 私はソレをずっと得る為に努力して来たし、ソレを怠った覚えなどは無い。


 時には死ぬ気で鍛錬をしていた時期もある。何者にも負けたくは無いと強く願って。


 しかしその姿勢を貫き通したその結末が今のこの姿だと言うのならば、それはどれ程に残酷な事だろうか?


(おっと、無用な事を考えてしまった。・・・向こうで悲鳴が聞こえる。行くか)


 そうして次の層へと向けて走っていた途中でどうやら危機にいるのであろう者の叫び声が聞こえた。


 私はその声のする方に急速転回してそちらへと向かった。

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