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第27話

 あのアンデッドナイトの対応をしての翌日。私は新宿ギルドに辞表を叩き付ける為に出社していた。


 だがそこで待ったがかかった。


 ギルド本部、そのトップから指示を受けてやって来たと言う交渉人が居たから。


 そして私、「霞野綾香」は会議室に連れていかれて、そこで交渉人から正式な書面を見せられて驚愕させられる。


 何せ金額がヤバイ。そして今後の勤務の件、仕事内容も。


 コレに十分程、迷いに迷って私は受付業務を続ける決心をした。


 書面を見させられるまでは「こんな仕事・・・絶対に辞めてやるよ!」とか、「再就職はどうすんべ?」とか思っていたのだけれど。


(あの黒いのが何時も何時も魔石を持ちこんで来るなんて、そんな事は有り得ないよね!だったらこの内容、オイシ過ぎってもんでしょ)


 もう二度とアンデッドナイトがやって来るなんて事は無い。


 冒険者たちが倒してくれて、私の仕事は「ぐーたら三昧」で給料貰える!これは勝つる!と、その時はそう思っていた私。


「おおおおおお、オハオハオハ!おはよごじゃるまーず!ほほほほほ!ほんじ、じじじじつも!真にぃ~・・・ありがちょ、ごじゃいまーす!」


 いきなりその契約をした日の翌日の朝にまたやって来るとは思わないじゃないか、と。


 朝の出社後、受付業務の制服に着替えている私の元に緊急事態だとの事で呼び出しが掛かったのだ。


 私はこの時に「幾ら何でも、ねぇ?」と軽い気持ちで居た。今日から一切仕事せずに「ぐーたら」してても誰からも怒られない、そんな安心をしていたのに。


 昨日の今日で連続であの黒い死神がやって来るなんて事、あるぅ~?と、気軽に。でも。


 そうして危機意識も無く急いで着替えてカウンターに入って見れば周囲には他の受付嬢が一切居ない状態で。


「こ、こ、ここ、このコノこのののの!たびはぁ・・・ど、どどどど、じょのような用件ででででで、ごじゃいましゅぅぅぅぅうかぁ?」


 カウンター越しには何故かそこにあのアンデッドナイトが居るのだから「あ、これ私死んだ・・・」ってなるのは当たり前だ。


 二度目だろ?慣れたんじゃね?とか言う奴がいればソイツと今直ぐこの場を変わってやりたい。


 こんな禍々しいオーラを放って、ソレを受ければ自身の死を脳内で何度も再生させられる存在などと近距離で何度も接したいとは思わない。


 コレに私の顔はその全ての表情筋が引き攣り、上手く喋れていない。こんなの慣れる事なんて出来るはず無い。


 だってしょうがないじゃない、目の前にはあの真っ黒な、死神の如くの、アンデッドナイトが居るのだから。


「ま!マセマセキキキキキ!の、のののの!カイトトリ!買い取り!でごごごごじゃい、イイマスネ!?ででででは!こちらにぃぃ!前回と、お、な、じ、く、ま、せき、を、い、れ、て、く、だ、さ、い・・・」


 恐怖で頭の中がどうにかなりそうだった。しかし目の前に黒い腕が差し出され、その骨の指に魔石が摘ままれていたのを視界に確認したら自然とこれまでに何百回と繰り返して来た動作が自動で魔石回収機を取り出してカウンターに乗せる私、偉い!


 そして次には信じられない程の数の魔石がまたジャラジャラと投入されて行く光景を見て私は再びコレに圧倒される。


(どうして!?コイツヤバイでしょ!コレだけの数の魔物を倒して来たって事でしょ!?しかもこの期間でって事でしょ!?こんな化物を誰が倒せるって言うの・・・って言うか!何処から出してんだよ!こんな量!)


 何も無い空間から出て来る魔石。もう何処からツッコみを入れて良いのか。前回と同じ光景だ。


 コレに思わずと言った感じで前にはこのアンデッドナイトを引き留めようとしたのだ。何を考えていた私!どうしてそんな事しようとした私!


 心の中で過去の私の咄嗟の、突然の行動を今頃になってまた批判する。


 しかし私は叫び出したい所をグッと堪え、受付業務を熟し切る為に、そしてアンデッドナイトを余計に刺激しない為に、静かに魔石の集計が終わるのを待った。


 その間はずっと生きた心地が一切無し。もしかしたら私はこの場でこのアンデッドナイトにスパッと斬り殺されるのではないか?と言った思いが拭え無いでいる。


(でも考えろ!そう!ここを耐えればまた大金が手に入るんだぞ私!って言うか!冒険者の人たちってこんなにキッツイ仕事を毎度の事してるって事でしょ!?感覚麻痺ッてるって!)


 命を賭けてダンジョン内で魔物を倒して魔石を得る。


 私は今ここに来てやっと冒険者と言う職業の厳しさが理解できた。文字通りに「骨身に沁みた」だ。


 これを続けて行くと私もこの恐怖に麻痺してアンデッドナイトを目の前にしても普通に居られる様になるのだろうか?


(なりたくねーよ!そんなの!ウワーン!契約書にサインなんてしないであの時!即行で辞めれば良かったよー!助けて!おかぁちゃーん!)


 金よりも大事なモノがある。それは命、そして心。


 ここに来て昨日の私を恨む。何故あの時に楽観していたのかと。何故にホイホイとサインをしてしまったのかと。


 こんな契約内容、絶対に裏がある、などと思わなかったのか?と。


 そしてまたしてもアンデッドナイトは魔石を出し切るとさっさとカウンターから離れて行こうとする。


 しかし今回は私はソレを止めようなどとは思わない。


(だって、私は命が惜しいモノ!あのままもっと長時間対峙していたら私の心が先に死んで生命活動停止しちゃってたわよ!・・・って!何してんの四姉妹!?)


 そこで予想外と言うか、ぶっ飛んだ光景が私の視界に入って来てしまって「ひぇッ!?」と小さい叫び声を絞り出してしまった。

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