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第26話

 歩き続けてどれ程か。出て来る魔物を屠る数は幾つになったか。時間がどれくらい経ったかも数えていない。


 淡々と道を行く。助けを求める者を探し求めて。


(まあその様に毎度の事に危機に陥っている者に頻繁に遭遇するなどと有り得ん話だ)


 魔物を倒した後に出て来る小石は集め続けている。ソレを収める為に使用している魔力は僅かであるが増え続けている。


 容量を増やそうと思えば空間の虚を大きくせねばならないので、その分の魔力使用量は増加する。


(使用量の危険水域に入るまでは何とかするが。緊急の際にはソレを解除せねばならんからな。その際には集めた全てが虚から飛び出してこぼれてしまう)


 自身が危うい時点において、魔力は出し惜しみしている場合じゃない。


 荷物を収納する為に使用している魔力は些細なモノだが、しかしその些細が戦闘中には生死の境を決める事も少なくは無い。


 荷物を惜しんで自身の命を無くすなんて、これ程に滑稽な事は無いだろう。


 いざとなったその際になれば、小石を収納している為に使っている魔力を解除せねばならない。


(まあ私は既に死んだ身だ。それに回収しているこの小石も別に私にとっては何らの惜しい代物などでは無いのだがな)


 どうでも良い物など、自身の身の安全の事を考えたらいざとなったら真っ先に切り捨てるのが普通だ。


 この集めている小石は私にとってそう言った物だ。


(ならば集めなくとも良いのだがな。小さい頃の平民だった心根が「勿体無い」と言って仕方が無い。今更になってと笑える話だな)


 騎士団団長の頃であったならばこの様な思いは浮上してこなかっただろう。


 しかし今の私は色々な、そしてある意味で解放されたと言って良い。


 小さい時に見た騎士の姿、その頃の憧れ、そう言った昔の子供時代の心根に少しだけ戻っている。


(ならば勿体無いなどと浮かんで来てしまうのは良い事なのか、悪い事なのか)


 団長をやっていた頃の自覚と責任、それらが今は一切無い。


 自由に、気ままに、そう言った事が許される、そんな今。


(羽目を外し過ぎる心算は無いが、ソレでも、ああ、今はこんなにも清々しい。この結果はまあ、裏切られた末の事と思うと素直に喜べぬ複雑な気持ちにさせられるが)


 そんな悩みを抱えつつも目の前の分かれ道を目にしてその事を忘れる。


 どちらに進むか。この階層ではどうしてかゴブリンのいた階層の時の様な勘が今だに働いていなかった。


(ならば左で良いか。特に真剣に検証する様な事で無し。この先に何も無ければソレで良い。戻って来れば良い話だ)


 今の私には何の縛りも無い。気にしなければならない事が一切無かった。


 気負うべき事も無く、時間も食事も睡眠も、何もかも活動するに、気にせねばならぬ事が全く無い。


 アンデッド、生きていないのだ今の私は。気楽に、そして単純に、今を第二の人生?として過ごせば良いと開き直る。


 そしてそこで私は油断していた。いや、注意していたとしてもこの「罠」には気付け無かっただろう。


 何せ突然に足元が光ったのだから。


(・・・転移罠だと?はぁ、こればかりは幾ら私でも回避が出来んのが辛い所だ)


 発動条件はどうにもその罠の範囲内に何者かが入った瞬間と言った具合。


 幾ら何でもその様な一瞬では範囲外へと飛び出して回避する事も叶わない。


 私の判断力の速さでも、瞬発力でも、反射速度でも、無理な物は無理だった。


 そして目の前に広がったのは、見覚えのある場所。


 周囲には冒険者たちの姿。小石を引き渡した、と言うよりも半ば無理やりに押し付けたと言った方が正確か、あのカウンターが見えて。


(何だこれは・・・ああ、そう言えばあの階層の罠には、悪意は有っても殺意が無かったな。てっきり凶悪な魔物どもがひしめく部屋に飛ばされるか、或いは帰還が困難な程に深い階層に飛ばされるモノだと思っていた)


 またスタート地点に逆戻り、と言った所。


 私に気付いた冒険者たちが次第に騒ぎ始めてこちらを囲う動きを始める。


「出た!?いきなり何だってんだ!」

「は?何が・・・って、うおッ!?」

「何の前触れも無かったぞ!?どうなってんだ!?」

「危険だ!お前ら下がれ!本部に連絡!誰か!」


「いきなり?神出鬼没?ある意味で面白いね。つか、きょろきょろしてるじゃん。可愛くね?」

「そんな呑気な事言ってる場合?って、あそこってあれじゃない?まあでも、ホント、人間臭いね。」

「ああ、あの面白トラップだね。その出て来る所じゃん。アレを踏んだのかぁ。アンデッドナイトって結構おまぬけ?もしかしたらワンチャン仲良くできそくね?」

「間抜けって、そうじゃ無いでしょ。私たちだってあの罠は発動したら回避無理じゃん。一切の兆しもスイッチも無いんだよアレ。範囲内に入ったら最後、ひとっ飛びーって感じ。」


 冒険者たちから奇異と恐怖の混じった目で見られているのは分かるが、一部からは全く別、寧ろ好意と興味の混ざった意の目を向けられていた。


その一部とは私が初めてここに現れた際に堂々とした態度で居た四人組の女性冒険者だ。


(相変わらず喋っている言語が分からないな。とは言え、こうして戻って来てしまったのなら小石の回収をして貰っておくか)


 ついでだと思って私はカウンターへとゆっくりと、周囲の者たちを余計に刺激しない様にと静かに向かった。

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