第24話
罠を一通り発動させてその種類を確認し終えた私はその奥の通路へと入り先へと進む。
この階に来てこれまでの所、別段危機に陥っている冒険者には出会っていない。
寧ろそんな場面にしょっちゅう出会ってしまうのは逆に問題であるのだが。
(平和な事は良い事だ。被害が無いのが最上なのだから)
そんな事を思いつつも警戒は怠らずに通路を進み続ける。
依然として私の後ろ上方斜めには例の魔道具が浮いていてこちらを追跡し続けているが。
ソレを私は一切気にせずに堂々と歩き続ける。それは。
(恐らくだが、これを迎撃して壊して見せてもまた次がやって来るのだろう。際限無くな。だったらその様な労力を掛ける必要性も無い。見たければ見ていればいいだろう)
このまま何も無ければ只アンデッドが通路を進むだけの光景を見る事になろう。
この魔道具を通してソレを監視している者はさぞかし暇を持て余して眠気に頻繁に襲われるに違いない。
魔道具を通して誰かしらが自分を見ているのだろう事は既に察している。
見張り、そんな物は勝手にすれば良い、こちらは別に何かしらを探られて痛い腹は抱えていないのだから。
そう言った事を考えながら進み続ける事、暫く。
(誘導されていると言った気配がこの階層に入ってから一切無いな。さて、どうすべきか)
事を難しく考え過ぎてもどうせ無駄だとそこで思い直して思考を別に向けた。
最初の階で魔力の流れに引っ張られる様な、何処かに呼ばれる様な感覚が無いなら無いで別に困らない。自由にこの迷路を踏破するのみだった。
そんな事を考えた時にソレを微かに捉える。
戦闘音、金属同士が強くぶつかり合った時に響く甲高い硬質な音。
私は躊躇い無くその音のした方向に一気に加速して走り出す。
そうして到着した場所には六体のあの毛むくじゃら。獣人と言うには程遠い存在、魔物。
(どうやら爪は金属に近い硬度を持っているのか。冒険者の持つ盾に僅かな傷を付けているな)
アッサリと殲滅してしまったので分からなかったのだが、どうにもこの魔物、そこそこに危険な相手だった様で。
「うおおお!そっち!大丈夫か!?」
「俺たちの強さなら対応できるはずだったのに!?何でこいつ等!クソ!」
「固まるぞ!コボルト共がどうしてか連携を取って来やがる!しかも強いぞ!危険だ!少しづつ後退する!撤退だ!」
「おう!・・・って、う、嘘だろぉ!?あ、あ、あ、あ、あ、あ・・・」
「おい!何だ!何をお前狼狽えて・・・ひへぇ!?」
私の目の前には魔物と別で冒険者が五人。しかもどうやらその状況としては魔物に押し込まれて少々の危機だったと言った感じだった。
(戦力の調整も申し分無い様に見えるのだが、魔物に押されていた様だな。まだまだ未熟者か?・・・装備のこなれ具合を見るに熟練者の様だが)
そんな五名はこちらを見て固まっている。それは明確な隙だ。危険な事である。魔物にこの機を狙われたら一気にパーティは瓦解する。
その結末は「死」だろう。
けれどもこの隙を見て魔物が彼らへと襲い掛かっていないのは突然にこの場に現れた私の事を警戒したからの様だ。
冒険者も、魔物の方も一切の動きを止めて私の動きを注視して来ていた。
(ああ、スマン。彼らにしてみれば挟み撃ちを受けた様な形に感じるか。最初から気づいておいてやるべきだった。気が利かなくて申し訳が無いな)
前には魔物、後ろにはアンデッド。これでは死を感じてしまってもおかしくは無い。
最悪な状況と迄は行かないまでもこの様な形からの脱出は困難に感じた事だろう。
彼らは知らないのだから。私が彼らの「味方」であると言う事が。
(さて、君らがこの魔物に勝てないで撤退をするのであれば、これは私が片づけるとするよ)
冒険者たちを刺激しない様にと私は壁の方に寄りつつも魔物の方へと歩みを進める。
通路は広く、避ける様にして壁際に寄れば冒険者たちは私の後方へと抜ける事が可能だ。
(うむ、ではこの獣人モドキを屠るとするか。どれ、掛かって来い)
これが本物の獣人であったならば、その六人も相手をすれば幾ら私でも良くて重傷、対応を誤れば死だ。
(だが違う。私を確実に殺したければこの数の一万倍は連れて来い)
低い実力を以ってして私を亡き者としたいならば数を揃えるしか道は無い。
もしくは時間を充分に使った罠、それとも無限にこちらを後手にさせる張り巡らせた絡め手か。
準備も無しのいきなりの接敵では、相手に信じられぬ程の豪運、天運が無ければ、私のこれまでに積み上げて来た剣技に勝てる道理は無い。
(その様な偶然、運などすらも斬り伏せる自負を為すくらいまで、こちらは剣を振り続け、修羅場を乗り越えて来ているのだ。半端な運ではどうする事もさせんぞ?)
私は六体の魔物の前に立つと気迫を放つと共に腰の剣を抜いて構えを取った。




