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第22話

 私は今囲まれているが、別に焦ってはいない。それは当然。


(獣人?いや、これは・・・意思が見られん。魔物、だな。ならばこの数程度、問題無い)


 通路を過ぎてそこそこに広めの部屋に出たと思えば、ぞろぞろと出て来たのは魔物である様で。


(コレが私の知る獣人たちであったなら、かなり厳しい戦闘だったのだろうが・・・只の獣が二足歩行になった程度で私を狩れると思って貰っては困る)


 囲って来ているのが、理性が有り、連携を取り、勇気を持ち、犠牲を払う気概、などなど、その他諸々意思を持つ存在だったのならば、ここで私は討たれていただろう。


 しかしそうでは無い。一瞬でソレが私には分かった。


(ここで危険なのは、囲まれた、相手の方が数が多い、などと言った事では無いな)


 慌てず私は冷静に現状を分析する。ついでに悪意の位置も確認した。


 そう、ここで一番気にしなければならないのは「罠」を発動させるその仕掛けだ。


(戦闘している間にソレを起動させてしまえば危機、しかし、上手く利用すれば・・・)


 そう言った発動させた罠に敵を押し込むと言った事で攻撃にも流用可能だ。そう言った戦略も思考に絡める。


 そうして私が思考している間にも、まだこちらの事を警戒しているのか、二足歩行の獣共は襲い掛かって来ていない。けれどもソレも時間の問題だろう。


 その間に私はなるべく何処の辺りに「罠」が張ってあるのかを把握する事に努める。


(まあその全てを把握できる訳では無いのだが。ああ、時間切れだな。しかし、充分だ)


 一匹が唸りを上げてこちらに飛び込んで来る。それを皮切りにドンドンと私へと覆いかぶさる様にして獣共は踏み込んでくる。


 ソレを一つ一つ、即座に優先順位を付けて迎撃していく。


 こう言った対処は即断即決、迷えば迷った分だけ処理の速度が落ちるし、減らせなかった「数」と言う迫りくる脅威に呑み込まれる。


(経験を重ねれば重ねた分だけ正解を捻り出す能力は上がる。私がどれだけ修羅場を潜って来たと思っている?いや、こいつ等にソレが判るはずも無いか)


 所詮は今の私はアンデッド。ついでに初対面の獣共にソレが判ろうはずも無い。


 だが私が剣を振るい続ければソレもいずれ分かるハズ。数を、仲間の屍が積み上がれば。痛みで理解する事柄も世の中には多くある。


(あ、こいつらもやはりあの小石に変わってしまうのか。まあ、数が減れば私を脅威だと認めて逃げ出す事だろうその内に)


 どうにもこの獣共も倒すと例の小石に変わってしまうらしく、その死体が床に重なる事も無く。


(足場の確保や立ち位置を移動すると言った事をしなくて済むのは、まあ、罠に近寄らずに済むという点では有難いのだがな)


 一々罠の事を意識に入れながら戦わなくて済むのは楽になるのだけれども。


 そう思っている間にあれよあれよと獣共は全てが突進を繰り返し続けて来てしまい。


(全滅しているでは無いか。これでは幾ら何でも野生の動物以下では?・・・どうにもモヤモヤした気分が腹に残るな)


 私の剣は止め所も無く全てを一刀の元に斬り捨ててしまっている。


 向こうが襲って来ているのだ、こちらの命を狙って。ならばその迎撃に手加減も手心も加えられ無い。


(いや、そんな物を入れていたとしても、向こうは何らも気づかんだけだったろうな)


 斬り続けていた中でしっかりと観察はしていた。


 向かって来た獣共のその中にはこれっぽっちもそう言った部分を判断する知性は一切見られ無かった。


(まあ、良しとするか。・・・さて、これらをどうする?また拾い集めて持って行ってやるか?)


 過ぎてしまった事はどうしようもない。それよりも今はゴブリンの時ほどでは無いにしろ、床には青い輝きを放つ小石が散らばっている事案だ。


 しかもその大きさはゴブリンの物よりも若干大きいのが窺えた。


(・・・これらは私を追い駆けて来て今だに追跡を続けている者たちに回収させれば良いか。この浮いている、魔道具?・・・見られていると感じる。これを通じて今の戦闘を?)


 部屋の天井付近に飛ぶ得体の知れ無い魔道具と思わしき物へと一瞬だけ視界を向ける。


 勘が囁いていた。監視されているのだと。しかし別に見られていてもどうでも良い事だと開き直った。寧ろ。


(こちらの意図を伝えられ無いだろうか?これ、この様にして・・・)


 私は床の小石を集めて一カ所に纏めた。その後にソレを指差して、次に宙に浮く魔道具へと指を向ける。


(コレで、譲ると言うこちらの意思を伝えられただろうか?うーん?本当に喋れないというのは不便なモノだ)


 問題は「喋れない」と言った一つだけでは無いのだが。しかし私はその事は努めて忘れる事にする。


(さて、この部屋の中に仕掛けてある罠でも調べて、どれ程の種類が有るかを把握してみる事とするか)


 ここで気分を切り替えた。もしかしたら私の経験した事の無い様な奇抜な罠が仕掛けられていないとも限らない。


 全ては経験、これらを重ね続けて鍛錬と為す。


 初見と言うのは非常に危険だが、そう言った物は最初から種が分かれば対処が容易いモノだ。


 この階の張られている罠はどうやら悪意は有っても命までは取らない程度の物だ。


 ならば思う存分に私の糧になって貰うとする。命の危険無くこの様な経験をさせて貰えるのだ。贅沢である。


(ああ、今の私は命が無いんだった。これは何の悪い冗談だろうな?)


 今の現状、アンデッドと言う事実を自嘲して私は内心で苦笑いを溢した。

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