第21話
アンデッドナイトを追い駆け、その異常な速度に追い縋り、何とか付いて行く事に成功していた冒険者二名はそこで目にした光景に「何だぁ?」と首を傾げつつ会話する。
「おい、ありゃ一体どう言った冗談なんだ?」
「知るかよ。俺も始めて見たっての。」
床に設置されていた落とし穴の罠に引っ掛からない所か、ワザと、そして意思を持ってソレを起動させていると思えば、開いた穴の底をマジマジと観察するアンデッドナイト。
コレには「妙な物を見させられた」と言った感覚に冒険者二名は陥っている。
「おい、このままこいつを追いかけ続けて良いモノかどうか、俺は迷い始めてるんだが?」
「おう、俺も同じ気持ちになってるよ。見ない方が良かったって思える、混乱させられる事を、このまま付いて行けば幾らでもこの目にしちまいそうで怖いぜ。」
「追跡ドローンだけ飛ばしてその映像だけギルドに提出すっか?そもそもに今のも映像で取れてるだろ。ソレだけで充分って事にして、ここで引き返さねーか?」
「あー、多分その現場を目撃した者の所感っての?ソレもきっとギルドに戻れば問われるだろうから、この後の追跡もこの目で実際に確かめるって事で後を付けて行った方が良い気もする・・・言い訳を色々と付けてここで断念、何てのにするにはちょっと証拠映像に説得力が足りないだろうからな。」
アンデッドナイトがこちらを襲って来た訳でも無い。
そしてこの階層に張り巡らされている罠に引っ掛かる程の間抜けでも、、新人でも無い。
彼らはベテラン、この罠だらけの階層などとっくの昔に攻略済みなのだ。
このまま引き返すと言った選択肢を取るのは微妙過ぎ、そして彼らの勘は「これ以上追跡を続ければこれ以上の妙な光景を目にさせられる羽目になる」と囁いている。
引き際の見極められない場面、判断を付けるにしても難しいと言った現状。
しかしそんな彼らの事など御構い無しに状況は動く。
それはもちろん、追跡対象のアンデッドナイトが通路の奥へと進んでしまうという事態だ。
アンデッドナイトには付いて来る冒険者二名の事情やらその背景には一切、全く、これっぽっちも、髪の毛の先程の太さも、関係が無いのだ。
「おい、行っちまうが、追うか?」
「追わないって選択肢は、選べんな。チラッとこちらを見た様な仕草をしたのがかなり気になるが、まあ、行くしかねーな。」
「あ、お前もやっぱそう感じたか?向こうさんはどうにも俺たちの事をしっかりと認識してるよな?アレ。理性、在るだろ・・・」
「そう同じく感じたかそっちも。はぁ~、この案件、もしかしなくても相当にヤバイぞ?もしも目標に「中身」があると仮定すれば、俺たちの手に負えないレベルだろ。相当な厄ネタだ。コレがバレたらギルドのマッドクソ研究者共が一斉にここに雪崩れ込んでくるぞ?」
「そうなりゃここを封鎖って話になるな。俺たちの稼ぎはそうなりゃゼロだ。飯が食えなくなっちまうぜ。」
「なら、やる事は一つだ。なるべくならこいつの提出を遅らせる。ソレと、生中継は無しの方が良いな。」
そうと決まればと二名の冒険者は宙に浮くドローンの設定を弄り始める。
その間にも通路の奥へとズンズン迷い無く進んで行くアンデッドナイトにも気を向けるのは忘れない。
「あくまでも監視、どれ位の距離を取る?」
「そうだなー、気持ち的には30mは取りたい所だが、ソレでも、もし、向こうがヤル気に突然なってこちらに踏み込んで来たとなれば一瞬で詰め寄られるだろうしなぁ。」
離れ過ぎても、近過ぎてもダメ。アンデッドナイトのスペックは嫌程も理解していた二名は悩む。
そうしながらもこちらの事など気にもしないアンデッドナイトに向けて歩き出し始めた。
しかしここで早々にその足を止めなくてはならない事態に遭遇する。
「おい、いきなりの戦闘だぜ?どうする?退避距離としちゃ充分過ぎる程に離れちゃいるが。」
「コボルトか。大丈夫だろうが警戒は怠らない様に・・・って、おいおい、数が多過ぎないか?何だ?異常だろこの数はよ!?」
アンデッドナイトが辿り着いたのはかなりの広さの有る部屋。
先行させてアンデッドナイトの直ぐ後方で撮影しているドローンの映像を彼らは自分のスマートフォンに転送してソレを見ていた。
それぞれがドローンを一台ずつ引き連れて来ていたので片方は自分たちの側に、もう一台は壊されるのを覚悟の上でアンデッドナイトの側まで飛ばして撮影をさせていたのだった。
「見事に囲まれたぞ?コレは幾らなんでも・・・」
「いや、忘れんなって。コイツがロビーに突然に現れた後の動きを。この程度じゃ傷一つ付けられない所か、寧ろアンデッドナイトがコボルトを全滅させるだろ。これだと寧ろコボルトの方が憐れだぜ・・・」
「ああ、そういや、そうだな。俺たちが塞いでいたバリケードもアッサリと抜けられちまってるんだ。この程度の数でやられる訳無いわ。」
コボルトの数は凡そ三十は居たのだが、二名は何らの心配もしない所か、魔物を憐れむなどと言う心理になってしまっていた。
しかし次の瞬間にはソレが正しかった事が彼らのスマートフォンに映し出されていた。




