第18話
飛来するそれらの攻撃を軽くあしらうのは、私にとって朝飯前、簡単な事であったが。
いかんせん数が多いのでちっとも前に進めずにその場で対処し続ける事となった。
(・・・ふむ、牽制みたいだな。何かしらの時間稼ぎか?確実に私を屠ろうと思うのならば・・・ああ、やはり)
相手の仕掛けて来る攻撃には殺意が乗っていなかった事に気付いた時にはもう遅かった。
道を塞ぐ冒険者たち、その大盾の裏から出て来たのは白を基調とする、金糸の刺繍で紋様が入ったローブを羽織った者たち。
その手にはそれぞれに杖が握られており、何やらブツブツと誰もが呟いていた。
「今だやれ!」
その掛け声に私へと向かって放たれたのは。
(聖属性、だな。ふむ、やられてやるのはやぶさかでは無いが、まだ、今では無いな)
敵を逃がさず殲滅する為の広範囲魔法では無かったのが幸いだ。
コチラに飛ばされてくるその魔法は「ボール系」と言われる飛来速度の遅いモノで。
(これなら避ける事は容易い。当たりそうな物は切払えば良いか)
判断は素早く、その飛来する全てを捌き切ってから一息吐く。
しかし油断などしない。警戒も段階を下げたりはしない。この魔法すらもこちらの目を欺く為の陽動、囮の可能性も否定できないからだ。
なので回避も受け流しも切払いも、その動きのどれにも体幹がズレる様な真似はしない。
次に来る攻撃に備える為に残身、残心、その両方をしっかりと意識する。
「馬鹿な!何でこいつは魔法を切り裂けるんだ!?」
「やっぱり緊急連絡なんてのの指示に従うべきじゃ無かったんじゃねーのかよコレ!?」
「しょうがないだろそれは!良いからお前ら次の攻撃体勢に入れって!」
「おい!こっち来るぞ!?盾隊の奴等!あいつを抑えろ!」
「何で俺たちばっかり動いてるんだ?他の奴等は何で動かねーんだ!高みの見物とか言い出すんじゃないだろうな!?」
「俺たちを囮にして逃げる気か?はっ!腰抜けどもがよ!この骸骨野郎を俺たちでブッコロしてギルドからタンマリと特別報酬ぶんどってやるぜぇ!逃げた奴等にはペナルティが付くだろ。ザマーミロってんだよ!」
ここでどうにも気合を入れる者、戸惑う者、迷う者、逃げる者、退避する者などなどに分かれて行くのが視界に入った。
(こちらに敵意を向けて来ない者たちの何人かは顔に見覚えがある。・・・ああ、私がここに初めて現れた際に向かって来た者たちだな)
相手をしても敵わない、そう言った判断でどうやらこの「通せんぼ」には参加しない心算の様で。
(なるほど、こちらを様子見、観察をしてどうするのか判断する気なのだな?ならば彼らが何時参入してこないとも限らないし、さっさとここを通らせて貰うとしよう)
道を塞ぐその構えられた大盾の一つに向かい私は歩きだした。
=== === ===
アンデッドナイトとの戦闘が始まる前の時、冒険者たちの動きはこの様な物だった。
その通信は急なモノで。
内容としては「ダンジョン内にてアンデッドナイトの行く手を塞ぎ、できうる事なら討伐をする事。ソレが出来なくとも行動パターンや弱点などを探って少しでも討伐の為のデータ稼ぎをする様に」である。
この度の件に参加した冒険者たちは事前に言われていた事と逆の突然のこの変更に戸惑いつつも従って動いたが、一部の者たちはそもそもにこの内容通りに動く気は無かったのだった。
「いや、だって力量差があり過ぎじゃん?あのフロアでやり合った奴ら全員その事は身に染みて解ってるしな。」
「討伐?無理でしょ。やっぱ現場で仕事してない事務所のお偉いさん方は何も解っちゃいねーな、アホらしいぜ。頭でっかち過ぎて現実が見えてねーよ。」
「タイミングでやり合わなかった一部の奴らがはしゃいでるけど、正直、滑稽だよな。」
「あいつらこっちの言う事に耳を貸さねーもん。一度痛い目見なくちゃ理解できない馬鹿共だからなー。」
「アレ、殆ど新宿組以外の奴等じゃね?他の所の冒険者多いっしょ、あの構成。」
「あ、ホントだ。偶々こっちに遠征して来てる組かな?かな?」
ダンジョンの通路を塞ぐ集団、それは幸か不幸か、アンデッドナイトとの戦闘を微妙な時間差で参加していない者たちの集まりになる。
「監視、追跡からいきなり指示が変わったのは、アレか?アンデッドナイトがこうしてフロアに戻って来ちゃったからか?」
「それで危機感煽られて突然考えを変えたんじゃね?」
「なあ?俺、あのリアクション見てるんだけどさ。別に暴れたりしないんじゃね?突然になんて。アレを知ってるとさー?」
「ああ、あのOrz状態ね。あの場面は俺も見た。突然の事でそれ見て笑うんじゃ無くて唖然としちゃったよな。」
「うん、あれは面白かったけど、何だか笑え無かったね。んでもって、物凄く人臭かった。」
「ああ、絶対そうだよな。「中の人」がぜってー入ってるって。」
そう言って笑う冒険者たちはこの後でアンデッド特攻とも言える聖属性の魔法がそのアンデッドナイトに切り払われて消滅する場面を目撃して目を飛び出させるのだった。




