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第17話

 受付嬢は生きた心地のしなかった時間が終わった事で地面にへたり込んだ。


 最後の最後でアンデッドナイトを引き留め様と、殺される覚悟で声を出したがソレを無視された事に心底ほっとしている。


「た、助かったあああああ・・・私もう、受付嬢辞める・・・」


 努めて五年、新人などと言う立場は既に脱して中堅、ベテランとは言えずとも仕事は順調に熟していた事がアダとなった。


「生贄だわコレはもう・・・無理、もう、無理・・・」


 人事が自分を「裏切った」と言った感情はもうこの先で消える事は無い、そんな彼女の心情も知らずにこの支部の部長は彼女に声を掛けた。


「いやー、君に任せて良かった!良くぞ大任を果たしてくれたよ!特別ボーナスはたっぷりと出させて貰う。これからも精進してくれたまえ。」


「・・・死ね!この腐れ外道がぁ!」


「へぶほぉ!?」


 部長は殴られる、キレた受付嬢に。今の彼女の精神状態は異常をきたしている。


 それが普通の者に判るはずも無く、部長は運悪く、と言うか、間が悪く、と言うか、空気を読まずにすぐさま彼女へと声を掛けてしまったのがコレの原因だ。


 相手に信用も信頼も無い。情け無用、容赦無い右ストレートは部長の顔面のド真ん中、その鼻っ柱を圧し折った。


「アンタが!私を!指名したんだ!どんだけアンタはパワハラすりゃ気が済むんだこのド外道がぁ!貴様を地獄に送ってやる!これまでの所業を全部バラして辞めてやるよ!こんな仕事ぉ!」


 受付嬢は叫ぶ、ブラックな仕事場の実情をその後に十分以上も。


 彼女が受付に立っていたのは只単にこの部長の発言「カウンターに誰も立っていないのは他のギルドに示しが付かないでしょ」と言った軽いモノだった。


 ならば言い出しっぺのお前が立て、などと誰もが言えなかった。


 この部長はまだ若く、コネでその立場に居たから。


 部長の機嫌を損ねればその「上」が動いて自らにどの様な圧が掛かって来るか分かったモノでは無い、そんな判断で。


 その他の命の危険などを全く考えず、職員の安全など気にも留めない。


 そんな人物など風上に置くなどと言った事が今後できるはずも無い。


 しかしこの時は職員の誰もが自分の身可愛さに黙るばかりで反論も反対も反撃もせず。


 そうして彼女が部長の目に偶々入ってしまい、この様な事態に陥っている。


 この様な事を「命令」と言われて指示を受けても自身の身の危険に拒否できそうなものだが、その時の彼女は気の小さい小娘でしか無く「そ、そんな!?無茶です!」としか言い返せ無かった。


 その後は無理やりカウンターへと押しやられ、コレにしかし彼女も本気での抵抗を見せたがそれは無駄なモノとなり真っ黒な骸骨の騎士との御対面と成り果てた。


 この光景はフロアに居た複数の冒険者たちの稼働させていたドローンの撮影に全て一部始終が記録されている。


 その映像は証拠として後に調査委員会に回収され、そしてその後にダンジョン管理委員会へも「問題」として提出される事となる。


 そうして新宿支部の部長はこの事で最終的には様々な事件の発覚、刑事裁判にまで問題が発展する事となり、刑務所入りと成り果てるのだが。


 ソレはこの度の件の中心存在、黒い骸骨騎士には関係の無い事であった。


 ===  ====  ===


 さて、これはどうしたモノかと私は悩むしかなかった。


(これは、どうした所で回避はできそうも無いな。参った。全員が、と迄は行かないようだが、それなりの者たちには戦意が感じられる。戦いは避けられんか)


 私は下層へと向かいたいのだが、ソレは今の所できそうにも無い。


 大き目の盾を構えた冒険者が十人以上の数でみっしりと通路を封鎖していたから。


(退いてくれ、と伝えたいが、無理だな。そして伝えられたとしても、どうにも退いてくれそうな気配では無い)


 どうしてこうなったのかは分からない。経緯など把握できるはずも無し。


 考えるならば今の状況をどう変えるかに労力を傾けるべき。それが前向きと言うモノで。


(これは、しかし難しい。中央突破しようにも隙間が無い。ソレにその隙間をこじ開けるにも、彼らに怪我をさせるのは絶対に無しだからなぁ。コレは難易度が高い)


 向こうは私を消滅させる気でいるだろうから、その繰り出す攻撃に慈悲は無いだろう。


 しかし私の方はその真逆、彼らに掠り傷一つ付ける訳にはいかない。


 彼らと敵対する意味も意思もこちらには無い。ソレが正直な私の思う所だからだ。


(友好的だと少しでも感じてくれる可能性を潰す訳にはいかんからな)


 まだ諦めてはいない。と言うか、まだ始まったばかりと言える。


 私がこの様にアンデッドの身となって目覚めてまだ一日と経っていないのだ。


 何もかもを投げ捨てるにはまだ早い。早過ぎる。


 そんな事を思っていれば気を入れた掛け声が向こうから発せられた。


「撃てぇ!」


 ソレは矢、魔法、投擲武器など、飛び道具の発射合図。それらが一斉にこちらへと向かって飛んで来た。

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