第14話
私の事を警戒する様にして下がって行く冒険者たち。
その様子からして恐らくはこちらに手を出しては来ないだろうという予測は立つ。
(しかし何だ?あの魔道具は?宙に浮いている。相当高度な魔法陣を組んでいるのか?魔力の消費量が馬鹿にできないのではないのか?うーむ、本当にここは私の居た国とは掛け離れた技術力を持つ国なのだな)
その宙に浮いている何かしらの魔道具は複数あった。
その数に私は驚きと共に敬意を心の中に浮かべる。
(これ程の物が量産できるのであれば、恐らくは工業力と言った点においても遥かに上回って・・・ああ、最初に建物の外に出た時にそんな事は明白だったな)
馬で引かずに自動で走る鉄の箱、首が痛くなる程の見上げる建物群、地慣らしされて美しいと言える程に整えられた地面。
そう言った物に打ちひしがれて私は現実逃避の為にこうしてダンジョンの中へと入ったのだ。
(落ち着くな、こちらの方が余程に。自らの常識、知る文化、それらに大幅に差があると、それらを知ろうと言った興味や関心よりも、強く逃げ出したいと言った気持ちになるなんて、騎士団、団長失格か。いや、私は既にアンデッド、根本的な所でもう何を考えても無駄な面があるな)
私は冒険者たちの横を通り過ぎて行く。無警戒に。
彼らは私が近づくと逃げる様にして壁の方に寄って道を空けてくれたのだ。
いや、開けてくれたというよりも近づきたくないと言った原因の方が大きいかその動きは。
だがここで私へと敵意を向けて来ていた者がその剣を再びこちらへと構えて踏み込んで来た。
「ここで倒さないと不味いだろ!お前らも協力しろ!一気に行く!おおおおお!破岩撃ぃぃ!」
何やら気合を入れて突撃して来たのだが、私はそれを軽くあしらう。
(稽古を付けてやる、などと言った傲慢な事は言わんが。まあ、この程度ならな)
その彼の一撃は単純明快。縦斬り。しかしソレは遅く、無駄に力み、軌道も読み易く、フェイントも組み込まれていない。
振る体勢、体幹、体全体の動きも整ってはおらず、言ってみれば不格好。
(しかし、威力だけは一丁前か。中々にチグハグだ。これは笑い話だな)
迫りくる剣の横腹に拳を軽く当ててその軌道を逸らすだけで私はソレを躱す。
別に彼の一撃を受け流すなどと言った労力を掛けずとも躱すだけなら幾らでも簡単にできた。
けれども何とも彼の必死さを見て少しは相手をしてやらねばその興奮を収めてやる事はできないだろうとのお節介だ。
(怯えを無理やり飛ばす為に怒ると言った精神的防御術、気持ちを戦闘へと切り替える術なども確かにあるが、彼はどうやらまだまだ未熟も未熟だ。コントロールがなっていない)
勢いを止められずに見事に剣先を床へと叩き付けてしまった彼へと私は評価を下す。
「うえっ!?っつ!クソッこの!」
慌てた様子の彼が衝撃に因る手の痺れを我慢しながらも連撃で横薙ぎを私へと繰り出しては来るが。
(当たってはやれんな。ソレに、時間の無駄の様だ。スマンな)
彼は自分自身の力量をどうやら勘違いしている輩の分類だ。
自分の正義感をこの場で晒して勝手な行動を取っているのがアリアリと分かる。
他の仲間たちの動きは落ち着いていていつでも逃げ出せる用意をしているのが見えた。
「お前ら!何突っ立ってるだけなんだよ!援護しろ!こいつを行かせちゃダメだろ!分かってねーのかよ!」
「お前、冷静になれ無ければここで無理やりにでも俺たちで気絶させるぞ?今ので力の差を分かりもしねーなら、俺たちはお前を置いて逃げさせて貰うからな?」
「何言ってやがる!って、あ!おい!待ちやがれ骸骨野郎が!」
何やら揉めているのだが、私には関係が無い。なので来た道を私は戻る。
コチラに襲い掛かって来た彼は仲間の一人に羽交い絞めされて動けない様にさせられている。
(さて、今の内だな。急いではいないとは言え、彼らにこれ以上絡まれるのはどうもな)
こうして私はダンジョンを一旦出る為に来た道を戻る。
この行為が混乱を再び齎してしまうと言う事に関しては自覚はしているし、覚悟もしている。
その騒動でまた私が囲まれ、攻撃を加えられるだろう事も納得していた。
そんな事を思っているとどうにも背後から何やらが付いて来る気配がする。
(んん?先程の彼らの側に飛んでいた魔道具か。これは・・・私を追跡しているのか?どうにも見られていると言った感覚も僅かに受けるな。監視の目、と言った所なのか?便利なモノだ)
別にこれを破壊しようなどと言った気持ちは湧かない。
取り合えずは放置していても不利益にはならないだろうと私は判断して魔道具へと向けた気を収める。
そしてこの小石を提出する際の手際、手順などを頭の中で組み立てて行く。
しかしそこには大きな立ちはだかる問題があった。
(こちらに敵意が無い事をどうやって伝えれば良いだろうなぁ?難しい問題だ)
生者とアンデッド、そこには大いなる埋めきれない溝、と言うか、深い谷が待ち受けている。
その点はどうやっても乗り越えられそうにも無い、私は通路をボーっと進みながらそんな結論を出すしかなかった。




