第12話
「えー、これから協力して頂ける皆さんには撮影用ドローンをお配り致します。撮影された映像は研究の為の資料として後ほど全て回収させて頂きます。個人での撮影器具などに関してで撮られた映像も回収対象となりますので隠し事無く提出していただきますので注意してください。無断で許可無くそれらの映像をそのまま御自身のチャンネルで放映などをされた際には重い罰則が科せられ、追加でチャンネル抹消、最悪の場合は、ライセンス没収などもあり得ますので馬鹿な真似はせぬ様にした方が良いです。今回の問題が解決し終わった後に個人での撮影映像の返還、使用許可などを申請して頂ければ、こちらでの審査の後に合否をお知らせしますのでどうしてもと言われる方はそちらをお待ちください。今回は特殊な個体と思わしきアンデッドナイトの調査、研究がメインです。戦闘は避け、観察を基本として手出しは無用ですので調子に乗ってこちらからの攻撃などはしない様にしてください。それらの約束が守れ無い方は今後の冒険者活動に非常に不利な評価が付きますので覚悟する様に。仕方無く戦闘に入った、などと言った場合は即座に撤退、くれぐれも対象の討伐などと言った欲は出さぬ様に願います。その際の「仕方なく」などと言った判断は調査委員会の方でも精査させて頂きますので、その際にもし「不当」と結論が下された場合は厳しい処分を科せられます。くれぐれも「ワザと」などと言ったふざけた真似はしないのが賢明です。他にも細かい事を言えばまだまだ多くの注意事項などがありますが、それらは皆さん個々でデータベースから確認の程をお願いします。先行してギルドの調査員がダンジョン内に入っています。そちらとの合流、情報交換などは密に行ってください。そうして不慮の事故などを未然に防ぐのも大事です。では、行動を開始してください。」
ここ新宿ダンジョンは一時閉鎖、協力する冒険者を募って先程の問題の調査に乗り出した。
しかし多くの者がコレに参加とはならず。その理由とは。
「なあ?俺さ普段は渋谷ダンジョンで活動してんだけどさ、こんな美味い話を何で新宿組は乗る奴が少ねーの?待ち合わせさっき来たばっかでちょっと事情が呑み込めないんだが?」
「んん?ああ、チラッと話が聞こえたけどよ、どうやら問題になったアンデッドナイトってのがモロクソツエーらしいぞ?って言うか、お前、そこを全く分かってねーでこの話に乗ったん?」
「いや、お前もじゃん。と言うか、強い?はあ?ソレは嘘だろ?滅茶苦茶強いとかあり得るか?駆け出しとか新人とかで無けりゃ対処は簡単だろ?」
「それが、軽くあしらわれたってよ?何十人も居たらしいけど、大立ち回りしてもマトモな戦闘にすらならなかったって聞いた。」
「新宿組は何処もかしこも弱っちい奴ばっかかよ?笑うんだが?ってかお前はそこに居なかったん?」
「俺がここに着いた時にはどうにもそいつがダンジョンの中に入った後って感じで。あー、お前さ、新宿組舐めちゃダメだ。ソレは違う。ちょっと周り見てみろ。冷静になってな。」
「うッ!?・・・おいおい、どいつもこいつもガチンコばっかじゃんよ。マジ?この面子でアンデッドナイト如きが倒せなかったとか余計に嘘だろ・・・」
「アンデッドナイトが出現した時、この場には有名所、しかも実力派が集まってたってさ。なのにダンジョン内に逃がしちまったって。よっぽどの事だったんだろうさ。」
「なあ?それって・・・もしかして俺らくらいのランクだと、この仕事、ヤバめか?」
「んー・・・調査、監視、観察、くらいだったら大丈夫じゃねーの?イケるって。戦闘すんなって注意されてるからな。討伐って話じゃねーのが何とも奇妙だけど。これなら何とかなるっしょ。」
「まあそうか・・・ヤバけりゃ早々に逃げて映像提出してそこで終わりで良いな。それだけでも結構な報酬受け取れるみたいだしな。うっし!簡単な仕事だと思ってたが、少し気合入れ直しとくか。」
彼らは知らない。その件のアンデッドナイトが九千近い数のゴブリンをたった一人で全て殲滅した事を。
しかもその実力の二割も出していないでそれを成したという事実も。
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(ふう、終わったな。只々に面倒なだけだった。とは言え、事後の片付けにも悩まされるとは・・・)
私は最後の一匹、ホブゴブリンを屠った後に床に視線を向けた。
そこには一面、青く輝く小石がまるで絨毯の如くになっている光景。
(以前に習得しておいて良かった。自分に魔法を使える素養が有って良かった)
自身の魔力を世界へと押し込み、そこに出来た「虚」へと物を収納する空間魔法。
(色々と理屈や道理、理論などを必死になって勉強して覚えようと思った時期もあったが、結局は実験、実践の繰り返しで体で覚えたのだったよなぁ)
空間の拡張を魔力で無理やり作り出して、広げたそこに物を収納すると言った魔法なのだ。
コレには緻密な計算式や術理、空間把握能力などなどと言った複雑な「理」が絡み合った技術、術理なのだが。
この魔法を覚えようと思ったきっかけは遠征での荷物の運搬の負担を減らす為だった事を思い出す。
(私以外にこれを積極的に覚えようと動く者は居なかったがな)
使えれば非常に便利な魔法で重宝する。覚えないのは損、と言い切っても良い程に。
しかし魔力、魔法を扱える素養の無い者には無理な代物で。
しかし私はソレを持っていた。だからこそ、ソレを活かさぬ道理は無いと思い身に付けたのだ。
(さて・・・これ程の数を全部拾い集めるのか?はぁ、やるか)
身体に疲れは無い。しかし私は重い精神的疲労を感じずにはいられなかった。




