第11話
無限湧きとでも言いたくなる様な数が穴からワラワラと出て来る。
(いや、必ず打ち止めがやって来るはずだ。さて、どうしたモノか)
穴から出て来たのはゴブリン。どうにもここはゴブリンの巣で間違いが無い様子で。
(間引き・・・いや、全て屠るしか道は無いのか?この速度での追加数となると、ホブゴブリンを狙ってしまった方が・・・)
そこでハタと気付く。この巣の中心は本当に目の前のホブゴブリンなのか?と。
先程に扉が自動で閉まって閉じ込められた罠に嵌まったばかりだ。
(集団を率いる個体、ホブはもちろんだが、シャーマン、リーダー、ナイト、ジェネラル、キング、エンペラー。まだ穴から出て来るかもしれんな。とは言え、もうそろそろ止まっても良いのではないか?・・・この場がゴブリンで埋まるぞ?)
特別で特殊な個体と言った事で無ければ、この大量な数の統率をホブ如きが出来るはずも無い。
しかしキングもエンペラーも、その気配を感じない。出て来ると言った兆候も無し。騎士団所属の時にその二つとは何度か戦闘に入った事もある。居れば感知できたはずだ。
(まさか、統率はされていないのか?・・・と言うか、出て来たゴブリン共がこちらを見て嘲笑している?冗談だろう?本当に上位種が居ないのか・・・中々に舐めてくれるじゃないか)
どうにも今の状況は特殊な物であると今頃になって気づいた。
侵入者、私はアンデッド、ゴブリンからすると「何かの間違いじゃね?」と言った事らしいのだ。
(しかしこのダンジョン、魔物同士は敵対と言った意思は無い?)
向こうの警戒心が薄れて行っているのが手に取る様に分かった。
(だからと言って私はお前らのその「常識」に当て嵌まらんのだ。やらせて貰うぞ)
コレだけの膨大な数のゴブリンだ。もうとっくに異常増殖を越えている。危険水域を既に遥かに超過していると言える状態だ。
(千を超え始めているのにまだ出て来そうな気配。徹底的に間引きだな。いや、全殺しか。容赦はせんぞ?)
気合の掛け声も、今からお前らを殺す宣言も無い。
只、無言。踏み込み、剣を抜き放つと同時に目の前の一匹の首を断つ。
(先ず、一つ)
その後はこちらの一方的な蹂躙と呼べる様な有様だ。
余りにも億劫になり始めて途中で倒した数を数えるのを止めた程だ。
(幾つ出て来るつもりだ?本当に無限湧きなのか?そんなもの、在るはずが無い)
私を明確な敵としてゴブリン共は飛び掛かって来るが、その速度は余りにも遅い。
動きを制限しようと腕、脚、胴などに抱き着こうとしてくる個体も居たが、そんな物は通用しない。飛び付かれる前にその首を私が落とす。
(やはりゴブリンはゴブリン。武器を手にした個体も居るが、扱いは子供のそれ以下か。弓矢を持っていてもここじゃ使い道も無いな)
同士討ちにしかならない、コレだけの数が居れば。まあ私にはゴブリン如きが使う飛び道具は通用しないがそもそもに。
集中力を高く保って僅かな隙も作り出さず私は剣を振るい続ける。
ゴブリンの数が私を圧倒するのが先か。集中力を落とした私がヘマをするのが先か。
(まあそのどちらも有り得んのだが)
時折緩急を付けて多少の集中力を落として気を楽にしつつ戦闘は継続している。
この程度の力しか無い魔物に負けろと言うのがそもそもに私にとって逆に難しいと言える。
数を揃えた、幾らでも追加のお代わりが有ると言っても。
(今ではすっかりと準備体操の気分だぞ?これで負けろと言う方が酷だ)
この膨大な数を統率できる個体がこの場に居ないのがイケない。
これがもしジェネラル以上の個体が一体以上居たならば話は違った。
(まあソレでも私は負けなかっただろうが。戦い、と言った形には最低限なっていたな、その時は)
もう今はそこら中に青く輝く小石が散乱している。数えきれないくらいに。
後でコレを集めるのか?そんな事がチラリと思考の端に掠める。
面倒だ、感想はそれだけ。けれども今はそれ所では無く。
(先に全て片付けるのが先だな。後で幾らでも小石掃除をすれば良い)
下らない事を考えながらでも体はこれまでの鍛練で培ってきた動きを止める事は無い。
敵は確実に減っては行っている。だが。
(終わりが見えん。何時になったら打ち止めになる?コレはもうホブゴブリンを先に倒してしまった方がいいのか?)
飽きが来ていた先に。もうこれ以上は相手の都合に合わせてやる必要は無いのでは?と。
そう、最初からやろうと思えばホブゴブリンのみを瞬殺はできたのだ。
魔力刃、ソレを伸ばして奇襲気味に一刺し、ソレで終わっていたはずだ。
(何か他に罠でも張っているのかと警戒はしていたのだがなぁ。それも無し。好い加減にこちらからも動くか・・・?)
と思った矢先にどうやら終わりがやってきているのが視界に見える。穴からゴブリンが出てこない。
(ならばもうここまでやったんだ。最後までやり切るか)
国での言葉を思い出して私は苦笑いを浮かべる。
『ゴブリンに、百害あって、一利無し。根切り巣を断て、見逃すな』
誰が言ったか詠み人知らずである。




