表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/22

第10話

 分岐が多かったが、しかし、私には何と無く進むべき道が見えて、と言うか、正解が感じられていた。


(何故かは解らない、が、吸い込まれる様に、誘い込まれる様に、うむ、この感覚は・・・)


 私の勘が囁くその方向に「敵」が居る。この感覚は以前、私が生身であった時に何度かあった。


 既にもう迷いは無く、分かれ道があっても迷い無く、止まらずに進み続ける。


 選んだ道、その方向に私の倒すべき敵がいる事を確信して。


(感が冴えるな。そう、この感覚は全能感が呼び起されて良い点も悪い点もある。戒めるべきだ)


 歩む速度は落とさず、周囲への警戒を最大にしながら勘の導くままに進んで行けば。


(不自然な扉、なるほど。階層主の部屋だな。さて、何が待ち受けている?)


 ここまで来る間に出会った魔物は無し。私はこのダンジョンに入ってからゴブリンとしか戦っていない。


(この様子であればゴブリンの上位種か?種類に因ってはひたすらに面倒なのだが)


 扉の奥に進むべきか否か、ソレを少しの間だけ思考する。


 私が出しゃばって階層主を倒して良いモノかどうかと言った所もある。


(所詮は、ああ、私は部外者なのだ。こう言ったモノは本来は冒険者に任せるのが・・・)


 考えがあっちにこっちにと飛び火して余計に悩む時間が増え。


(まあ、ここまでの間に他の者たちにすれ違ったと言った事も無かった。敢えて階層主を放置し続けるといった事もあるまい。やってしまっても構わんのだろう?)


 階層主を放って置けば置く程にその危険性は増す。時が経てば経つ程に。


(こう言った部分も含めてダンジョンの管理が難しい所なのだ。放置し続けていればゴブリンなど異常増殖を起こすからな)


 ダンジョン内では何処からともなく魔物が発生する。


 階層を下れば下る程に、そこに存在する魔物の増殖率は低いのだが。


(ここは低階層、しかもゴブリンだろう?他にも魔物の種類があると言うのならば、遭遇していてもおかしくは無いと思うのだが)


 魔物の質が低ければ低い程に、その増殖する量も率も高い。


 私の知る常識ではそうなのだが。


(どうにもここは私の知っているダンジョンのそう言った常識とはまた違うらしいからな。正解が分からん。さてそうなれば、階層主を倒してしまうと迷惑になると言った事態もあり得るのか?)


 魔物を倒すと出て来る青く輝く小石。それは私の知る常識の中に無い。


 それは結局はここのダンジョンの流儀を私が分かっていないから起きる悩みで。


 それと根本的な所の問題として、私の口からマトモな言葉を喋れないと言った点。


 ついでに今の私に誰かが親切丁寧にここのルールを教えてくれると言った事も無い訳で。


(まあ教えてくれる誰かが居たとしても、私にはここの現地語が分からないので通じ無いのだが)


 障害が三つも四つも重なる。こうなれば一つずつ試行錯誤して知って行くしかない。


 そしてそうなると私の行動の中に現地人たちにとって傍迷惑な事も今後起こしてしまう可能性が高い。


(中に入って様子見をして、都合が悪そうならば撤退で良いか。無理をして倒さずとも・・・いや、それもダメか?)


 魔物は基本的に逃したらいけないのだ。


 経験を重ねて生き延びた個体と言うのはソレだけで非常に厄介な存在となる。


 そう言った魔物は判明次第優先して滅する必要がある。


 それの対処をせずに放置すれば人の社会に甚大な被害を及ぼす事は火を見るよりも明らかだからだ。


 なので見敵必殺、ソレを為さねばならない。逃亡を許してはならないのだ。ゴブリンには特に。


(奴らはそう言った個体であればある程に悪知恵が付く。駆け出しの冒険者などはそう言った個体と遭遇した場合、もしもソイツが数を率いる集団であったなら容易に弄り殺される事になる)


 ゴブリンにはそう言った油断の出来ない部分がある。


 まあ、私程に力を付けた騎士ならばゴブリンキングが出て来ても別にどうって事は無いけれど。


(行くか。間引く程度、それを念頭に置いて動けば悪い様にはならんだろう)


 そんな軽い気持ちで結論を出した私は扉を押す。


 すると音も無くスーッと抵抗を感じさせずに扉は開き。


(なるほど、ホブゴブリンだな。で、取り巻きが三十を超えるか。まあ、その程度では私の敵では無いな)


 中が見えた。そこにはゴブリンの中に頭が一つか一つ半程に飛び出させている個体が見えて。


(そして部屋の広さはそこそこにある、と。・・・何だ?ホブゴブリンの背後の壁にそこら中に穴?奥が見えぬ程に?何やら面倒な気配がする・・・)


 部屋の広さは我が国に在った練兵場と言った程。


 まだまだ様子見、そう思って部屋の中に入り込んで行けば。


(・・・!?扉が勝手に閉まった!閉じ込められたのか?まさかゴブリン共を全て倒さねば開かないとでも言うのでは無いだろうな?)


 そう思って閉まった扉に近づいて気付く。取っ手が無い。


(先程の様に押しても開かん。そして引くにしても取っ手が無いとなれば。確定か。監禁されたという訳だ)


 罠、予想できて当然の。しかし私はその事が思考の端にも引っ掛からなかった。


(騎士団長を務めていた時よりも相当に緊張感が無くなっている。それに引きずられてでもいるのか、同時に警戒心も落ちているなぁ)


 昔の自分では引っ掛からなかった様な罠だった。これに今の自分の情けなさに少々落ち込みつつも私はホブゴブリンの方に向き直る。


(さて、やるしかないな。だが、壁に開いている穴が気になる。まるでゴブリンの巣の入り口の様な・・・おいおい、そう言う事か?)


 私の勘が当たる。ソレは何処までも面倒な代物だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ