ノーマルでもヤバイ奴
翌朝、涼たちは隣村の宿で目を覚ました。涼の身体はまだ筋肉痛で痛んでいたが、なんとか動けるようになっていた。朝食を取りながら、次の計画を確認した。
「今日はさらに遠くの山脈を目指します。道中、魔物が出没する可能性が高いので、気を引き締めていきましょう。」涼が地図を広げながら言った。
「了解しました。私たちも全力でサポートします。」ミリアが力強く答えた。
「涼様、あっし達の力でこの旅を成功させましょう。」クラインが力強く言った。
「そうだな。皆で力を合わせて、次の神器を手に入れよう。」涼は決意を新たにした。
カイロスも同行することになり、彼も槍を持って準備を整えていた。「私も我流ですが、この槍で少しは戦うことができます。道中皆さんの足手まといにならぬよう、頑張ります。」
朝食後、カイロスは涼たちを村の市場へ案内した。彼の商人としての伝手を使い、安く物資を手に入れる手配をしていた。
「この村には昔からの知り合いがいるんです。彼らに頼めば、良い物を安く手に入れることができます。」カイロスが説明する。
市場では、新鮮な果物や野菜、乾燥した肉や魚、保存食などが並んでいた。カイロスは次々と店主たちと交渉し、必要な物資を集めていった。
「これで当分の間、食料には困りやせんね。」クラインが満足そうに言った。
「カイロスさん、本当に助かります。」ミリアも感謝の言葉を述べた。
「お互い様です。皆さんが私を助けてくれたおかげですから。お安い御用ですよ。」カイロスは微笑んだ。
物資を確保した後、涼たちは村の広場で市場で購入した果汁の飲み物を手に休憩を取っていた。そこに村の若者たちが集まり、涼に興味津々の視線を向けていた。
「お前が精霊の賢者だって?本当に強いのか?」一人の若者が挑発的に声をかけてきた。
「そんなに強いなら、村相撲で勝負してみろよ!」別の若者が声を上げた。
「脳筋だな、体力を使うことは嫌いなんだけど…」涼はためらいながらも、若者たちの挑発に乗ることにした。「いいだろう、やってやる。」
クラインとミリヤの制止を振り切り立ち上がる。
村相撲は相撲とレスリング、柔道が混ざったような競技で、投げた後に抑え込むか関節技でギブアップを取れば勝ちとなる。涼は筋肉痛を感じながらも、リングに上がった。
『今回は俺の力を貸さないぞ。自分の力でやってみろ。』ラカンの声が頭の中に響いた。
「計算違いだな、まずいぞ…」涼は心の中で呟きながら、リーダーの大柄な若者と向き合った。
若者はすぐに攻撃を仕掛けてきたが、涼は冷静にその動きを見極めた。そして組み合ったとき思ったほど強く感じず、あっという間に組み伏せて抑え込んでしまった。
「なんでノーマル状態の自分にこんな力が…?」涼は驚いた。
『お前が俺の力に適応し始めているんだ。常に体を鍛えている状態になっている。そこでもっと鍛錬をすれば、早く力を使いこなせるぞ。どうだ!』ラカンがワクワクしながら提案してきた。
「嫌だ。」涼は即座に答えた。
勝負に勝った涼は、村の若者たちと打ち解け、酒場でエールを飲むことになった。村の特産である豚に似た家畜の骨付き肉を焼いた料理が振る舞われ、その香ばしい香りが食欲をそそった。
「これは美味しいな!エールもクセが無く飲みやすい。」涼は肉をかじり、エールを飲みながら感嘆の声を上げた。
「この肉は我が村の自慢ですからね。エールも最高でしょ?」若者たちは満足そうにエールを飲み干した。
ミリアは野菜と果物だけを食していた。彼女は巫女としての戒律を守り、肉類を避けていた。
「ミリアさん、野菜も新鮮で美味しいですね。」涼が声をかけると、ミリアは微笑んで答えた。
「ありがとうございます。村の皆さんの心が込められた作物ですから。凄く美味しいです。」
涼たちは満足のいく食事とエールで英気を養い、宿へと戻った。涼はベッドに横になりながら、今日の出来事を思い返していた。
「これからも多くの試練が待っているだろう。でも、ラカンの力と皆の協力があれば乗り越えられる。」涼はそう自分に言い聞かせ、目を閉じた。
ラカンもその声に応えるように『そうだ、お前たちならきっと成功する。これからも力を貸してやるよ!肉も上手かったしな!』と涼に語りかけてきた。
「なんで、肉の味が分かるんだ?」涼が問いかける。
『そりゃお前、俺はお前の全ての感覚を共有している、考えていることもなww』
『風呂上がりのミリヤ可愛かったなwww』
敵は自分自身の中にもいるのかと感じ、ラカンと口喧嘩をしながら夜は更けていく。
こうして、涼たちは一日を終え、次の日に向けて休息を取った。新たな冒険に備え、彼らの絆はますます強くなっていくのだった。
つづく。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
「面白そう」と思ってもらえましたら、ブックマークと★を頂けたら幸いです!
皆様の声が原動力になりますので、お手数ですがよろしくお願いいたします。