5.ヤバイ神通力
三人は村の門を出て、広がる大地へと歩み出した。最初の目的地は隣村で、そこまでの道のりは約一日の旅だった。途中には険しい山道や深い森があり、魔物が出没する危険なエリアも存在していた。
「涼様、どうかお気をつけて。村のためにありがとうございます。」長老が涙ながらに言った。
「大丈夫ですよ。私たちが必ず神器を持ち帰ります。そしてみんなで真の精霊の舞を踊りましょう。」涼は決意を込めて答えた。
クラインは長老の涙を見て貰い泣きしながら頷いた。
ミリアも力強く頷き、「皆さん、どうか無事を祈っていてください。そして留守の間、村を頼みます。」と叫んだ。
三人は村を出発し、森の中へと進んでいった。木々が生い茂る森は薄暗く、鳥のさえずりや小川のせせらぎが静かに響いていた。
「この森は美しいですね。」ミリアが感嘆の声を上げた。
「確かに。しかし、油断は禁物だ。」クラインが警戒しながら答えた。
ラカンの声が涼の頭の中に響いた。『おい、この森には魔物が潜んでいるからな。注意しろよ。』
「了解。皆、警戒を怠らないように。」涼は二人に伝えた。
しばらく進むと、森の奥から不気味なうなり声が聞こえてきた。涼は立ち止まり、音の方向を確認した。
「何かが近づいてきている…」涼が警告した。
すると、茂みの中から巨大な魔物が姿を現した。全身を黒い鱗で覆った獣のような姿をしており、その目は赤く輝いていた。
「これはヤバイやつだな…」涼は身構えた。
『涼、まずは剛力を使ってみろ。その腕力で魔物を押し返せるはずだ。』
涼はラカンの指示に従い、剛力の力を発動させた。すると、身体全体に力がみなぎり、腕力が倍増した感覚があった。
「よし、行くぞ!」涼は魔物に向かって突進し、その強力な拳を振り下ろした。
涼の一撃は魔物の頭部に直撃し、魔物は苦しげにうなりながら後退した。しかし、魔物はすぐに体勢を立て直し、鋭い爪で涼に反撃してきた。
『疾風を使え、涼!』ラカンが指示を飛ばした。
涼は疾風の力を発動させ、一瞬で魔物の攻撃を回避した。そして再び剛力を使い、今度は魔物の腹部に強烈な一撃を加えた。
魔物は大きくのけぞり、地面に倒れ込んだ。クラインとミリアもそれぞれの武器を構え、魔物にとどめを刺すために突進した。
「これで終わりだ!」クラインは鋭い剣を振り下ろし、魔物の首を一閃した。
ミリアは祈りの力を込めた矢を放ち、魔物の心臓を貫いた。魔物は最後の叫び声を上げ、静かに息絶えた。
「涼様、見事でした!」ミリアが駆け寄り、涼を称えた。
「いや、皆の力があってこその勝利だ。」涼は息を整えながら答えた。
『よくやったな、涼。これでお前も少しは俺の力に慣れてきただろう。』
「ありがとう、ラカン。君の助けがあってこそだ。」
「ただ、力の加減が難しい…なぜならすでに筋肉痛で体中が痛い。」
涼はそのまま、倒れこんだ。
涼が動けるようになるまでクラインとミリアも休み、回復した涼と再び隣村へ向かって歩みを進めた。
途中、涼はラカンの力を使いながら、様々な状況に対応していった。険しい崖を登るときには剛力を、素早く移動する必要があるときには疾風を駆使した。
「涼様、あなたの力は本当に素晴らしいですね。」ミリアが感嘆の声を上げた。
「ラカンに力を借りているだけだから、自分自身はまだまだだよ。」涼は謙虚に答えた。
ラカンも満足そうに『まあ、これからもっと強くなれるさ。お前の努力次第でな。』と応えた。
隣村に向かう途中、三人は深い森の中を進んでいた。森の静けさが不気味さを増し、彼らは常に警戒を怠らなかった。その時、遠くから助けを求める叫び声が聞こえてきた。
「助けてくれ!誰か、助けてくれ!」
「今の声、どこからでしょう?」ミリアが周囲を見回す。
「この先から聞こえたようだ。急ごう!」クラインが剣を抜いて先頭に立った。
三人は叫び声の方向へ駆け出し、やがて一人の商人が巨大な魔物に襲われている光景を目の当たりにした。商人は馬車の後ろに隠れながら、必死に魔物の攻撃を避けていた。
「助けてくれ!このままでは…!」
「任せろ!」涼は叫びながら、剛力の力を発動させて魔物に突進した。
魔物は涼の攻撃に気づき、巨大な爪を振り下ろした。涼は疾風を使って瞬時にその攻撃を回避し、逆に魔物の側面に回り込んで強力な一撃を加えた。
「クライン、ミリア、商人を守ってくれ!」涼が指示を飛ばす。
「了解!」クラインは剣を構え、ミリアと共に商人のもとに駆け寄った。
「大丈夫ですか?」ミリアが商人に問いかける。
「助かった…でも、馬車の中には貴重な荷物が…」
「任せてください。私たちが守ります。」クラインが安心させるように言った。
その間も涼は魔物と激しい戦いを繰り広げていた。魔物はしぶとく、何度も攻撃を仕掛けてくる。涼はラカンの力を駆使して応戦した。
『剛力と疾風の組み合わせで一気に仕留めろ!』ラカンが助言した。
「わかった!」涼は全力で力を解放し、魔物の攻撃をかわしながら、その弱点を狙った。
一瞬の隙を突いて、涼は剛力を込めた拳を魔物の心臓に向けて突き出した。その一撃は見事に魔物の急所を捉え、魔物は悲鳴を上げながら地面に崩れ落ちた。
「やったか…」涼は息を整えながら、魔物の動きを確認した。
「見事です、涼様!」ミリアが駆け寄り、涼を称えた。
「無事でよかった。商人さん、荷物も無事だ。」クラインが商人に報告した。
「ありがとう、本当にありがとう!これで旅を続けられる。」商人は感謝の気持ちで一杯だった。
商人は涼たちに自分の名前を名乗り、感謝の意を示した。
「私はカイロスという商人です。あなた方の助けがなければ、今頃私は…」
「カイロスさん、大丈夫ですよ。困ったときはお互い様ですから。」涼が謙虚に答えた。
「しかし、この恩は忘れません。少しでもお返しがしたい。」カイロスは馬車からいくつかの品物を取り出した。
「これは旅に役立つ保存食と薬です。どうか受け取ってください。」
「ありがとうございます。では、お言葉に甘えますね。助かります。」涼は感謝の気持ちを込めて頭を下げた。
「厚かましいお願いなのですが、もし隣村に行くなら、私も同行させてください。道中の安全を確保するために、皆さんの力をお借し頂けないでしょうか?」カイロスが申し出た。
「もちろんです。一緒に行きましょう。」ミリアが微笑みながら答えた。
こうして、カイロスを加えた涼たちは、隣村への旅を続けた。途中、カイロスは自分の商売の話や旅の中で見聞きした話を聞かせてくれた。その話はこの世界に来たばかりの涼、村の外に疎いミリアとクラインにとって興味深く、旅の疲れを癒してくれるものだった。
やがて、夕暮れが近づくと、隣村の明かりが見えてきた。四人はほっとした表情で、村の入り口にたどり着いた。
「ここが隣村ですね。」クラインが地図を確認しながら言った。
「そうだ。ここで一晩休んで、次の目的地に向かおう。」涼は決意を新たにした。
「皆さんの、おかげで無事にたどり着きました。ありがとうございます。」カイロスがほっとした様子で馬車から下りてくる。
隣村の村人たちは四人を歓迎し、食事と宿を提供してくれた。涼は村の長老に会い、これまでの経緯を説明し、協力を求めた。
「あなた方が精霊の賢者様の御一考ですか。どうかお力をお貸しします。」長老が感動した声で答えた。
その夜、涼はミリアとクラインと共に、次の目的地について話し合った。
「次はラカンの指示に従って、さらに遠くの山脈へ向かおう。」涼が地図を広げながら言った。
「了解しました。私たちも全力でサポートします。」ミリアが力強く答えた。
「涼様、私たちの力でこの旅を成功させましょう。」クラインが力強く言った。
「そうだな。皆で力を合わせて、次の神器を手に入れよう。」涼は決意を新たにした。
こうして、三人は、次の目的地へ向けて再び旅立つ計画を立て、眠りについた。
しかし、涼は横になった瞬間、体中の筋肉が悲鳴を上げ、寝付くことが出来なかった。
「おい、ラカンさんよ、この能力を使ったあとの痛みはいつまで続くんだ?」
『知らんな~(笑)、お前の身体が鈍ってるからそうなるんだよ。自分の事は自分に聞いてみなw』
ラカンの高らかな笑い声を聞きながら、涼は意地で眠りについた。
つづく。
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