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3.ヤバイやつとヤバイやつ

「今からですか?わ、わかりました。」

 ミリアは驚きながらも落ち着いて微笑みを浮かべ、村人たちに声をかけた。


「皆さん、精霊の賢者様のご指示通り、今から精霊の舞の儀式を始めます!」


 驚いていた村人たちもミリヤの言葉を聞き、一斉に動き出し、神殿の中で必要な準備を整え始めた。涼はその様子をニヤニヤニコニコしながら見ていた。

 そして書き溜めたメモ帳を確認しながら儀式の準備に入った。そして、心の中で一つの決意を固めた。


「では、始めましょう!」涼は神殿の中央に立ち、村人たちに指示を出し立ち位置や儀式の道具を事細かく伝えた。

「何か普段よりかしこまった雰囲気になってねぇか?」村人の一人が呟くと、【地獄耳大使】の異名を持つ涼は、

「その通り、今までの儀式は何百年と行われる内に、細かい決まり事が曖昧になっていたのです。」

「だから、今日ここで本来の姿に戻します。」


 涼は両手を広げて儀式を始めた。ミリヤは精霊の巫女として、涼に教わった舞を始める。まるで日本の神楽のように優雅で力強かった。村人たちはその姿に感動し、自分たちの持ち場で踊りながら全員が一心に祭壇へ祈りを捧げた。


 すると、神殿の中に光が差し込み、涼のたちの舞に応えているかのようだった。その瞬間、涼の頭の中に声が響いた。


『おいおい、誰だお前?こんな勝手なことしてるのは?』


 涼は一瞬驚いたが、冷静さを保ち、その声に返答した。


「私は白石涼。この村の人たちのために精霊の舞を行っている。君は誰だ?」


『俺か?俺はこの村に封印されていた精霊だよ。お前がその儀式を始めたおかげで、ちょっとばかし力が戻って自由になれたみたいだな。でも、まだ力は完全に戻ってない。』


 涼はその言葉に興味を引かれた。「どうすれば君の力を取り戻せるんだ?」


『俺の力を取り戻すには、村の外に俺が隠した神器が必要だ。それを集めてくれば、俺も完全に力を取り戻せる。そして、真の精霊の舞を、あの姉ちゃんは舞うことができるんだ。』


「それでは、この儀式は不完全だと?」少しムッとしながら呟く。


『間違っちゃいないよ、この村に伝わる、俺の力を補充するための儀式として完璧だ。』

『まぁ、いくら力をもらっても、穴の開いた器じゃ溜めておけないだろ?そう言うことだよ。』


 涼の探求心が刺激される。


「だったら、真の儀式とやらをやってやろうじゃーないか!」

『お前にできるかな?そんなヒョロヒョロな体でよ。』

『まぁ、いいや、良い踊りだったから、力を貸してやるよ、動ける間はな、けど一旦寝ま~す。』

 随分と軽いノリの精霊だなと思いながら、涼はその提案に乗ることを決意した時、急にミリヤの声が聞こえてきた。


「・・さま・・・涼様!どうされました?!大丈夫ですか?!」


 慌てた様子のミリヤが突然視界に現れた。

 どうやら、精霊と頭の中で会話をしてた時から、涼は固まったまま動かなくなっていたらしい。


「すみません、突然この村に封印されてたっていう言う精霊に話しかけられちゃって。」

「精霊様と、お話ししたのですか?!」さっき驚いたついでに、またミリヤは驚く。

 涼は精霊との会話の内容をミリヤに伝えた。


 その会話を終えると、ミリアはクラインや村人にそのことを伝えた。


「みんな、涼様が精霊様の声を聞きました。この村を救うためには、真の精霊の舞を捧げなければいけません。それには村の外にあると言う神器を集める必要があります。それを集めれば、精霊の力を取り戻し、真の精霊の舞の儀式を行うことができます。」


 ミリアは目を輝かせて答えた。「涼様、私も神器集めに協力します。村のために必要なことです。」


 クラインも同意し、涼に力強く言った。「涼様、一緒にその神器を探しに行きやしょう。」


『探しに行くったって、場所知ってるのかい?』精霊の声が涼の頭に響く。


「お前、さっき寝たんじゃないのか?」


『寝たよ、君らとは違う時間軸だからね、まぁ、睡眠とは言っても、また違う意味でもあるのさ。』

『それはさておき、さっき言ったように俺の力を貸してやるよ。まずは契約しよ、そこに捧げられている、お供え物を何でもいいから食べてみてよ。』


 儀式に使われた祭壇には、果物や、肉や魚が奉納されていた。


「ヨモツへグイってことか?」涼が呟くと『ご名答!君の世界で言うところのね。まぁ、もともとこっちの行事なんだけどね~、どうする?やめとく?』

 それを聞いた瞬間、涼は祭壇に捧げられた、リンゴをかじった。


「知識の探求の為なら死ねる。」


【民俗学のヤバイやつ】の異名は伊達じゃない。


『さっすが、精霊の賢者様!俺のお守りなだけあるね!いいよ、契約成立だ、俺の神通力をあげちゃうよ。』


 その瞬間、涼の体は光り輝き、そしてぶっ倒れた。


 つづく。

ここまでお読みいただきありがとうございます!


「面白そう」と思ってもらえましたら、ブックマークと★を頂けたら幸いです!


皆様の声が原動力になりますので、お手数ですがよろしくお願いいたします。

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