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再契約

空は青い。この青さは空が青さという性質を所持しているということや太陽光が実は青さを持っているといことを意味しない。太陽光が持つ光の波長のうち我々の視覚が青を認識しているだけだ。などという初等教育過程のうちに身につけた知識を寝転びながらぼんやりと眺めていた。そんな取り留めもないことを考えていると、気配を殺しながら近づいてきている人間に気がつく。「少佐殿、職務中ですのでお戻りください。」と20才前後の男が少し苛立ちながら催促してきた。見上げてみると、須長春樹という男が見下ろしている。体格は175cmほどで筋肉質で顔には怪訝な表情はあるものの端正な顔立ちをしておりこの中性的な顔立ちならアイドルとしてでも十二分にやっていけることだろう。「大変申し訳ない、まだここへ来て間もないため道に迷ってしまいました。」フンと半角カタカナみたいな擬音後が聞こえた気がする気もするがたぶん気のせいだと思う。海が岩壁にぶつかる音と海風の音がさざめき音と沈黙がしばし流れたあと、沈黙に耐えきれなくなったのか、「行きましょう、送っていきますから」と須長の提案を受け入れ、透明な半月板の上に腰を掛けたその後半月板の横のアームのようなもので行く先を設定している。ちょうど2020年で言えば透明なソファの横にトイレのビデとか設定するような装置に近似しているかもしれない。そんなことを思い出しているうちに設定が終わり、椅子と呼ばれるその物体は磁力によって浮遊して目的地まで運んでくれるようだ。「なぜ音声認識で設定しないのだね?」と訪ねると、「こんな僻地に送られるものは旧式ですから、そういった不具合も多少ありますね、安心してください。目的地にはたどり着きますから」と業務上最低限の会話のみが行われた。


この装置の技術は現在では"かつて"、といってもキリスト歴がまだ使われていた時代のもので、先進諸国以上に発展途上国で普及している技術だ、道を舗装する必要がない以上コストが減るしどこへでも走行できるのは魅力的な装置だと言える。当初は事故もないわけではなかったものの今では全くもって事故は起きない。空の青さは私たちの世界がかつてとなんら変わらないことを示しているがそれは人間という存在がいかにとるに足りない存在かを残酷にも示しているかのようにも見えた。


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