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【完結】勇者殺しの元暗殺者。~無職のおっさんから始まるセカンドライフ~  作者: 岡本剛也
第2章

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第69話 新たな宿探し


 昼飯はギルド通りの屋台で適当に済ませ、腹も丁度よく準備万端の状態。

 今は昼過ぎのため夜までに宿屋を探し、できることならば今日中に宿を移したいところ。


 まずはどこの地区の宿屋にするかを決めてから動こうか。

 闇雲に探していると、無駄に時間だけを食ってしまう。


 俺の中の候補としては二つ。

 一つ目は今現在泊まっているボロ宿がある、治安の悪い西地区。

 

 俺が今泊まっている宿屋の値段も安いが、他の宿屋の値段も他と比べて格段に安い。

 よく世話になっている屋台市も近いし、住み慣れていることから西地区から探すのが今のところの最有力。


 二つ目は今現在いるギルド通りのある東地区。

 手前は冒険者がわんさかおり、奥に進むにつれて貧困街が近づくため、治安の悪さは種類が違うが西地区に匹敵する。


 利点としては宿屋の値段が安いことはもちろん、俺の職場でもある『シャ・ノワール』が大幅に近くなる。

 『シャ・ノワール』が構えている場所は一応大通りとなっているが、ほぼほぼ東地区。


 この間の強盗騒ぎの時も、ギルド通り前の詰所が対応してくれたことから分かる通り、凄まじく中途半端な位置に店が建てられている。

 『シャ・ノワール』は冒険者を客層と定めた方が良かったし、中途半端な場所ではなく最初から東地区に店を構えていたら、十年間も客が来ないことで悩まされていなかったと思うが……。

 

 人気店なら、無職のおっさんだった俺を雇ってくれていなかっただろうし、レスリーの商才の無さに感謝しなくてはいけない。

 とまぁ、話が脱線したが、宿屋を東地区にする最大のメリットは『シャ・ノワール』が近くなること。


 ほぼ毎日通う訳で、西地区からでも飛ばせばすぐ行けると言えば行けるのだが、やはり近い方が良いことに変わりない。

 肉串を食べながら二つの候補で悩んでいた俺は、せっかくだし新しい地区に住みたいという理由で東地区から探すことにした。



 俺の希望としては冒険者が少なく、近くに良さそうな料理を提供してくれる店があり、値段が手ごろな宿屋。

 冒険者が少ない場所ということで、一番宿屋が密集している冒険者ギルド付近は避け、商人ギルド前の詰所付近から探す。


 深層心理なのか、それとも本当に悪いことをしているからなのか、詰所前は冒険者の数が一気に減る。

 俺が一番の悪人とも言えるが、そんなことは関係なく詰所付近が一番治安が良い。


 強盗を捕まえているため、この詰所の兵士とは仲が良い人も多いし、この付近で決めてしまいたいところなのだが……見つけた宿屋は二つだけ。

 それも一つは一泊銀貨二枚で、もう一つの宿屋は一泊銀貨二枚と銅貨五枚。


 銀貨二枚の宿屋でもなんとかできそうではあるが、かなりカツカツになってしまう。

 食費を削りたくないため、仕方がないが別の宿屋にしようか。


 治安の良い詰所前の宿屋を諦め、次に向かったのはギルド通りと貧困街の丁度中間辺り。

 ここから北に進んでいくと、短剣を購入した『ダンテツ』がある。


 そんな中途半端な場所にあった『水の郷』という宿屋。

 看板には一泊銀貨一枚と書かれており、俺が探していた金額とぴったり一致。


 ギルド通りからも離れており、治安も悪くはなさそうなため中に入ってみるか。

 内装も確かめたいため、心の中ではほぼここで決めているが『水の郷』の中に入った。


「……おー」


 入った瞬間に思わず声が漏れてしまうほど、内装はしっかりとしていて何より綺麗だった。

 比較対象がボロ宿ではあるが、それを抜きにしてもかなり清潔感があって好印象。

 これで銀貨一枚なら、費用対効果は非常に良いと思う。


「いらっしゃいませ。ご宿泊をご希望の方でしょうか?」

「ああ。長期で泊まろうと考えているのだが、部屋は空いていたりするか?」

「はい、お部屋は空いております。お部屋の種類が三つございまして、どの種類のお部屋も今は空いております」

「それなら良かった。しばらくの間、泊めさせてもらいたい」


 宿屋に入る前までは、一応他の場所も見て決めようと思っていたが、内装を見てここに決めた。

 これ以上の条件の宿屋はあっても数が少ないだろうし、時間をかけて探すだけ無駄と判断。


「ありがとうございます。それではご希望のお部屋はございますか?」

「どこでも構わない。おすすめの部屋でお願いできるか?」

「かしこまりました。それではお部屋に案内いたします」


 ボロ宿の店主とは違い、丁寧な対応で部屋まで案内を開始してくれた従業員。

 フロントだけでなく、どこもかしこも掃除が行き届いているのが分かり、部屋に入る前から俺の気分はどんどんと高揚していく。


「こちらの二〇六号室となります。鍵をお渡しいたしますので、なくさないようにご注意ください。また、お出かけの際はフロントでお預かりいたしますので、不安な場合はお預け頂ければと思います」

「丁寧にありがとう。あとでお金を払いにいかせてもらう」

「かしこまりました。ごゆっくりどうぞ」


 そう言ってから立ち去る従業員を見送ってから、俺は渡された鍵を使って部屋の扉を開錠。

 これから泊まる部屋の中へと入った。


「おー!」


 さっきは小さくだったが、今回は結構な声量で声が漏れてしまった。

 部屋の大きさはそこまでだが、一人で過ごすには丁度良い部屋の大きさ。


 かっぴかぴの薄い布団ではなく、白くふわふわなベッド。

 変な臭いのするランプではなく、部屋全体を明るくできるほどの魔道具。

 開けるのも一苦労の錆びついた窓ではなく、先ほど通ってきた通りが一望できる錆びついていない窓。

 

 前者のボロ宿でもテンションが上がったため、これからここで寝泊まりできることを考えると嬉しさで頬が緩んでしまう。

 更に部屋には小さいながらもシャワーとトイレがついており、一生ここで住みたいとも思える部屋。


 割と突発的に決めてしまったが、これで銀貨一枚ならば大当たりと言えるだろう。

 俺は部屋に置かれている椅子に腰かけ、しばらくこの部屋の余韻に浸っていたのだった。



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