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【完結】勇者殺しの元暗殺者。~無職のおっさんから始まるセカンドライフ~  作者: 岡本剛也
第2章

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第38話 三つのエリア


 それから六日が経過。

 『シャ・ノワール』の客行きについてはまた徐々に伸び始めており、年配の客だけでなく幅広い年齢層の客が来るようになった。


 特に冒険者の数は見違えるほど多くなり、値段の安さとヴェラの容姿に惹かれてか、ほとんどがリピーターとなってくれている印象。

 ただ一つ面倒くさいのがヴェラが休みの日で、ヴェラについて尋ねてくる客の対応が非常に怠い。

 商品や店についてのことなら、俺もいくらでも答えるんだけどな。


 と、まぁ文句を言ってみても仕方がないし、ヴェラ目当てであろうが『シャ・ノワール』の大事な客であることには変わりない。

 俺とレスリーのみで営んでいた場合では絶対に客になっていない層だし、ヴェラの休みの日についての質問は上手く誤魔化しつつ、決して逃さないように対応には注意している。


 配達も手数料を取ることにしてから新規はグッと減ったのだが、一度利用してくれた人はほぼリピートしてくれている。

 配達でほとんど店の方の手伝いができないのが俺としては残念だけど、手数料のお陰で売り上げは大幅に増加。

 元々お金を取っていなかったものを取るようになった訳で、当たり前といえば当たり前なのだが。


 とりあえずこの調子で、あと半年くらいは俺が配達に駆け回って売り上げをあげ、『シャ・ノワール』の金が貯まってきたらまた色々と考えたい。

 今の状態だと、どうしても俺の力がないと店が回らない状態になっているからな。


 俺なんかを雇ってくれた恩もあるし、簡単に辞めるつもりは一切ないが……。

 いくら一般人を装っていても俺は元暗殺者であり、何が起こってもおかしくない。

 ついこの間も、『都影』の支部長を殺してしまったしな。


 それに何も起こらなくとも色々と世界を見て回りたいという思いもあるし、俺がいなくてもしっかりと『シャ・ノワール』が営業できるようなシステムには、近い内に変えていかないといけない。

 その時に備えて、今の内からアイデアは考えておくとして……今日は一週間ぶりの休日。


 先週は酷い休日だったため、今日は休日を満喫したい。

 まずは『ランファンパレス』に行って飯を食い、その後は大通りで色々な店を巡りながら革の防具以外の服を見繕いたい――ところなんだけど、テイトの様子が気になる。

 支部長を殺してから一週間経ったし諸々の情報を聞くためにも、まずはテイトのところに話を聞きに行こうか。

 


 この街、ヨークウィッチの西にある露店市の更に先。

 ここには露店の更に売れ残りが売られていたり、違法なものが売られている闇市がある。


 露店市には足繁く通っている俺だが、流石に闇市には行く機会がない。

 治安も悪いし、売られているものの質は最底辺か違法なもの。

 

 街自体も見て見ぬフリをしてタブーとしている、いわゆる見捨てられた場所。

 ここに『都影』の元構成員であった、テイトとその妹がいる可能性が高いと俺は踏んだため初めてやってきた。


 正直、配達をしながら街を駆け回っていれば見つけられると踏んでいたのだが、結局テイトを見つけることができなかったからな。

 配達量が増えたことにより、本当に街中を駆け回っていたはずだが見当たらなかったということは、テイトの居場所は消去法で三カ所に絞られる。


 一カ所目はもちろんこの闇市で、二カ所目はギルド通りの更に奥にある貧困街と呼ばれる場所。

 空地に無数のテントが建てられており、そこにこの街の貧困層が寝泊まりしている。


 露店で店を出しているのも貧困街に住んでいる人達が多く、闇市よりはまともな生活が送れている人が住んでいるエリア。

 テイトがこっちに身を潜めている可能性も十分に考えられるが、『都影』のアジトがギルド通りにあったことから、ギルド通りから近い貧困街に身を隠す可能性は低いと俺は見た。


 そして三カ所目は、街の入口から最も遠い北の富裕層エリア。

 金はある訳だし配達を利用しそうな層な感じがあるが、この北の富裕層エリアに住む人たちは使用人を雇っている。


 買い出しは全て使用人が行うようで、俺はまだ一度も北の富裕層エリアには足を踏み入れていない。

 ……とまぁ、富裕層エリアのことは今はどうでもよく、確実にこのエリアにテイトがいないことだけは分かる。


 実質二択であり、俺が可能性が高いと思ったのは北側にある闇市ってことだ。

 闇市にいなければ貧困街に行けばいいだけだし、別にいなかったとしても見つかるとは思うのだが、休日に闇市の真反対に位置する貧困街まで行くのは面倒くさいからいてほしいところではある。


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