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【完結】勇者殺しの元暗殺者。~無職のおっさんから始まるセカンドライフ~  作者: 岡本剛也
第7章

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番外編『ジェイドの道具屋繁盛記』 その59


 エイルは興味津々な様子でエンペラに手を伸ばすと、指先で突っつこうとしたが、華麗に避けられた。


「こいつはエンペラといって、俺の従魔だ」

「従魔……!? おい、ジェイド! いつの間に魔物使いになったんだよ!」

「別に魔物使いになったわけじゃないぞ。荷物持ちがほしくて、辿り着いたのが従魔だったってだけだ」

「いやいや、従魔にできたんなら魔物使いだろ! それにしても、可愛らしい魔物だな! 俺にも撫でさせろ!」


 浮いているエンペラを捕まえようとしているが、空気を掴むように躱され、一向に捕まえられる気配はない。

 ムキになって本気で捕まえにかかろうとしたところで、俺はエイルを止める。


「無理やり捕まえようとするな。エイルも、知らないやつにいきなり撫でられたら嫌だろ?」

「ちょっとぐらいはいいだろ!」

「ちょっとも嫌だ」

「だそうだ。とりあえず紹介はしたから、本題に入らせてもらうぞ。エイルは北の山で何をしていたんだ?」


 俺がそう尋ねると、途端に顔色を悪くさせた。

 逃げた自覚も、悪いことをしたという自覚もあるようだな。


「マイケルに頼まれて、エイルを探しに来たんだ。もうそろそろ逃げるのも飽きただろ? とっとと帰ろう」

「くっそぉ! グレアムもマイケルの手先に成り下がっていたのか!」

「別に俺は誰の手先でもない。色々な情報をくれたから、エイル探しを手伝ったってだけだ」


 強いて言うのであれば、レスリーの手先ではあるか。

 まぁ、手先って関係性ではないが。


「やっぱり手先じゃねぇか! グレアムのばか! あほ! マヌケ!」

「……子供みたいだな。図体はでかいのに」

「なんだとー! このチビスケ!」

「私はチビではない。お前らがデカいんだ。デカ女」


 本当に子供のような喧嘩を始めた二人。

 俺はため息を吐きつつ、エンペラには再び鞄に入るよう促した。


 相性があまり良くないようだし、喧嘩をされていては埒が明かない。

 舌を出しながら鞄に入ったエンペラを背後に隠すようにしつつ、話を続けることにした。


「魔物のくせに生意気すぎる! 可愛いかと思ったけど、全然可愛くねぇぞ!」

「エンペラについては置いておいてくれ。もう帰るってことでいいだろ?」

「むむむ……。仕事をしなくてもいいなら帰る!」

「それは無理だろ。逃げたんだしな」

「じゃあ帰らない!」

「はぁー……。なら、俺はもう帰ってしまうぞ。このまま北の山に籠もったまま生きていくのか? まだ楽しい期間だと思うが、来月には気温が一気に下がってくるし、山の上での生活に飽きてきたら地獄だぞ」


 俺の畳み掛けにより、エイルは口をもぞもぞと動かし始めた。

 顔を合わせた時に嬉しそうにしていたことからも、もう既に飽き始めている可能性は高い。

 もう一押しすれば、折れるだろうな。


「それに紹介した通り、荷物持ちとなる従魔が仲間になった。荷物を大量に運べるようになったし、エイルとは近々また調達に行こうと考えていたんだが……北の山に籠もるならなしに──」

「帰る! 俺もちょうど帰ろうと思ってたところだった!」

「……絶対に嘘。本当に子供みたい」

「チビスケ、うるせぇぞ!」


 よし、あっさりと連れて帰る約束を取り付けることができた。

 後押しとして、一緒に調達に行く約束をしてしまったが、冒険者としては優秀だしいいだろう。


「そうか。それなら良かった。一緒にヨークウィッチに帰ろう」

「おう! 案内頼むぜ!」

「あ、その前に……一つやることをやらせてくれ」

「ん? やること?」


 ピンと来ていないエイルに説明することもせず、俺は魔物狩りを始めた。

 エイルは魔物狩りが“やること”だと勘違いしたようだけど、俺がやりたかったのはエンペラの能力を試すこと。


「エンペラ、討伐した魔物を収納してくれ」

「嫌だ。せめて剥ぎ取ったものにしてくれ」

「はぁ? 魔法なら別にいいだろうが!」

「うるさい、デカ女。お前の鞄に魔物の死体をねじ込むぞ」

「それをやったらぶん殴るからな!」


 めんどくさい指示ではあるが、まぁ鞄と同じ扱いと考えたら妥当なのか。

 ここは変に反論せず、せっせと剥ぎ取ってから空間魔法に収納してもらう。


 剥ぎ取ったこともあり、予想以上に収納できる量は多く、結局五十体ほどの魔物の素材を運んでもらった。

 エンペラ曰く、まだ余裕があるみたいだが、運ぶためだけの魔物を討伐するのが面倒くさくなったため、ここで断念。


 それから下山し、ヨークウィッチまで特に何の問題もなく運ぶことができた。

 予想以上に便利な魔法だったのは、俺としては嬉しい誤算。


「エンペラ、ありがとう。これから収納した素材を出してもらいたいんだが、指定したものを取り出すことはできるのか?」

「それは無理。最後に入れたものから順にならできるが、面倒くさいからドサッと出させてくれ」

「まぁ、さすがに応用は利かないか。分かった。ここに出してくれ」


 俺が指示を出すと、北の山で剥ぎ取った素材を出したエンペラ。

 素材が劣化していることもないし、これで空間魔法を鞄代わりに使えることが証明できた。


「よし、試したいことは試せた。エイル、この素材は持っていってもいいぞ」

「ん? いらねぇぞ!」

「冒険者ギルドでなら金貨数枚にはなるだろ。北の山に籠もってて何もなしじゃ、またマイケルと揉めるぞ。せめてものお土産は持っていった方がいい」

「おー……。それもそうだな!」


 体のいい理由を作り、エイルにいらないものを持っていってもらうことにも成功。

 エイルを連れて帰ることもでき、エンペラの能力も試すことができた。

 一石二鳥で、実りある時間を過ごせたと思う。



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コミカライズ版は内容もかなり違いますし、単純に漫画として完成度の高い作品となっています!

キクチ先生の画力が素晴らしく、小説版を読んだ方でも確実に面白いと自信を持って言える出来となっておりますので、どうか手に取って頂けると嬉しいです<(_ _)>ペコ

コミカライズ版も、何卒よろしくお願い致します<(_ _)>ペコ


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