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番外編『ジェイドの道具屋繁盛記』 その53


 魔物使いの言っていた丸薬も笛も、比較的簡単に手に入れることができた。

 笛に関しては特定の人にしか売らないという方針があったようだが、俺が『シャ・ノワール』で働いていることを伝えた瞬間、商人が即座に売ってくれた。


 王都にも『シャ・ノワール』の名前が轟いているのは嬉しいことだが、特別扱いを受けて買ってしまったことには、若干ながらモヤモヤしている。

 ……まぁ、返品する気はさらさらないんだが。


 入手経緯はどうあれ物は揃ったし、とりあえず旧聖地ドルミノに向かってみようと思う。

 王都からそれほど離れていないため、ドルミノに行って何もいなければ、飛竜か大型の鳥系の魔物に狙いを変更すればいいだけのこと。


 ここまで予想以上に順調なため、時間にはかなり余裕がある。

 時間がなければ王都で情報を集めてから精査するのがいいのだろうが、百聞は一見にしかずというからな。


 ドルミノにいるという魔物のサイズは分からないが、飛竜や大型の鳥系の魔物は目立つのが確定している。

 本当に存在するのか、存在したとして従魔にできるのかどうか等の不安はあるものの、俺はドルミノに向けて王都を出発したのだった。



 道中で聞いた情報を頼りに走ること約五時間。

 旧聖地ドルミノにやって来ることができた。


 石造りの立派な建造物がいくつも並んでおり、夕焼けに照らされて非常に綺麗だ。

 かなり昔に廃墟になったと聞いていたのだが、建造物に劣化は見られず、誰かいてもおかしくない雰囲気がある。


「とりあえず……少しだけ寝るか」


 例の魔物が動き出すのは夜中だという情報がある。

 実際に今は強い気配を感じられないし、完全に日が暮れるまでは時間があるため、今のうちに少し休んでおくことにした。

 慣れた手つきでテントを建て、寝袋に包まって就寝。


 寝始めてから三時間くらい経った頃だろうか。

 俺は唐突に現れた強い気配を感じ取り、飛び起きるように起床した。


 テントの中から外を覗いてみたが、外には強い気配を放つ存在の姿は確認できない。

 となると、石の建造物のどこかにいるわけであり、諸々の情報から考えると……時空間魔法を扱えるという魔物の可能性が極めて高い。


 マイケルの情報の正確さに感謝しつつ、俺は音を立てないように急いで身支度を整えた。

 ここからは時空間魔法を扱える凶悪な魔物との戦闘。


 それも、ただの戦闘ではなく、従えるための戦闘となる。

 この気配の強さからも只者ではないことは分かるし、久しぶりにスイッチを入れてから――俺はテントを出た。


 建造物が並んでいるせいで分かりづらいが、恐らく例の魔物がいるのは真ん中の一番大きな建物だ。

 些細な音を立てないように、そして気配も漏らさないようにして、石の建造物の中に侵入した。


 夕方は綺麗に映った建造物も、こうして近くまでやって来ると小さな劣化が見える。

 さらに真っ暗ということもあって、不気味すぎる空間となっていた。


 一つの大きな気配のせいで気づかなかったが、他にも魔物がかなり住み着いているらしく、至るところに徘徊している。

 アンデッド系の魔物なのも、より一層不気味さを際立たせているな。


 雑魚敵だろうが見つかりたくないため、慎重に慎重を重ねて強い気配を頼りに建物内を進んでいく。

 迷路のような通路を進み、たどり着いた石の建造物の最上階。


 大広間のようになっている部屋の真ん中には、小さなイカのような魔物が浮遊していた。

 気配からして、あれが時空間魔法を扱う凶悪な魔物で間違いないと思うが……想像していた姿とはあまりにもかけ離れており、気が緩みそうになる。


 見た目で判断するのは三流のやること。

 鋭く息を吐いて集中し直し、俺はゆっくりと大広間に足を踏み入れた。


 浮遊する魔物の動きだけに集中し、背後を取ることに全力を注ぐ。

 遮蔽物がない場所で信じられるのは己の技量のみ。


 空中を浮遊する魔物の背後を、音を立てずに取り続け、ついに間合いに入ることに成功。

 ここからは隠密モードから戦闘モードに瞬時に切り替える。


 殺してはいけないという縛りがあるため、今回は拳での戦い。

 俺は浮遊する魔物の背後から、後頭部を狙って思い切り拳を振り下ろした。


 不意を突いていなければ絶対に当たらないであろう大振りの一撃がクリーンヒット。

 受け身も取れず地面を転がった魔物に対し、俺はさらに追撃の一手をかける。


 大きく振り上げてから放った蹴りも直撃し、地面を転がっていた魔物は壁に激突。

 いつもなら剣や刀で音もなく仕留めているところを、今回は素手でボコボコにしているため、相手が小さな魔物なこともあってやりづらさを感じる。


 言い知れぬモヤモヤを覚えつつも攻撃の手を緩めることはせず、壁に叩きつけられた魔物にさらに追撃を加えようとした。

 ――はずだったのだが、金縛りにあったように体が急に動かなくなった。


 壁に叩きつけられて倒れていた魔物は浮遊し始め、ゆっくりとこちらを向いた。

 イカのような魔物だと思っていたが、正面にはちゃんと人間のような顔がある。


 子供のような幼い顔立ちで、胴体と手足もあることから、頭についているイカのようなものがなければ人にしか見えない。

 口の端から流れている血は青いため、人ではないことは確実なんだが……さらに戦いにくさが増したな。



本作のコミック第3巻が発売しております!!!

コミカライズ版は内容もかなり違いますし、単純に漫画として完成度の高い作品となっています!

キクチ先生の画力が素晴らしく、小説版を読んだ方でも確実に面白いと自信を持って言える出来となっておりますので、どうか手に取って頂けると嬉しいです<(_ _)>ペコ

コミカライズ版も、何卒よろしくお願い致します<(_ _)>ペコ


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