番外編『ジェイドの道具屋繁盛記』 その51
この二日間が過去一の売上だったこともあり、安価で購入できる品も必要だということが改めて確認できた。
ただ、安価なものを調達するということは、数で補わなければならないということ。
これまでの経験からして、入手難易度の高い高額商品の調達よりも、難易度の低いものを大量に調達する方が大変だということは分かっている。
まぁ、入手というよりはヨークウィッチまで持ち帰る作業が大変なんだが……色々な層に認知してもらうためには、避けては通れない道。
先週は大賑わいだったし、今週は臨時休業にして、大量の品を簡単に運べる方法を探してみてもいいかもしれない。
ただでさえ週二日営業なので、あまり休業はしたくないのだが、今後のことを考えると早いうちに態勢を整えた方がいい。
ということで、俺は店の扉の前に今週は臨時休業させて頂く旨の張り紙を出し、ビラでも臨時休業を告知した。
これでひとまず大丈夫だろう。
後は、大量の品を運ぶ手段を考える。
パッと思いついたのは、高性能な荷台。
今使っているのは、板に紐を括り付けただけの簡易的なもの。
これがちゃんとした荷台になるだけで、かなり負担は軽減されるはず。
ただ、臨時休業したからには、もう一押しほしいところ。
伝説級のアイテムではあるが、『アイテムボックス』なる、時空にアイテムを収納できる品の話を聞いたことがある。
他にも、二つのアイテムボックスが時空間で繋がっている『スペースボックス』。
重力魔法を応用して作られた『グラビティリュック』などが収納アイテムとして有名だ。
アイテムボックスに関しては噂でしか聞いたことがないし、スペースボックスもグラビティリュックも市場には出回っていない。
金を持っている商人の間では重宝されることもあって、まず売りに出されることがないからな。
腕を組みながら、どうするのがベストか悩んでみたが、これといった良いアイデアは出てこない。
こういう時は……知識のある副ギルド長のマイケルに聞くのがベスト。
そう結論を出した俺は、すぐに冒険者ギルドへ向かった。
副ギルド長室に入ると、マイケルが山のように積まれた書類の奥で、生気のない目をしながら仕事をしているのが見えた。
間違いなくエイルの仕事を肩代わりしていて、声をかけるのが申し訳なくなる。
……まぁ、それでも声はかけるんだが。
「マイケル、ちょっといいか?」
「……あれ? 誰かと思えば君か。ギルド長ならいないよ。膨大な仕事を前に逃げ出したからね」
「また逃げたのか。エイルらしいな」
「本当に溜めるだけ溜めてから逃げるんですからね。やってられませんよ」
ブツブツと文句を言いながらも、作業の手は一切止まっていない。
プロの成す技に感心しつつ、俺は本題に入ることにした。
「今日はエイルに用があったわけじゃない。マイケルに聞きたいんだが、大量のアイテムを楽に運ぶ方法を知っているか? アイテムボックスやスペースボックスの目撃情報があるなら教えてほしい」
「アイテムを大量に運ぶ方法かね? 残念だが、アイテムボックスもスペースボックスも目撃情報は一切入っていないよ」
やはり出回らない品なのか。
これは手に入れるのは難しいかもしれないな。
「情報すらないのか。これは厳しそ――」
「ただ、大量のアイテムを楽に運ぶ方法なら知っているよ」
「本当か? ぜひ教えてくれ」
「構わないが、条件としてギルド長を連れてきてもらえないかね? 私一人ではどうやっても終わらないのだよ」
「マイケルがその条件を出してくるのか? 俺はいろいろ貸しを作ってきたはずだが」
「うぐっ。……じょ、冗談に決まっているじゃないか。アイテムの運搬には魔物を使うといい。従魔にするのは大変だが、君の力ならできないことはないだろう?」
なるほど……従魔か。
魔物を仲間にするという発想はなかった。
「確かに、従魔にするのが一番可能性が高いかもしれない。ちなみに、アイテムを運ばせるのに適した魔物は知っているか?」
「大型の鳥系の魔物か飛竜がいいとして、旧聖地ドルミノの地下に、時空間魔法を扱える魔物がいると聞いたことがあるね。その魔物が凶悪で強すぎるせいでドルミノには近づけないらしいが、従魔にできたらそれこそアイテムボックス代わりになるはずだよ」
鳥系の魔物か飛竜。
それと、旧聖地という場所にいる凶悪な魔物か。
狙ってみるのもアリだが、まずは従魔にする方法を調べなくてはいけない。
そうなると、危険地帯にいる凶悪な魔物を従魔にできるのかという問題が出てくる。
……マイケルが知っていたりはしないだろうか。
「従魔にしてみたいと思う。ちなみにだが、従魔にする方法は知っているか?」
「すまないが、私も知らないね。魔物使い自体がビオダスダールには存在しないからね。王都に行けば魔物使いがいると思うから、その人に聞いてみるのが手っ取り早いだろう」
「この街にすらいないのか。……分かった。王都に行ってみることにする。貴重な情報をありがとう」
「いやいや。君には世話になっているからね。どこかでギルド長に会ったら、冒険者ギルドに戻るよう伝えておいてくれたらありがたい」
「ああ。もし会ったら伝えておく」
俺はマイケルに礼を告げ、副ギルド長室を後にした。
まずは王都に行き、従魔にする方法を調べるところからだ。
色々と大変そうだが、この大変さを加味しても、アイテムボックスやスペースボックスを入手するより、魔物を従魔にする方が現実的だろう。
すぐに身支度を整えて、王都へ向けて出発するとしようか。
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