番外編『ジェイドの道具屋繁盛記』 その48
それからしばらくの間、クズ鉱石しかない場所を進み続けた。
ただ、確実に魔物の気配はあり、鉱山の奥に進むにつれてその気配の数が増えていっている。
俺の周囲を探っているようでもあり、地中や壁の中を進みながらついてきているのが分かる。
攻撃するならしてほしいが、ついてくるだけで姿を見せる様子がないのが鬱陶しい。
進むにつれてついてくる数も増えており、鬱陶しいので俺の方から攻撃を仕掛けたいところだが、地中にいるというのが厄介極まりない。
下手に攻撃して鉱山が崩れてしまったら、そこで終わりだ。
そこまで脆くはないと思うが、これだけオーアモールがいるということは、穴だらけの可能性は高いからな。
ここはひとまず様子見をし、白銀鉱石探しを優先した方がいい。
数が増えていくオーアモールは無視し、鉱山を進んで白銀鉱石探しを続けていると、ようやく銀鉱石の鉱脈がちらほらと見受けられる場所までやってきた。
目当ての白銀鉱石ではないが、ここの銀鉱石は質が高いため、しっかりと採掘しておきたい。
俺は立ち止まり、ピッケルで銀鉱脈を掘っていく。
一度鉱脈を見つけてからは順調に採掘することができ、あっという間に銀鉱石で鞄はいっぱいになった。
一度ベースキャンプに戻ろうと思ったそのタイミングで……ここまで様子見していたオーアモールたちが一斉に姿を現した。
どうやら俺が採掘を終えるのを待っていたようで、最初から横取りするつもりでついてきていたらしい。
「数は二十匹弱か。いい個体はいなさそうだな」
白銀鉱石を食べて強くなったオーアモールの素材なら欲しいのだが、地中から現れたオーアモールはどれも微妙な個体ばかり。
痩せ細っているものが多く、くちばしや爪も硬度が低そうなところを見ると、銀鉱石を砕けない個体の集まりなのだろう。
この鉱山にはクズ鉱石と銀鉱石と白銀鉱石しかなく、中間に位置する銅鉱石がないせいで、クズ鉱石しか食べられない個体が生まれてしまう。
そういった個体は、こうして他の生物が銀鉱石を掘ったところを襲い、銀鉱石を横取りするしか生きる道がないということだ。
「売り物にもならなそうだし、無駄な殺生は嫌いなんだが……襲ってくるなら、俺も抵抗しなくちゃいけない」
一応忠告はしてみたが、言葉の分からないオーアモールに伝わるはずもなく、二十匹弱のオーアモールは一斉に襲いかかってきた。
こうなったら、倒すしか道はない。
俺はオーアモールの攻撃が届く前に、的確に急所を狙って仕留めていく。
連携のれの字もなかったことから、数に対しての対処は非常に楽だった。
一度の攻撃を受けることもなく、無事にすべてのオーアモールの殲滅に成功した。
まだ地中に気配はあるが、全滅した仲間を見て、襲うのをやめた様子。
俺はオーアモールの死体を焼き払ってから、ベースキャンプに戻った。
それから銀鉱石を採掘してはベースキャンプに運ぶ、という作業を繰り返し、かなりの量の銀鉱石を集めることができた。
オーアモールも最初の襲撃以降は襲ってこず、気配はあるものの無視され続けている。
快適に採掘は行えているが、未だに白銀鉱石は見つけられていない。
銀鉱石の質の高さからすれば、白銀鉱石があってもおかしくはないのだが、もっと奥地に行かないと見つからないのかもしれない。
銀鉱石はもう十分すぎるほど採掘したし、ここからは白銀鉱石探しにシフトするか。
銀鉱石を見つけてもスルーすることにし、俺は再び鉱山へと赴いた。
銀鉱石の鉱脈があるエリアからさらに奥へと進み、鉱山の奥地へと足を踏み入れていく。
徐々に気温が下がっていき、見つかる銀鉱石の鉱脈も増えてきた。
やはり奥へ行けば行くほど鉱脈の数は多く、大半の冒険者は銀鉱石の鉱脈を掘った段階でオーアモールの集団に襲われ、命を落としていくのだろう。
そんなことを考えながら、俺は暗い鉱山の中を進んでいくと、少し先に魔物の気配を感じ取った。
先ほどまでのオーアモールよりも気配が明らかに強く、おそらくこの先には、最初に倒した個体が食べていた銀鉱石で強くなったオーアモールがいる。
警戒しながら進んでいくと、オーアモールの集団が見えてきた。
数は十体ほどだが、すべてのオーアモールが地上に出ている。
その集団の奥に、一際大きな個体がいるのが見えた。
体の大きさはさることながら、くちばしと爪が明らかに他の個体とは異なっている。
立ち位置を見てもボスであることは間違いなさそうだが、もしかすると白銀鉱石を食べている個体の可能性も高い。
こちらには気づいていないようだし、このまま戦闘を避けることもできるが、ボス以外のオーアモールの素材も欲しい。
そうと決まれば、オーアモール狩りといこうか。
先ほどの個体たちとはレベルが違うだろうから、不意を突いて混乱を誘い、その混乱に乗じて一気に片をつけよう。
俺はこれからのプランを考えながら、忍び足でオーアモールの群れに近づいたのだった。
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