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番外編『ジェイドの道具屋繁盛記』 その40


 さて、どう言いくるめようか。

 クズであれば、弱点は必ず存在するだろうし、そこを突きたいところ。


「さすがにその額は払えない。俺が情報料として支払えるのは、せいぜい金貨一枚までだな」

「はぁ? 全然足りないな。最低でも白金貨一枚じゃないと話せない」

「随分と強気だな。まず、正当な勝負での負債額だろ? セルジが悪いような言い方をしているが、勝負に乗らなければこんなことにはなっていないはずだ。それに、白金貨一枚と金貨一枚の賭けってことは、違法なギャンブルをしたんじゃないか? そうなってくると、兵士として認められているのかが気になるな」

「い、違法なのかもしれないが、それもセルジに誘われたからやっただけだ! 俺は何も悪くない!」

「なるほど。その言い訳が上司に通用するのかは気になるところだな。あと、もう一つ挙げるとするなら……そもそも、ジェットしか知らない情報って本当にあるのか? セルジの知り合いだから訪ねてきたが、俺としては別に他の兵士に聞いてもいい。金貨一枚を支払えば、面識がなくとも喜んで教えてくれるだろうしな」

「……ぐ、ぐぬぬ!」


 畳みかけるようにそう伝えたところ、ジェットの表情は一気に曇り始めた。

 これは楽に情報をもらうことができそうだな。


「そういうことだから、破格の値段を要求するなら他の兵士に頼む」

「……俺が一番知っている! 金になると思って調べていたからな! 他の兵士じゃ知らない情報があるんだ!」

「そうなのか。でも、売る相手がいなければ意味のない行為で終わる。現にまだ売れていないんだろ?」


 白金貨一枚を要求してきたことも含め、情報が売れていたら、こんなにガメついていないはず。

 他の冒険者も兵士から情報を収集しようとはしているだろうが、ジェットは兵士にしては怪しげな風貌だし、知り合いでなければ、わざわざ彼に尋ねるとは思えない。


「……分かった。そこまで言うのなら、金貨二枚にまけてやる! これで満足か!」

「満足なわけないだろ。金貨一枚以上は払うつもりがない。というか、もしこれ以上ゴネるなら、今すぐにでも他の兵士のところに行く」

「――ちょ、ちょっと待った! ……くそ! 分かったよ。金貨一枚でいいから買ってくれ!」

「買ってくれ? 一応、俺たちは客だろ?」

「か、買ってください……。お願いします……」


 ジェットはしょんぼりした顔で頭を下げてきた。

 ここまで簡単に言いくるめられるとは思っていなかったが、無事に金貨一枚で情報を買うことができそうだ。


「やっぱりジェイドさんは恐ろしいですね! 敵に回しちゃいけない人です!」

「強さでつい忘れてしまうけど、ジェイドは商人だからな。口喧嘩も強いってことだろ」

「無敵じゃないですか! 僕、ジェイドさんに弟子入りしようかな?」

「やめておけ。アルフィじゃ一日も持たない」


 ジェットを言いくるめた裏で、アルフィとセルジがそんな会話をしている。

 どちらかといえば、俺の口が達者だったというより、ジェットにボロがありすぎただけなんだけどな。


「これが情報料の金貨一枚だ。早速、本題に入らせてもらうが、ブルーザーの街で大盗賊が死んだって話は本当なのか?」

「まいどあり。……ああ、つい一ヶ月前のことだ。冒険者ギルドのある通りにある宿で、大盗賊と思われる死体が見つかった。すぐに宿は封鎖されて、帝都から調査員が何人も派遣されて調査が行われたから、間違いない」

「本当に大盗賊はいたんですね! てっきり嘘だと思ってました!」

「おい、ジェット。その大盗賊のお宝は調査員に持っていかれたのか?」

「いいや。血眼になって探していたが、見つかったのは懐に入っていた袋の中の銀貨五枚だけ。一週間ほど付近を探していたが、結局何も見つけられずに帰っていったよ」


 ジェットが信用できる人物かはまだ掴みかねているが、セルジと同タイプなら、取引で嘘をつくとは思えない。

 そうなると、大盗賊の死体は本当に見つかっており、帝都から派遣された調査員は何も発見できなかった、ということになる。


 ブルーザーの街に来るまでは偽物の可能性の方が高いと思っていたけど、この街の状況やジェットの話から、本当である可能性が高まってきた。

 大盗賊はいたが、その秘宝は存在しない、というパターンもあるかもしれない。だが、これは本気で捜索する価値がある事案だ。


「その話がすべて本当なら、まだ近くに秘宝がある可能性が高いな。アルフィ、セルジ、俺たちが一番最初に見つけ出そう」

「うぅー! なんかワクワクしてきました! やっぱりジェイドさんといると、いろいろなことを体験できて面白いです!」

「確かにな。ジェイドと別れてからの数ヶ月間より、再会してからの一日の方が圧倒的に濃い」

「そう言ってくれるのは嬉しいが、それはさすがに二ヶ月間が薄すぎるだろ」

「本当に薄かったんですもん! というか、大盗賊の秘宝探しなんてイベント、普通はやってこないですよ!」


 二人の時間が薄いと思ったが、確かに普通に生活していたらそんなものか。

 現時点でも楽しいことには変わりないが、せっかくなら秘宝を見つけて、久々の再会を最高の思い出にしたい。

 二人の話を聞いて、俺は素直にそう思ったのだった。



本作のコミック第3巻が、7月10日に発売します!!!

コミカライズ版は内容もかなり違いますし、単純に漫画として完成度の高い作品となっています!

キクチ先生の画力が素晴らしく、小説版を読んだ方でも確実に面白いと自信を持って言える出来となっておりますので、どうか手に取って頂けると嬉しいです<(_ _)>ペコ

コミカライズ版も、何卒よろしくお願い致します<(_ _)>ペコ


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