番外編『ジェイドの道具屋繁盛記』 その38
少なからず、二人が道具屋に興味を持ってくれたのは嬉しい。
今回は情報提供くらいしか協力してもらうことはないが、いずれは一緒に調達にも行きたいからな。
「面白いことには面白いぞ。まぁハイリスク過ぎて、人には勧められない営業スタイルだけどな」
「ジェイドじゃなきゃ成立しないだろうな。普通の人間が真似したら、すぐに回らなくなって潰れるのがオチだ」
「面白そうですけど、僕には無理ですね……! よくよく考えたら休みも取れなさそうですし、かなりしんどいかもしれません!」
「調達が早く済めば休みも取れるが、なかなか大変ではあるな」
スケジュールがハードだし、サボり癖のあるアルフィには難しい内容。
まぁ趣味程度にやる分にはいいとは思うけども。
「そんな大変な中、こうして遊びに来てくれたんですね! もしかして……調達のついでに来てくれた感じですか?」
「察しがいいな。実は、ブルーザーの街の近辺に大盗賊の秘宝があるという話を聞いて、ブルーザーへ向かう前にエアトックにやってきたんだ」
「あっ、その話は僕も聞きました! 大盗賊の死体がブルーザーの街で見つかったんですよね!」
「死体が見つかったから、近くに秘宝があるんじゃないかっていう信憑性の薄い話だったはずだが、ジェイドが来たってことは本当なのか?」
アルフィとセルジなら、詳しい情報を持っているかもと思って来たんだが、そんなに信憑性のない話だったのか?
スミーは確実にあるというテンションだったし、話の内容もただの噂ではないと思っていたんだが……これは一気に怪しくなってきた。
「フロンの街の道具屋の店主から聞いた話だから、俺はてっきり現実的な話だと思っていた。近場に住む二人からしたら、結構あり得ない寄りの噂なのか?」
「僕は嘘っぽいなぁとは思ってましたね! 大盗賊の死体というのも信じがたいですし、そもそも自分が盗賊だったとして、盗んだものを使わずに死ぬってあり得ないじゃないですか!」
「俺もアルフィと似た意見だな。大前提として、死体が大盗賊である可能性自体が薄い。仮に大盗賊だったとしても、見つかった死体は高齢者だったようだから、秘宝なんか残されていないって説が有力だと思ってる」
……これは胡散臭くなってきたな。
二人の意見の方が理に適っているし、秘宝が存在しない可能性が今のところ九割。
大盗賊の秘宝を諦め、別のものを調達することに切り替えるか、このまま大盗賊の秘宝を狙うか。
決断に迷うが、ここまで来たのならブルーザーの街には行きたい。
「話を聞いたら、秘宝はないんじゃないかと思ってきた。……ただ、実際にブルーザーの街に行かないと諦めきれない」
「ここまで来たのなら、そりゃ確かめるしかないよな。可能性が限りなく低いってだけで、秘宝が存在するかもしれないし」
「ジェイドさんの大ピンチってことですかね? なら……僕が一肌脱ぎますよ! 休みをもらって、僕もブルーザーの街に行きます!」
「手伝ってくれるなら嬉しいが、あの兵士長が許可してくれるのか? 正直、休ませてくれるとは思えない」
普段からサボりまくっているだろうし、休暇をもらえるとは思えない。
俺が兵士長の立場なら、二人には絶対に休暇を与えないしな。
「そこは大丈夫です! 散々助けてもらったジェイドさんのピンチですから! さすがの兵士長も手伝ってこいと送り出してくれます!」
「俺もジェイドと同じ考えで、休暇をくれるとは思えないが、まぁ休暇がもらえなくても俺も手伝うぜ」
「そんなことして大丈夫なのか? クビもあり得るだろ」
「そうなったらそうなった時に考えましょう! 僕たちは義理を大事にしますので! ということで、早速兵士長のところに行って直談判です!」
そう言うと、ルンルン気分で詰所を出たアルフィ。
この様子を見る限りでは、俺のためというか、楽しそうだからついてくるといった感じにしか思えない。
理由がなんであれ、協力してくれるのは嬉しいが……。
兵士長のことを考えると、俺が申し訳ない気持ちになってくるな。
「ブルーザーの街に行くから休暇をくれ? 絶対駄目だ……と言いたいところだが、俺が出す条件を呑むなら構わねぇよ」
「えっ! いいんですか!? その条件ってなんですか?」
「戻ってきたら、二週間の間、外の見回りを行ってもらう」
「外の見回り……。ダルいっちゃダルいが、それぐらいならまぁいいか」
「外の見回りだけでいいんですね! 了解しました! じゃあブルーザーの街に行ってきますね!」
絶対に反対されるかと思っていたけど、予想以上にすんなりと許可してくれた。
もちろん条件付きではあったが。
「良かったのか? こんなにあっさりと許可してくれて」
「ああ! ジェイドには世話になったし、こっちも条件をつけたからな! それに、このバカ二人はいてもいなくても大して変わらん」
「なるほど。それは納得せざるを得ない理由だな」
辛辣すぎる理由ではあるが、本当にいてもいなくても大して変わらないんだと思う。
実力は折り紙付きだが、いかんせんサボり癖がひどすぎるからな。
何はともあれ、二人の同行が認められたわけで、俺としてはありがたい。
兵士長に同情はしつつも、気兼ねなくブルーザーの街に向かうとしよう。
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