番外編『ジェイドの道具屋繁盛記』 その32
全ての道を潰すように移動していったこともあり、様々なアイテムを回収することができた。
見るからに遺品だったのは最初のみで、他は遺品ではないことにして回収している。
「大分進んできましたよね? この竜穴ってどれくらい先まで続いているんでしょうか?」
「奥までは行ったことがないから俺も分からない。ただ、半分くらいは来ていると思うぞ」
「えっ!? これだけ進んだのにまだ半分なんですか?」
「色々な分かれ道を進んできたからな。行き止まりも多かったし、感覚よりも実際には進めていない」
俺もかなり進んだ感覚はあるが、何度も来た道を戻っては新たなルートを進んでいたからな。
竜穴が広い洞穴というのもあるが、一本道じゃないからこそ思ったほど進むことができていない。
「狭くて暗くて息苦しくて……思っている以上に洞穴探索って大変なんですね。強い魔物に気をつけていれば大丈夫とばかり思っていました。」
「まぁここまでの洞穴は早々ないけどな。ダンジョンは意外と洞穴感ないし」
「僕も楽観的に考えていました! ジェイドさんがいなければ途中で力尽きていましたもん!」
「それで、ここからはどうする? 魔物はどんどん強くなってくるし、一度外に出て休憩するというのも手だぞ」
俺が見る限りでは、二人の体力は限界に近いように思う。
戦闘の半分を請け負うようになってからは、少し余裕が出てきたようにも見えるが……一度態勢を立て直すのも一つの手。
「ジェイドさんが前を進んでくれているので、僕はもう少しだけ進めますよ! 引き返す時間がもったいないですしね!」
「テイトは道を憶えているだろ? だったら引き返したとしても、そこまで無駄にはならないと思うぞ」
「覚えていますが、私も先に進みたいです。大変な経験をできるというのは貴重ですからね」
「二人がそう言うのであれば進もう。ここからは更に気を引き締めてくれ」
ここまではアイテム回収をメインで一つ一つ道を潰すように動いていたが、ここからは最奥に最速で進むために移動するとしよう。
強い魔物の気配を感知しつつ、そのルートを的確に選びながら洞穴を進んでいく。
半分くらいという目安も正しかったようで、この辺りから魔物のレベルが一段階上がった。
ブルーバングルやイエローデビルといった危険な魔物も現れたし、ここからはトレバーとテイトのみでは単純な実力でも難しい相手が続いている。
「うわっ! 魔法を使いながら突っ込んできましたああああ!」
「トレバー、落ち着け。魔法は初級魔法。冷静に対処すれば大丈夫だ」
「ジェイドさん。私の方の魔物も、つ、強いです……!」
トレバーの方に目がいっていたが、テイトの方もかなり危険な状態。
二体のブルーバングルに連続で攻撃をされており、ギリギリで凌いでいるといった状態。
できるところまで二人の実力を試させてあげたかったが、これ以上は命に関わってしまう。
場所が場所だけに怪我を負うのも好ましくないため、俺は少し早いと思ったが、襲ってきた魔物の処理を行うことにした。
まずはテイトを襲っている二体のブルーバングルを斬り裂いて仕留める。
それからすぐに、トレバーを襲っていたイエローデビルを魔法で凍らせた。
「はぁー……た、助かりました! ジェイドさん、ありがとうございます!」
「ありがとうございました。……一気に魔物が強くなって驚きました」
「今の二種類の魔物は、流石に対応が難しい相手だからな。ここからは俺が戦闘を全て請け負う。二人は気になるものやアイテム探しに注力してくれ」
「……はい」
テイトは悔しそうに歯噛みしており、戦えないことへの悔しさが伝わってくる。
単純な魔物の強さにやられたのではなく、慣れない洞窟での戦いや、ここまでの疲労が影響していたと思うが……。
今のテイトに伝えても慰めにならないだろう。
ここは手本となるような戦い方を見せ、背中で語ることしか俺にはできない。
戦闘を全て俺がこなすようになってから、進む速度はグッと上がった。
フィジカルでごり押すような戦い方ではなく、技術や観察眼を活かした戦い方で敵を殲滅していく。
少しでも手本になるように、実戦形式で魔物との戦い方をレクチャーする。
レクチャーといっても直接教えている訳ではないため、トレバーやテイトが学んでくれていることを期待しているだけだが。
そんなこんなハイペースで攻略を行っていったことで、竜穴の最奥部が見えてきた。
ここまで狭い道が続いていたのだが、最奥部は拓けているのが分かる。
「ジェイドさん! あそこが最奥部ですか?」
「ああ。その可能性が高い」
トレバーとテイトには待機してもらい、まずは俺一人で最奥部に向かう。
大きく拓けた空間には相当数の魔物がおり、リラックスしてあるようにも見受けられる。
その理由は、この最奥部に魔力が充満していることであり、最奥部の空間の奥に十メートル規模の骸骨が転がっているのが見えた。
ここに魔力が充満している理由はあの骸骨が原因であり、あの骸骨は十中八九ドラゴンのもの。
せっかく最奥にやってきたのであれば、あの骸骨の一部を持ち帰りたい。
不気味なものだし、売れるかどうかは分からないけどな。
ただ、その前に……この空間にいる魔物を全て倒すのが先決。
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コミカライズ版は内容もかなり違いますし、単純に漫画として完成度の高い作品となっています!
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