番外編『ジェイドの道具屋繁盛記』 その31
トレバーとテイトは、まず洞窟に慣れることに重きを置いたようで、ここ数戦は動きを確かめるように戦っていた。
そして、狭くて息苦しい洞窟にも慣れたようで、二人は再びコンビネーション攻撃を解禁して魔物との戦闘を行い始めた。
「トレバー、スイッチ」
「了解! いっくぞー! うりゃ!」
息の合ったコンビネーション攻撃が繰り広げられ、目まぐるしく前後衛を入れ替える二人の動きに魔物たちはついていけていない。
スムーズに移動できるようになれば、竜穴の魔物はトレバーとテイトの敵ではなさそうだ。
俺がサポートを行ったのは最初の数戦だけであり、そこからはトレバーとテイトだけで魔物を楽々と倒していった。
ただ、この竜穴には長いこと人が足を踏み入れていなかったようで、魔物の数が尋常ではない。
楽々と倒したといっても、連戦に次ぐ連戦では流石に疲労が溜まってしまったようで、二人からは汗が噴き出ている。
慣れたと思った息苦しさも、疲労に直結しているようだ。
「この環境に順応したと思ったんですけど、凄く疲れます!」
「単純に魔物がひっきりなしに現れるのが辛いですね。どれだけの魔物が棲みついてるんでしょうか?」
「正直、俺が思っている以上に魔物の巣窟になっていた。とりあえず、ここからしばらくは俺が戦う。テイトとトレバーは後ろで少し休んでいてくれ」
「グレアムさん、すみません! 少しの間、よろしくお願いします!」
ここからは二人に代わり、俺が戦闘を行うことにした。
俺は息切れすることはないが、なるべく体力を使わないのが望ましい。
且つ、スピーディに倒していきたいため、急所を一点狙いで短剣を振っていく。
魔物の急所は分かりにくいのが厄介なのだが、後ろで散々戦っているところを見せてもらったからな。
緩急を使いながら揺さぶりつつ、一撃一殺で魔物を仕留めていく。
「うひゃー! やっぱりグレアムさんは凄いですね! 僕たちがあれだけ苦戦した魔物を楽々と倒していってますよ!」
「少しは近づけたと思っていましたが、戦いを見せてしまうとまだまだだと思わされますね」
二人の誉め言葉を聞き、更に調子を良くした俺は、倒す速度を上げてドンドンと竜穴を進んでいった。
戦闘を代わってからは変わり映えのなかった一本道だったが、急に別れ道が出現。
しかも、三つに分かれており、この分岐点は非常に大事。
どこかのルートには、きっとお宝が眠っているはずだからな。
「道が三つに分かれていますね! グレアムさん、どの道を進んでいくんですか?」
「まずは左の道から進んでいこう。寄り道をしなかったこともあって時間もあるし、奥で繋がっていなければ全ての道を進みたいと思っている」
「なら、進んだ道を憶えておいた方がよさそうですね。左の道からまた分岐するかもしれませんし」
「基本的には左の道から潰していくつもりだから、覚えなくても大丈夫だとは思うが、覚えられるなら覚えておいてくれたら助かる」
「分かりました。記憶力には自信がありますので、覚えておきますね」
そんなやり取りを交わしつつ、俺達は左の道から進んでいった。
左の道は進んでいくごとに狭くなっており、十分ほど進んだ段階で行き止まり。
ただ、行き止まりになっている場所で、高価そうな武器と防具、それから色々な物が入っていそうな大きな鞄が落ちていた。
ダンジョンの宝箱のようなものだったら良かったのだが、これらのアイテムはこの行き止まりで死んだ冒険者たちの遺品。
近くに複数の骸骨が転がっていることからも、遺品である事実を物語っている。
「アイテムが落ちていてラッキーかと思いましたが、これってここで死んだ人たちのものですよね!?」
「そうだろな。逃げ道がなくて、ここで殺された者が結構いたのが分かる」
「グレアムさん、このアイテムはどうするんですか? その場に放置が適切でしょうか?」
「ここに置いておいても腐らせるだけだが、遺品となると拾いづらいよな。とりあえず持ち帰って、冒険者ギルドに委ねよう」
「分かりました! 荷物は僕が持ちます!」
装備品は荷物になってしまうため、大きな鞄だけ拾って、来た道を引き返すことにした。
正直、遺品も全て自分たちのものにできれば、商品として並べることができるのだが……それは元暗殺者といえど良心が痛む。
それに、お客さんも遺品を買いたいとは思わないだろうしな。
荷物の中に身分が分かるものがあるかもしれないし、冒険者ギルドに委ねるのがベストなはず。
ただ、あからさまな遺品以外は拾って、自分たちのものにしていくつもり。
遺品か遺品じゃないかの区別は、近くに死体、又は骨があるかどうかでしか判別つけられないからな。
一発目であからさまな遺品に当たってしまったのは不運だったけど、遺品かどうかは俺の判断でアイテムの回収はしていく。
それが仮に遺品だったとしても、この竜穴で腐らせておくよりかはきっと良いはず。
そう思うことにし、俺たちは古の竜穴の攻略を再開したのだった。
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