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番外編『ジェイドの道具屋繁盛記』 その7


 ごろごろどりを食べた後は、テントを張った位置から釣りをすることにした。

 水面までかなりの距離があるため、引き上げるのが大変ではあるのだが……待っている間は特にやることがないしな。


 フライレイクファルコンがいつ来るか分からないため、寝ることもできないのが少し辛い。

 流石にどこかのタイミングで仮眠を取る予定だが、それ以外の時間はトレーニングか釣りをして時間を潰す。


 大雑把なこれからの動きについてを考えながら、俺は自作の釣り竿を取り出し、糸を最大限まで伸ばしてグラッグ海に投げ入れる。

 餌として使うのは手元にあったごろごろどりの骨であり、食いつくか心配ではあったのだが……着水した瞬間に食いついた。


 即座に合わせて、力の限り勢いよく引き上げる。

 勢いが強すぎたのか、空中に投げ出される形で針が外れてしまったが、陸地まで上げることができれば問題ない。


 宙を舞いながら陸地に上がった魔物を即捕獲し観察してみるが、さっき俺に噛みついてきた魔物とほぼ同じような魔物。

 色合いとか形とかが若干違うことから、別種ではあると思うのだが……体がボロボロなのとブサイクな容姿のせいで同じに見えてしまう。


 もしかしたら美味しい可能性もあるため食べてみてもいいが、今はごろごろどりを食べたばかりだしリリースだな。

 陸地で跳ねながらも、俺に噛みつこうとしてくる魚の魔物にトドメを刺してから、先ほどと同じようにグラッグ海に投げ捨てる。


 そこから何度か同じように釣りをしたのだが、釣れるのは似たような魔物ばかりで狙いの獲物はかかる気配がない。

 釣りをしながらなんとなく推察してみたのだが、弱い魔物は餌を求めて水面付近を泳いでいて、強い魔物は餌に困らないことから水深の深い場所にいる可能性がある。


 グラッグ海にいる美味しいとされる魔物を獲るには、やはり素潜りをしないと難しそうだな。

 ただ、変わらずこの湖の中に入るのは気が引けるため、もう少し様子見をするとしよう。

 俺はフライレイクファルコンが姿を見せてくれることを願いつつ、似たような魔物しか釣れない釣りを止めてトレーニングを開始したのだった。



 何の動きもないまま時間だけが過ぎていき、あっという間に丸一日が経過した。

 魔物を狩るだけなら楽だと思っていたのだが、この場所から動けない上に寝れないことを考慮すると、朔月花の時よりも辛いかもしれない。


 何よりも辛いのは、本当に現れるのかどうかが定かではなく、このまま待ち続けて何も来なかったらどうしようという不安の気持ちが時間経過と共に募っていくこと。

 俺はそんな不安な気持ちを紛らわすため、ひたすらに筋力トレーニングを行っていたのだが――急にこの場所に流れていた空気が変わったような気がした。


 グラッグ海に変化があったとか、強い気配を持ったものが現れたとか分かりやすいことが起きた訳ではないのだが、何となく何かが起こりそうな気がする変な感覚。

 俺はトレーニングを止め、いつ何が起こってもいいように身構えること……数十分。


 数十分間何も起きることがなく、ただの勘違いだったのではと思い始めたタイミングで、シンプフォレストの方から強い気配が近づいてくるのが分かった。

 位置、そして速度から考えて、空を飛んでいるのは間違いない。


「……フライレイクファルコンが現れたか?」


 そう呟きながら空を見つめていると、俺が気配を察知してから僅か数分足らずで巨大な鳥の魔物が姿を現した。

 速度が尋常ではなく、巨体なのに目で追うのが大変なほどのスピード。


 見ようによってはドラゴン種に見えるほどのフォルムであり、その巨体は燃えるような真っ赤な羽毛に覆われ、鋭いくちばしに鋭い爪に鋭い眼光。

 グラッグ海の中心部で旋回しながら翼を広げた姿は、思わず見惚れてしまうほどの格好良さ。

 

 事前の情報から考えても間違いなくフライレイクファルコンであり、姿を現してくれたのは嬉しいが、どう討伐すればいいのか全く想像できていない。

 思考が纏まっていない間に、フライレイクファルコンは真下に滑空し始め、そのままグラッグ海へと飛び込んでいった。


 グラッグ海の中心部には大きな水飛沫が上がり、俺がテントを建てた場所にまで波が届きそうなほどの大きな衝撃。

 呆気に取られながらも、フライレイクファルコンの動向を伺っているのだが……一向に水面へ上がってこない。


 あれだけ大きく波打っていたのも落ち着き始め、海の中の魔物にやられてしまったのかとも思った次の瞬間。

 鋭い爪でガッシリと獲物を掴んだフライレイクファルコンが、勢い良く水面から飛び出てきた。


 捕まっている魔物も非常に巨大で、真っ青なタコのような魔物。

 ある程度予想はしていたが、俺の想像を遥かに超える規格外の動きに――つい笑みが溢れてしまう。


 目玉商品になるとか関係なく、フライレイクファルコンと戦ってみたい。

 仕事ではあるが、仕事とは関係なく動くことができる今の立ち位置が本当に楽で楽しいな。


 クロから解放されたことを実感すると共に、俺にそういった場を作ってくれたレスリーに感謝しつつ――。

 俺は恐らくグラッグ海の主、アルデンギウスを捉えながら大空を飛行しているフライレイクファルコンをとにかく全力で追うことに決めた。


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