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番外編『ジェイドの道具屋繁盛記』 その5


 本気で飛ばしたこともあり、ヨークウィッチを出発して約五時間ほどでシンプフォレストに辿り着いた。

 この森を抜ければグラッグ海であり、目的地まではあと僅か。


 とりあえず策敵しながらグラッグ海を目指しつつ、シンプフォレストで美味いとされている魔物を狩ることにしよう。

 フライレイクファルコンを狩ることができれば、他の魔物を持ち帰る予定はないのだが、狩れなかった時のことを考えて事前に調べておく。


 今回は一切食糧を持ってきていないため、フライレイクファルコンを待っている間の食事は全て試食に費やす。

 もし本気で美味しいと思えた魔物に関しては、フライレイクファルコンを狩ることができても持ち帰ってよさそうだ。


 そんなことを考えつつ、俺は注意深く策敵していると……早速、右前方向から気になる魔物の気配を感じ取った。

 気配的には非常に弱いものだが、とにかく超速で動き回っている。


 木から木へと飛び移っているような感じからも、事前に調べていた魔物の一匹と特徴が酷似している。

 幸先の良さに俺はニヤリと笑い、逃がさないために急いで感じ取った気配の元に向かった。


 俺が近づくと、先ほどまで高速で動いていた気配は動きを止め、更に微かに漏れていた気配を消した。

 身を隠しているつもりだろうが、隠れる前から捕捉していたため、居場所はハッキリと分かっている。


 俺が気づいていることに気づかれないよう、直接視線を向けることはせず、内角視野で獲物の姿を確認した。

 木の隙間に隠れていたのは、小さなリスのような魔物。


 この魔物こそ、シンプフォレストで俺が狙おうと思っていた魔物ーーハイドスクワロル。

 警戒心が強く、隠れるのも上手い。

 その上で動きも速いということで、その姿を見ることができた者には幸運が舞い降りるという言い伝えがあるほど、探すのが困難な魔物。


「さて、どうしようか」


 ハイドスクワロルに捉えながらそう呟き、ここからの立ち回りを思考する。

 美味しいと言ってもハイドスクワロル自体が美味しい訳でなく、巣の中に隠し持っている木の実等が美味しいとされているため、ただ捕まえるだけでは駄目。


 巣まで戻らせた上で、隠し持っている木の実を取らないといけない。

 問題はどう巣まで戻らせるかなのだが……適当に暴れ回ってみるか。


 乱雑に見せかけた攻撃を繰り返して、移動させることから始める。

 逃げ出したら、そこからはハイドスクワロルの尾行を開始。


 暗殺者時代から幾度となく尾行を行ってきたため、尾行に関しては戦闘以上に自信がある。

 魔物を尾行するのは初めてだが問題ないだろう。


 これからの動きを決めた俺は、早速暴れ回ることにした。

 考えなしの乱雑な攻撃に見せつつ、ハイドスクワロルに危険だと思わせる攻撃。


 それでもギリギリまで逃げることはなかったのだが、俺が飛ばした魔法が体スレスレを通ったことで、背後を見せた隙に逃走を開始してくれた。

 気配を殺し、逃げたハイドスクワロルに勘づかれないように尾行をスタート。


 動きが速い上に小回りが効くため、人間が通れないような場所を平然と通り抜けていくハイドスクワロル。

 俺は身体能力だけで何とか食らいついていき、今のところ見失わずに追いかけることができている。


 もはや尾行というよりかはチェイスだが、予想以上に面白い。

 チェイス中に他の気になる魔物の気配を見つけつつも、今はハイドスクワロルだけに狙いを定めて追いかけ回す。


 そしてとうとうーーハイドスクワロルが動きを止めた。

 周囲をキョロキョロと窺ってから、深い茂みの中に入っていった。


 その茂みの中心部分は若干ながら盛り上がっており、ハイドスクワロルはその盛り上がっている部分に向かった様子。

 それから数分ほど様子を窺っていたのだが、動く気配がないため、十中八九あの盛り上がっている部分に巣があると見ていいだろう。


 茂みを掻き分け、盛り上がっている部分に向かうと、地面に大きな穴が掘られていた。

 俺は木の棒を使ってその穴を掘り返すと、中から先ほどのハイドスクワロルが飛び出してきた。


 俺の顔を見て、すぐに逃げ出そうとしたハイドスクワロルだが、俺が追いかけてこなかったことで……どうやら俺の目的が何なのかを察した様子。

 少し離れた位置からプリプリと怒った様子で鳴いているが、俺は構わず巣を掘り進めーーそして、巣の中に隠されていた古びた壺を見つけた。


 巣から壺を取り出して中を除いてみると、壺の中いっぱいに蜜が入っており、蜜と一緒に様々な木の実や果実が入っている。

 甘い豊潤すぎる香りに誘われるがまま、俺は壺の中の蜜を指で掬って舐めてみた。


「ーーうんま!」


 予想を越える旨味に大きな声が出てしまった。

 蜂蜜だと思うのだが、俺の知っている蜂蜜ではなく、甘味よりも旨味が圧倒的に強い。


 一緒に詰められていた木の実や果実の香りや味も混じっており、実よりも蜜の方が本体なのではと思うほど。

 希少な蜂蜜と希少な果実が何十年にも渡り、壺の中で熟成されていたからこそ出される味。


 正直、目玉商品になりえるレベルの旨さだが、あくまでも今回の狙いはフライレイクファルコン。

 ただ……この蜜は食べずに取っておこう。


 蜜が漏れないよう、しっかりと封をしてから鞄の中に入れた。

 完全にブチギレているハイドスクワロルに軽く謝罪をしてから、俺は他の魔物を求めつつ、グラッグ海を目指して歩みを進めた。



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