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番外編『ジェイドの道具屋繁盛記』 第2話


 グラニール山に向かう道中、目についた薬草をしっかりと鑑定していく。

 今見ている薬草は、低級回復ポーションに使われるごく普通の薬草だが、そんな薬草一つとってもしっかりと質にこだわって採取する。


 深い緑色をした薬草がいいと一般的には思われがちだが、価値が高いとされているのは淡い緑色をした若葉。

 何も加工せずに使う場合は深ければ深い緑色の方が効果は高いのだが、ポーションなどに加工する場合は若葉の方が混じりやすい上に相乗効果も高くなるらしい。


 俺は実際にポーションを作ったことがないため、この辺り知識は全て受け売りなのだが、知識自体に間違いはない。

 そのため若葉であり、尚且つ色素の薄いものだけを選定しながら摘んでいく。


 今までは退屈だった移動時間も、薬草採取のお陰で退屈することなくグラニール山までやって来ることができた。

 自分なりに結構な量を摘んだつもりだったが、まだ持参した籠の五分の一にも到達していない。

 あの量が三日間でなくなったことを考えると、この籠をパンパンにできなければ話にならないため、グラニール山では更に気合いを入れて採取していかないと駄目だな。


 まぁグラニール山では今回の目的の朔月花だけでなく、上薬草や上毒消し草、魔力を回復させる魔力草や麻痺を直す満月草など、自然豊かな山なだけあって様々な種類の植物を採取できる。

 そのことを考えると、おそらく籠いっぱいになるまで採取することができるだろう。

 ここからは知識と目利きが試されるため、頬を叩いて気合いを入れてから、俺はグラニール山へと足を踏み入れた。

 


 登山を開始してから約五時間が経過した。

 グラニール山に足を踏み入れた時刻がすでに夕方だったため、辺りは深い闇に包まれている。


 俺は夜目が利くため、夜の登山であろうと問題ないのだが……流石に質の良し悪しまでは識別することができない。

 それでも何の植物かぐらいは分かるため、適当に採取して後で選別するという方法を取るのも選択の一つではある。


 ――が、無暗に採取することは自然を荒らすだけのため、ここからは朔月花のみに狙いを絞る。

 朔月花は深夜にしか採取できない。

 ただ、明かり一つない深夜では植物の質を確かめることが困難。


 植物を大量に採取しながら朔月花を狙える一石二鳥の良い案だと思っていたが、そう簡単には上手くいかない。

 俺は気持ちを切り替え、移動ペースを上げて朔月花の捜索に全神経を注ぐことに決めた。


 標高2000メートルを越えた辺りから雪は積もっていたが、今では辺り一面雪景色。

 こんな場所に植物なんか生えているのか不安になるが、ここからは魔法で光源を作って探していく。


 道中も魔法で照らしながら進みたかったが、朔月花探しのために魔力は温存しておいた。

 火属性魔法で雪を溶かしながら、朔月花を間違って燃やさないように慎重に探す。


 時間制限があるため焦ってくるが、冷静さを保ちながら丁寧に見て回った。

 ――が、結局初日は朔月花を見つけることができず、グラニール山での野宿が決定。


 夕方までは雪が残っていない場所まで下りて植物採取を行い、そして夕方になったら夜まで仮眠。

 それから深夜までに山頂付近まで戻り、朔月花探しというサイクルをこなすこと……三日が経過してしまった。


 簡単には見つからないとは思っていたが、ここまで見つからないのは流石に想定外。

 気配や魔力を持っていないというのもネックであり、魔物の討伐がどれだけ楽だったのかを思い知らされている。


 目撃情報が嘘だったのではないか。

 そんな考えで頭の中がいっぱいなり始めたタイミングで――大きな岩と岩の間から何かが生えているのを見つけた。


 俺は一目散に駆けつけ、岩の間から生えていた植物を間近で凝視。

 月明かりに照らされたその花は……紛れもない朔月花だった。


「ようやく……見つけた。本当に――嬉しすぎる」


 全身に力が入り、全力のガッツポーズをしながらそんな独り言を漏らしてしまうほど嬉しい。

 流石にスタナから告白された時には及ばないが、人生の中でもトップクラスに嬉しいのは間違いない。


 そして俺は慎重に雪の中から朔月花を掘り出し、無事に採取することに成功。

 採取する喜びに目覚めてしまいそうになるほど、達成感が凄まじい。


 予想以上に時間がかかったことで籠いっぱいに質の良い植物を摘むこともできたし、結果的に今回の遠征は大成功だろう。

 苦労して採取した朔月花は正直売りたくないが、自信を持って目玉商品に据えることができる。


 俺的入手難度をDランクからAランクに心の中で格上げしてから、俺は荷物をまとめて下山の準備を行う。

 早く商品を並べ、営業を開始したい気持ちに胸を躍らせて、ヨークウィッチに帰還したのだった。



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