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第320話 黒い過去


 緊迫した空気が流れている中、俺はスタナに話を切り出した。


「スタナにはずっと隠していたんだが、俺は――元暗殺者なんだ」


 俺がそう告げた瞬間、空気が凍り付いたかのように静かになった。

 下に広がっているヨークウィッチの街の音が聞こえるほどであり、スタナが困惑して固まっているのは姿を見ずとも伝わってくる。


「…………あ、暗殺者ですか? じょ、冗談とかではなくてですか?」

「ああ、本当に元暗殺者だ。暗殺者をクビになった後、逃げるようにヨークウィッチにやってきた」

「それで……初めて出会った時はあんな感じだったんですね」


 最初は冗談ではないかと軽く疑ってきたが、冗談ではないと分かるとすぐに呑みこんだスタナ。

 そして、俺と初めて出会った時のことを思い出し、自分なりに少し納得ができた様子。


「思い返せば、引ったくり犯から鞄を取り返したという事実もそうですし……その取り返した速度も疑われていましたもんね。それからゴブリンキング騒動の時も……私、少しだけ気になっていたんです。まるでジェイドさんが騒動を収めたような感じがしていて……。実際にジェイドさんがゴブリンキングを倒したのですか?」

「そうだ。ゴブリンキングは俺が倒した。その他にも色々と裏で動いていたんだ」

「そうだったんですね。ジェイドさんにはミステリアスな部分が多いと思っていましたが、私の中で色々と繋がった気がします」


 スタナの声音はそこまで暗いものではなく、最初は困惑していた様子ではあったが今では受け入れられているような感じ。

 ただ、俺はスタナの顔を見るのが怖くて顔を上げることができておらず、下を向いたまま会話をしている。


「これまで黙っていて本当にすまない。いつか話さないといけないと思っていたんだが、結局こんなタイミングで話すことになってしまった。……昨日、付き合うと言った件だが――」

「やっぱりやめるって言いませんよね!?」


 下を向いていた俺の肩を掴み、今日一番の動揺した声を上げたスタナ。

 肩を掴まれた衝撃もあって、元暗殺者であることを打ち明けてから初めてスタナの顔を見た。

 声音から分かっていたが、その顔は今にも泣きそうな表情であり……本気で申し訳なくなってくる。

 

「……俺の気持ちは昨日伝えた通りだ。ただ、元暗殺者と付き合ってスタナに何かあってしまったらと考えると――」

「そんなことは考えないでいいです! ジェイドさんにどんな過去があろうと、私は今のジェイドさんを好きになったのですから! ジェイドさん……改めて言わせて頂きます。私と付き合ってください」


 泣きそうになりながら、今にも消え入りそうな声でそう告白してきた。

 どう選択するのが正しいのか、俺にはさっぱり分からない。


 スタナが受け入れてくれるのであれば、そのまま付き合うべきだと思っていたが……。

 俺と付き合うことで不幸が待っているのであれば、ここで突き放すのが正解なのだろうる。


 ただ――やはり俺もスタナのことが好きだ。

 今のスタナの表情を見て、絶対に離したくないと強く思ってしまっている。


 過去にしたことを考えれば、この先に不幸が待っているのかもしれない。

 それでもスタナが嫌だと言わないでくれるのであれば……俺がスタナを幸せにしたい。


「俺は…………スタナを突き放すつもりでいた。というよりも、この話をしたらスタナの方から去ると勝手に思っていた」

「そんなことはありません。確かに驚きはしましたが、先ほども言った通りジェイドさんはジェイドさんです」

「そう言ってくれて、心の底から救われた気がする。……俺の方からも改めて言わせてくれ。俺と一緒にいることでスタナに危険に巻き込んでしまうかもしれない。――ただ、俺が死んでもスタナは守って、そして幸せにする。だから、俺と付き合ってくれませんか?」

「――もちろんです。ジェイドさん……愛しています」


 涙を浮かべながら俺のことを抱きしめてくれたスタナ。

 俺はそんなスタナを傷つけないよう、優しく抱きしめ返す。


 昨日と同じような光景ではあるが、俺の中のモヤモヤは完全に消え去っており、本当に心の底から幸せだと感じられている。

 絶対にスタナは俺が守るし、絶対に幸せにすると心の中で強く誓った。


「……ここに来るまで本当に怖かったですが、今は幸せの気持ちしかありません。どうか末永くよろしくお願いします」

「俺もずっと怖かった。拒否されてしまったらってずっと考えていたからな。こちらこそよろしくお願いします。――必ず幸せにする」

「ふふ、これからのジェイドさんと歩む人生が楽しみで仕方がありません」


 俺の胸元で小さく笑ったスタナは、涙でいっぱいの目を閉じた。

 そんなスタナに俺はやり方に戸惑いながらも――優しくキスをしたのだった。





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