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第317話 サプライズ


 前菜の後は魚料理、それから口直し用のアイスを食べた。

 魚料理にももちろんワインが出され、料理との相性が計算されたロゼワイン。


 軽すぎず、重すぎずの口当たりの良い美味しいワインであり、全てのクオリティが本当に高い。

 スタナは美味しいワインを飲んでほろ酔いしたのか、フワフワと楽しそうにしている。


「美味しくて、楽しいですね! このお店を選んで大正解でした!」

「本当に大正解だな。連れてきてくれてありがとう」

「いえいえ。ジェイドさんが無事に戻って来られたお祝いですので、私の方こそ付き合って頂いてありがとうございます!」


 二人でペコペコと頭を下げ合っていると、いよいよメインである肉料理が運ばれてきた。

 これまた芸術性の高い見た目であり、食欲のそそられる美味しい匂いが香ってくる。


「お待たせいたしました。こちらははぐれうしどりのイチボ肉のポワレです。こちらのワインとご一緒にお楽しみください」


 美味しそうなメイン料理と共に提供されたのは赤ワイン。

 ここまで白→ロゼ→赤と徐々に色が濃くなっていることから、それも計算されて提供されていることが分かる。


「ワインの香りが今日飲んだ中で一番です! このお店のスペシャリテに合う最高級のワインですよ!」

「どっちも美味しそうだな。早速頂かせてもらう」


 これまでと同様にまずはワインから口に入れる。

 ガツンと来るような重みのある赤ワインで、香りも口や鼻に残る深みのある感じだ。


 熟成されきったという感じの甘味があり、これまで頂いたワインとは別種のこってりとした味わい深いワイン。

 口に残るのをしっかり堪能した後、次は一緒に提供された肉料理に手を伸ばす。


 口に入れた瞬間にまず感じたのは強烈な旨味。

 重みのある赤ワインに負けていない味であり、これまたワインに合うように計算されたであろう味だ。


「――本気で美味しいな」

「本当ですね! ここまでお酒が美味しいと感じたのは初めてかもしれません」


 ワインを飲んだら肉が食べたくなる。

 肉を食べたらワインが飲みたくなる――のループとなり、本当に無限に食べられそうな勢い。

 

 ただ料理は無限にある訳ではなく、あっという間にイチボ肉のポワレも最高級のワインもなくなってしまった。

 まだまだ食べたいしまだ食べられるが、これぐらいの気持ちで食べ終えるというのが嗜むということなのだろう。


「一瞬で食べてしまった。ワインとの相性も最高だな」

「私もです! 味わって食べようと思っていたのですが、本当にあっという間になくなってしまいました!」


 そう語るスタナの表情は満面の笑みを浮かべており、どれだけ満足だったかはその顔を見れば一発で分かる。

 それから二人でメイン料理とワインについてを語り合っていると、最後の料理であるデザートが運ばれてきた。


 デザートはミルフィーユにフルーツとクリームが乗ったこれまた美味しそうなものであり、甘いものが好きな俺にとっては惹かれる料理だったのだが……。

 それ以上に気になったのは、デザートと一緒に運ばれてきた花束。


 高級店だとそういうものサービスもあるのかと思ったが、周囲を見渡す限りでは違うようだし、何やらスタナの表情が一気に固くなったように見える。

 ついさっきまで幸せそうな満面の笑みを見せていただけに、どういうことなのか身構えてしまう。


「こちらは季節のフルーツのミルフィーユです」


 テーブルにデザートを置いた後、微笑みながらスタナに花束を渡して去って行ったウェイトレス。

 俺は未だに状況を理解できおらず、次のスタナの一言を静かに待った。


「……すみません。料理を頂くのと、こういうことは分けるべきだと思っていたのですが……周りから固めないと覚悟が決まらなかったので、こういう形式を取らせて頂きました。ジェイドさん――急だと思いますが、私とお付き合いをしていただけませんか?」


 あまりにも予想外の言葉に、口を大きく開けて固まってしまう。

 これは……世間一般的に言う『告白』というものを俺が受けているのだろうか?


 元暗殺者でありながら、既に四十近い俺には関係のないもの。 

 そう、今この瞬間まで思っていただけに頭が真っ白になっている。

 とにかく返事をしなくてはいけないと理解しているのだが、文字通り言葉が見つからない。

 

「………………………」

「あ、あの……だ、駄目でしたら言ってください。遠慮なく、ズバッとお願いします。そうしたら諦めがつきますので」

「……い、いや、駄目ってことはないが…………俺なんかでいいのか? 俺とスタナとでは釣り合わな過ぎ――」

「もちろんです! 私はジェイドさんの優しさをずっと見ていましたから! 気づいていないと思いますが、人助けをしたのに犯人だと疑われてアタフタとしているのを初めて見た時から……私はジェイドさんに惚れていたんです」


 そんなカミングアウトをされたが、未だにスタナが俺に告白という事実が信じられない。

 やはり俺とは釣り合わないという事実が脳内をぐるぐると回るが……仮にそうだとしても、俺にはスタナの告白を断るという選択は取れない。

 俺もスタナのことが好きなのだから。


「それは……本当に気づかなかったな。ちなみに俺もスタナのことはずっと気になってはいた。意識的に切り捨てていたけど」

「ということは、ジェイドさんは私のことを――」

「この感情を持ったことがないから分からないが――俺もスタナのことが好きだ。今も心臓が破裂しそうなほど嬉しいからな」

「私もジェイドさんのことが好きです! 改めて伝えさせていただ――」

「いや、今度は俺の方から言わせてくれ。――スタナ、俺と付き合ってくれないか?」


 顔から火が出るほど熱くなっている中、今までにないほど激しく動く心臓の鼓動に身を任せるように今度は俺がその言葉を口にする。

 そんな意を決した俺の言葉に、スタナは笑顔と涙を浮かべながらゆっくりと頷いてくれた。

 スタナに言わせてしまった情けなさを感じているが、そんなことはどうでもいいほど――俺は幸せな感情に包まれたのだった。



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