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第308話 照れ隠し


 バックルームも一号店と比べるとめちゃくちゃ広い。

 無駄な物も置かれておらず、【シャ・ノワール】とは思えないほど綺麗な場所。


「それにしても戻ってくるの遅すぎ。何してたの?」

「そんなことはないだろ。かなり早く戻ってきたつもりだが」

「何してたの?」

「色々だ。王国に行って色々していた」

「答える気はないと。……ふーん」


 ジト目で俺を睨んできたヴェラ。

 流石に暗殺しに行っていたなんて、口が割けても言えない。


「そ、それより……めちゃくちゃ繁盛しているな。この二号店にも初めてきたから本気で驚いた」

「頑張った。……主にブレントが」

「そんなことはないだろ。さっきチラッと見たが、ヴェラの説明で魔道具が売れていたぞ」

「私は魔道具だけ。店長らしいことはブレントがやってる」

「仮にそうだとしても、魔道具が一番人気なら【シャ・ノワール】二号店の看板はヴェラだろ。新しい魔道具の開発もヴェラが行ったんだろ?」

「ん。職人達に手伝ってもらいながらだけど」


 少し照れくさそうにしながら、頭をぽりぽりと掻いているヴェラ。

 なんとなく威張りちらしてくるかと思っていたが、ここまで謙遜に次ぐ謙遜なのは意外だな。


「パッと見ただけだが、魔道具も戦闘用のアイテムもクオリティが高かった。……売れているだろ?」

「ん、まぁそれなりに」


 ヴェラは悪い笑みを浮かべたため、俺も笑い返す。


「なら、やっぱりこの店の店長はヴェラだろ。ヴェラが店長をやっているとレスリーから聞いた時は心配したが……ちゃんと成長しているんだな。すっかり商売人の顔になってた」

「そうかな。自分じゃよく分かんない」

「【シャ・ノワール】に来たばかりの時は、やる気なしの冒険者って感じだったからな。そこから魔道具開発でお金を稼ぐ楽しさに目覚めて、今ではすっかり店長の顔になってる」

「別にそんなことはないと思う。頑張ろうって気持ちはあるけどさ」


 ちゃんと店長をやっていると思うけどな。

 自信がつくまではもう少し時間がかかるのかもしれない。


「とにかくヴェラがしっかりやっていて嬉しかった。【シャ・ノワール】を盛り上げてくれてありがとな」

「私だけの力じゃないけど……どういたしまして。ジェイドもすぐに復帰するの?」

「そのつもりだけど、明日はゆっくりさせてもらうつもり。帰ってきたという報告をしたい人もいるしな」


 トレバーとテイト。ギルド長のエイルと副ギルド長のマイケル。

 それからスタナには絶対に会いに行きたい。


「そっか、良かった。こっちで働くなら、ビシバシこき使うから覚悟しておいて」

「望むところだ。長期休暇をもらっていたし、その分はしっかりと働くつもりだ」

「ん。期待してる」


 ちょうどそんな会話を終えたところで、裏口が開いた。

 中に入ってきたのはニア。

 配達を終えて戻ってきたようで、ヘトヘトな様子だったが、俺を見るなり一度ジャンプをして駆け寄ってきた。


「うわー! ジェイドさんっす! 戻ってきてたっすか!?」

「ニアも久しぶりだな。ちょうどさっき戻ってきた」

「心配してたんすよ!? 手紙も来ないって毎日ヴェラさんがぼやいてたっす!」

「べ、別に毎日はぼやいていない」

「ヴェラは本当に心配してくれていたんだな」

「そうっす! ヴェラさんが一番心配してたっすけど、みんな本当に心配してたっすよ? ……でも、戻ってきてくれて良かったっす!」

「うっさいから、ニアはあっちに行ってて」


 少し顔を赤くさせているヴェラが追い払おうとしたが、ニアはヴェラの言葉を無視して俺の手を握ると、勢いよくブンブンと振り回してきた。

 そこからはヴェラとニアの攻防が始まり、そんな二人のやり取りを俺は笑いながら見つめた。


「――二人とも落ち着けって。別にどっちのが心配していたかどうかなんてどうでもいいから。心配してくれたという事実が俺は嬉しい」

「はぁ? 何を達観しているの? 元はと言えば、ジェイドが手紙の一つも寄越さないのが悪い」

「いや、それはさっきも言ったが次はちゃんと送る――」

「そうっすよ! ジェイドさんが頻繁に近況報告をしていれば良かったっす!」

「いや、だから……」

「言い訳はいらない。無駄に心配かけたお詫びとして、今日はとことん付き合ってもらう」

「いいっすね! きっと師匠も乗り気っすから!」

「ふふふ、今日は帰さないから覚悟して」


 どっちのが心配していたか言い争っていたはずなのに、いつの間にか二人の矛先は俺へと向いている。

 微笑ましいやり取りだっただけに、止めるのが少し早かったと後悔。


「ニアの言う通り、レスリーも乗り気だったから元々そのつもりだったが……二人も帰れないけどいいのか?」

「もちろんっす! 最悪、明日は臨時休業っすから!」

「とことん付き合うけど……臨時休業はしない。死ぬ気で働く」

「うえー! 明日くらいいいんじゃないっすか!?」

「ダメ。わざわざ来てくれるお客さんもいるから」

「うぅ……明日は大変そうっす」


 やはり店長らしくなっている。

 ニアの意見を突っぱねたヴェラを見て、俺は改めてそんな感想を抱いた。

 何はともあれ……今日の飲み会は本当に楽しみだな。




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