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第288話 潜入


 ぐるぐると帝城周りを歩いている見張りは余裕で掻い潜ることができるが、問題なのは入口に立っている見張りをどうするか。

 一番は見張りが交代するタイミングを狙うことだが、見張りがどのタイミングで交代するかまでは分からない。


 そうなってくると、前にヨークウィッチの冒険者ギルドでやったように無理やり注意を惹くしかない。

 まずは正面入口付近まで近づき、小石を手に取って照明を狙って撃ちこむ。


 小さな破裂音と共に、入口付近の複数ある照明の一つが割れた。

 何が起こっても動揺するなという教えがあるのか、あまり大袈裟な反応は見せなかったが、それでも視線が向いてしまうのは人間の性。


 視線が外れた一瞬の隙を狙い、俺は入口の前で見張りを行っている二人の間を擦り抜けて侵入した。

 中は想像を超える広さであり、庭というか広場のような造りになっている。


 このまま正面の扉から侵入できればいいのだが……やっぱり鍵がかかっているか。

 押しても引いてもビクともせず、夜ということもあって内側から鍵がかけられている。


 これだけの見張りがいて、更に鍵もしっかりとかかっているという厳重すぎるセキュリティ。

 流石は帝国を象徴する城なだけある。


 ピッキングが得意ではあるが、このタイプの錠は開錠するのに相当な時間を要するため向いていない。 

 そうなってくると、他に入ることができる場所を探った方がいいだろう。


 嫌な予感がして止めたのだが、やはりさっき目星つけた場所が一番侵入しやすかったか?

 ……いや、今更考えるのはよそう。

 あの侵入経路のことは忘れ、俺は慎重に建物内に入れる場所がないかを探ることにした。

 

 広場のような場所に身を隠しながら探っていたのだが、鍵の開いている小さな小窓を見つけた。

 多分だが、トイレの窓だろう。


 換気のために開けたままになっているようで、狭いがあそこからな中に入ることができそうだ。

 周囲に人がいないことを確認してから、一気に小窓から侵入する。

 

 やはりトイレだったようだが、流石は帝城なだけあってトイレなのに綺麗すぎる。

 エアトックで寝泊まりしていたボロ宿よりも何倍も綺麗だな。


 変なところで引っかかって驚きを隠せないが、今は帝城を見学するのが目的ではないためクロを探ることだけに集中する。

 トイレから外に出て、鍵のかかっていた扉の先である広間のような場所に出た。


 天井も異様に高く、身を隠す場所が点々と聳え立つ柱しかない。

 ひとまず近くに人がいないため見られてはいないが、柱の影に隠れながら先を目指して進んで行こう。


 もっと大量の人がいるのを想像していたが、予想以上に静まり返っている。

 それなのに大量の明かりが灯されていて明るいのが慣れないな。


 夜目が効く分、俺は真っ暗な方がありがたいのだが、セキュリティの面を考えても常に明るくしているのかもしれない。

 そんなことを考えつつ、俺は柱から柱を移動しながら帝城の奥へ進んで行った。


 手前は広間のようになっていたが、奥に進むにつれて道が分かれると同時に部屋の数が多くなり始めた。

 部屋は無数にあるものの使われていない部屋も多く、多分一階は基本的に近衛兵が使用しているようだ。


 二階、三階が身分の高い人間が住んでいるようで、今のところ見かける人間全てが鎧を着込んだ近衛兵。

 どの人間もゼノビアぐらいの力を持っているため、本当に精鋭で固められていることが分かる。

 

 さて、ここからどう調べていくかが非常に重要。

 一階を手当たり次第調べるのか、上の階層を調べていくのか。


 流石に上の階層で生活しているのは皇族だと思っているため、クロがいるとしたら一階のはず。

 ……ただ、クロなら皇族すら手中に収めていてもおかしくはないんだよな。


 散々迷ったが、ひとまず一階を調べてみることに決めた。

 クロが見つからなかったとしても、隠し通路なんかがないかが見つかれば儲けもの。


 上の階層よりも、一階の方が隠しものをしている可能性が高いと考えた。

 かなりの数の近衛兵の目を掻い潜りながら、まずは怪しい部屋の捜索に移る。


 油断したら簡単に鉢合わせてしまうぐらいの狭い通路。

 そんな通路を慎重に進みながら、俺は他の部屋よりも何となく怪しいと感じた書斎室に入った。


 この部屋だけは灯りがついておらず真っ暗。

 更に窓もついていないため、月明かりすら差し込んでいない。


 置かれている本の種類はありがちな物語のものが多い。

 何かしらの重要な書類があるのではと思ったが、流石に書斎室に置くようなものではないか。


 真っ暗の部屋の中、とりあえず一通り本を探してみようと本棚を見ていたのだが、俺は本ではなく別の部分に引っかかりを覚えた。

 壁につけられた本棚の一つだが、他の本棚と比べて並べられている本の年代が古い。


 軽くノックをするようにその本棚に触れてみたが、この本棚の裏が空洞になっているようで、音の響きが他と違った。

 『都影』の物置を思い出すが、それよりも精巧な仕掛けのため、この先にかなり重要なものを隠しているはず。

 俺は本棚の仕掛けを解き、隠し扉の先を調べることにした。



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