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第248話 取引


 俺が盗み出した違法ドラッグについてをアルフィに説明し、しっかりとどういう状況なのかを理解してもらうことができた。

 セルジも珍しく興奮していたが、俺が持ち出したものが違法ドラッグと理解するや否やアルフィのテンションも跳ね上がった。


「本当に凄いです! この違法ドラッグがあれば、ヴィクトルを捕まえることができるじゃないですか! 裏切り者を見つけるって任務を成功させるどころか、『バリオアンスロ』に大打撃を与える証拠になりますよ!」

「全部アルフィの言う通りだな。このブツさえありゃ、北側エリアの一部を制圧することができるかもしれない。その地下通路に繋がってる家具屋も案内してくれるか?」


 セルジは酔いが完全に冷めたようで、熱を帯びた口調でそう問い詰めて来た。

 正直このまま全てを教え、その代価としてクロのことを聞き出すのもいいのだが……やはりまずは俺一人でヴィクトルに接触したい。


「いずれ教えるつもりはあるが、その情報はまだ教えることはできない。ということで、その違法ドラッグも一時的に返してもらう」


 そう告げてから、セルジに手渡した違法ドラッグを取り上げた。

 俺の態度に怒り出すかとも思ったが、流石にセルジも無償で情報提供をしてくれるはずがないと思ってはいたようで、手を組んで椅子に座って俺の方に向き直した。


「そりゃタダで情報をくれる訳はないわな。それだけの危険を冒して手に入れた情報だしよ」

「えっ? ジェイドさん、僕達に情報をくれないんですか?」

「あげないとは言っていないぞ。二人が裏切り者を知りたかったように、実は俺も知りたい情報がある」


 俺に最高の手札を持っていると分からせた上なら、二人に俺がクロの情報を求めていることを打ち上げても大丈夫だろう。

 そう判断し、俺は今何の情報を求めているのかを話すことに決めた。


「やっぱりジェイドも何か探していたんだな。正直、俺には何を知りたがっているのか見当もつかない」

「それはそうだろうな。……俺が知りたいのはクロという人間の情報だ。二人も帝都で冒険者をやっていたなら聞いたことがあるかもしれない」

「クロさんですか? 僕は本当に聞いたこともないですね」

「俺も本当に聞き覚えがない」

「まぁこっちの人間のことは知らなくてもおかしくはない。もう一人知りたい人物がいて、そっちの名前はブレナン・ジトーという人物だ」


 俺がその名前を発した瞬間、セルジは心当たりがあったようで手を一つポンと叩いた。

 アルフィは変わらず小首を傾げたままだが、まぁアルフィには特に期待していない。


「その名前なら聞いたことがある」

「え? 僕、そっちの名前の人も全然知らないんですけど!」

「確か、帝国の執政官だったよな? 詳しい情報は何も持っていないが、相当優秀ってことで名前だけは流石に知っている」

「しっせいかん? しっせいかんって何ですか?」

「ああ、この国の執政官の名前で帝都に住んでいる人物だ」

「ジェイドはその執政官様の情報を欲しているのか?」

「そうだ。執政官であるブレナン・ジトー。それからクロという人物を情報を探している」

「あの……僕、何にも分からなくて寂しいです!」


 アルフィは説明してもらおうと頑張ってはいるが、ここで説明を入れると長くなるので無視を決め込む。

 あとでセルジからゆっくりと教えてもらえるだろう。


「正直、今の俺には何の情報もない。その二人の人物について調べて情報を得られることができれば、ヴィクトルについての情報を全てくれるのか?」

「ああ。重要な情報をくれればすぐにでも渡す。それか、俺にヴィクトルと接触することを認めてほしい。裏切り者であるヴィクトルなら知っている可能性が高いと見ている」

「なるほど……。ただジェイドが接触したことで、ヴィクトルに逃げられる可能性があるだろ?」

「もちろんあるが、そうなった場合に備えての二の矢も準備してある。まぁ逃げようとしても逃がさないから安心はしてほしい」


 常に見張っておくつもりだし、相当な手練れじゃない限り逃げることは不可能。

 仮にヴィクトルに逃げられてしまっても、俺には南の森で見かけた上流階級の男がいる。

 獣人と怪しい取引をしていたあの男からなら、『バリオアンスロ』に繋がる重要な情報を得られるだろうからな。


「その二の矢ってのも教えてほしいところだが、ジェイドを信用していいんだよな?」

「もちろん。ヴィクトルと接触する前にこうして許可を貰いに来ている訳だからな。やろうと思えば二人を出し抜いて接触し、そのまま姿を晦ますことも俺はできた」

「それはそうだな。……分かった。ジェイドの好きに接触してくれて構わねぇよ。逃げられたとしても俺が責任を取る」

「話が早くて助かる。信用してくれたからには、こっちもしっかりと有益な情報を渡す」

「そりゃ期待させてもらう。接触の許可だけじゃなくて、俺とアルフィでも二人の情報について調べておく。もちろんジェイドの名前は伏せてな」


 互いにニヤリと笑ってから、セルジと固い握手を交わした。

 取っつきやすいのはアルフィだったが、取引を行うのはセルジがベスト。


 俺にとってこの二人のバランスは良かったし、性格も含めていい付き合いを築くことができそうだ。

 色々と信用してくれた二人にしっかりと報いることができるよう、ヴィクトルと接触する前に二の矢の方も同時進行で調べるとしよう。



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