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第246話 家具屋の秘密


 昼間の中央通りなのにも関わらず、やはり人通りが少ない。

 この通りは寂れた家具屋だけでなく他の店もパッとしないし、そもそも営業しているのかどうかも怪しい店ばかり。


 これから侵入しようとしている俺としてはありがたいが、少し心配になる廃れ具合いだな。

 周囲の様子を覗いながらそんなことを考えつつ、俺は寂れた家具屋の扉の前に立つ。


 扉を軽く押したり引いたりしてみたが、開きそうにないことから鍵はしっかりとかけられているようだ。

 ただ古いタイプの鍵だったため、簡単にピッキングに成功。


 あまりにもあっさりと寂れた家具屋の中に入ることができた。

 中は外から見た通りの狭さな上、物が大量にあるため人が一人通れるかどうかの幅しかない。


 気配を探っているが、中からは人の気配が一切しない。

 昼なのに薄暗く怪しい雰囲気しかない家具屋だったが、狭い通路を抜けた先の部屋には驚くような光景が広がっていた。


 リビングのような場所の中心の床がぶち壊されていて、その床下に行けるようになっている。

 左右の部屋は土で埋まっていることから、自分たちで掘ってこの地下へと続く道を作ったのだろう。


 寂れた家具屋を買い取り、地下通路に続く店に改造したって感じか。

 この時点でヴィクトルの黒は確定したが、この地下通路がどこに繋がっているのかも調べておきたい。


 この先は危険ではあるが、俺は穴に立てかけられている梯子を使って下に降りてみることにした。

 手彫りだから狭い上に作りも雑で、度々背中が擦れるのが非常に鬱陶しい。


 そんな狭い梯子を降りきると、地下通路へと出た。

 雑に作られた雑貨屋からの道とは違い、この地下通路は丁寧に作られているのが分かる。


 今は真っ暗ではあるが、通路の横にはしっかりとした照明も備え付けられているし、道幅と高さともに広く作られている。

 恐らくこの地下通路は以前からあった場所であり、後から無理やり寂れた雑貨屋からの道を繋げたのだと思う。


 かなり広いようだがこの地下通路がどこに続いているのか、非常に気になるな。

 前方が北側エリアへと続いており、後方はカーブするように東側エリアに続いている。


 東側エリアもあまり行ったことのない場所のため、気になるといえば気になるのだが……やはり明確に怪しいのは南側エリアの方。

 進む方向を決めた俺は、音を立てないように慎重に南側エリアを目指して地下通路を進んで行った。



 真っ暗な地下通路を進むこと数十分。

 ようやく行き止まりが現れ、上に続く梯子が見えた。


 真っ昼間ということもあってか人が行き来する気配はなく、誰とも出会うことなくここまでは来れた。

 この上がどこなのかは検討もついていないが、ここで引き返すという選択肢はないためゆっくりと梯子を上る。


 僅かながら上から物音を聞こえるため、この先には確実に人がいる。

 最悪の場合を想定しつつ、気づかれないように梯子を上って目だけを出して確認を行った。


 どうやら倉庫のような場所で、大量の麻袋が積まれているのが見える。

 この倉庫には人がいないが、倉庫の向こう側にはかなりの人がいるようで出入りしている音が聞こえてきた。


 麻袋が積まれていることもあって隠れる場所があるため、俺は倉庫に上がって色々と調べてみることに決めた。

 漂ってくる臭いを嗅いだ瞬間から分かってはいたが、麻袋の中に入っているのは全て違法ドラッグ。


 『バリオアンスロ』のアジトで作られていたドラッグがこの倉庫に運び込まれ、この地下通路を経由して街の外へと流れているのだろう。

 寂れた地下通路を利用していた時点で察しはついていたが、地下通路が繋がっていた先がこの倉庫ということで、ヴィクトルが真っ黒である証明はできた。


 麻袋の中に詰められた違法ドラッグを一つ取り出し、懐の中に入れる。

 アルフィとセルジに証拠として渡せるし、ヴィクトルとの交渉にも使うことができる。


 物的証拠も手に入れることができたし、一日張り込んだこともあって成果としては十分すぎるものが得られたな。

 もう戻ってもいいとは思うが、最後にここがどこなのかを確認しておこう。


 この倉庫の扉の先に人がいなくなったことを確認してから、覗くように外を確認する。

 隣の部屋は薄暗いバックルームのようだったが、その先が見えたことで――ここが北側エリアを調べた際に気になっていた内の一つである建物であることが分かった。


 大量の酒やら飯を売っている店というのはカモフラージュであり、この建物の本来の役割は違法ドラッグを外に売りさばくための施設。

 怪しいと目をつけた二つの建物が両方とも真っ黒だったことで、俺の観察眼がまだ鈍っていないことが分かったのは少し嬉しい。


 とりあえずこの建物がどこにあるのかも確認できたし、早いところ抜け出すとしよう。

 地下通路は隠れる場所がないし、人が来たら力で口止めするしかないからな。

 見つかって騒ぎになる前に逃げるべく、俺は梯子を下りて地下通路へと戻ったのだった。



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