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第235話 獣人だけの組織


「セルジさん、話しても大丈夫ですよね?」

「いいんじゃないか? 口外はしないって言ってるんだろ?」

「ああ。絶対に口外しない」

「なら話しますね! まずジェイドさんは、『バリオアンスロ』についてどこまで知っているんですか?」

「ほとんど何も知らない。知っていることといえば、獣人が多く悪い組織ってぐらいだな」


 獣人が多いって情報も曖昧で、俺が目撃した奴らが『バリオアンスロ』なのかも確定情報ではないからな。


「それだけしか情報を持っていないのか。情報を教えろって言うぐらいだから、もう少しぐらい知っているのかと思っていた」

「この街に来るまでは組織の名前を聞いたことがあるってだけだ。良い取引相手になるのであれば、近づきたいと考えていた」

「腕に自信があろうが、近づくのは絶対にやめておいた方がいいぞ」

「ええ、絶対に止めた方がいいです! 『バリオアンスロ』はこの街の北側を拠点にしている獣人族だけで結成された組織でして、極悪の限りを尽くす超武闘派集団なんですよ!」


 ということは、俺が北のエリアで見たあの獣人たちは『バリオアンスロ』で確定か。

 それと超武闘派集団っていうワードが気になる。


「武闘派集団ってことは、暴力を使って悪事を行っているのか?」

「そうです! 普通の人間よりも身体能力が高いこと生かして、とにかく武力で暴れ回るんですよ! 暴行に強盗に強姦! 数も多いので、あっという間にエアトックの街の北側が拠点にされてしまったんです!」

「北側のエリアだけ妙に詰所が多いと思ったが、『バリオアンスロ』の拠点があるからなのか」

「ああ、そういうことだ。北側に兵士を集めさせてはいるが、今のところ何の意味も成していない。兵士三人で取り囲んで、ようやく獣人一人と互角に戦えるって感じだからな」


 単純に戦力差で負けているって感じなんだな。

 俺は獣人と戦ったことはないが、エイルは亜人の血が混じっている感じがあった。

 エイルが獣人との混血かどうかは分からないが、あの馬鹿力を考えると確かに押さえるのは容易ではないのが分かる。


「アルフィとセルジは『バリオアンスロ』の連中と戦ったことがあるのか?」

「僕もセルジさんもないですよ! この街にしては平和な西側の地区担当ですから!」

「平和にぬくぬくとサボってる。だから、『バリオアンスロ』についての知識も最前線で戦っている連中と比べて乏しいんだわ。まぁだからこそ、こうして部外者であるジェイドに話せているんだけどな」


 ウイスキーを飲みながら、そう語った二人。

 もっと詳細な情報が欲しいといえば欲しいが、距離感的には二人から情報を得るぐらいが丁度良いのが事実。

 仕事へのスタンスも含めて色々と好都合だし、アルフィとセルジとは今後も付き合いを続けていきたいところ。


「そっちの方が俺としてもありがたい。ちなみにだが、『バリオアンスロ』は何を目的とした組織なのか知っているのか?」

「普通に犯罪行為をするための組織だと思いますよ! ただ獣人は差別的な扱いを受けていますから、抵抗するために集まっているっていう理由もあると思います!」

「俺は後者の理由の方が濃いと思っている。差別から身を守るために集まって、生きていくために犯罪に手を染める。大まかな結成の流れはそんな感じだろう」


 これが理由だとしたら、『バリオアンスロ』がクロと繋がっている可能性は低いな。

 もう情報集めを放棄してもよさそうではあるが、『バリオアンスロ』の連中がクロの情報を持っている可能性はある。

 不必要な情報と切り捨てるにはまだ早い。


「なるほど。確かに奴隷として働かされている獣人を見たことがある」

「主人から逃げ出した奴ってのが半数を占めていると思うぞ。何せ『バリオアンスロ』のリーダーが元奴隷だからな」

「へー。そのリーダーは何て名前なんだ?」

「リングって名前の狼の獣人だ。ごわごわの黒い毛で傷だらけ。醸し出している雰囲気も極悪そのものだから、見たらすぐに分かると思う」

「ジェイドさんは『バリオアンスロ』に興味津々ですね! まさか本当に商売相手にしようと考えていますか?」


 俺があまりにも食いついているからか、少し懐疑的な目を向けてきたアルフィ。

 少し不用意に情報を聞きすぎたかもしれない。


「いや、今のところは考えていない。そもそも商売相手にはならないだろう。獣人が身体能力に優れているのなら、俺が売ろうとしているアイテムを買うとは思わないからな」

「確かに! 『バリオアンスロ』の連中が煙玉なんか買うとは思えませんね! ――あっ、煙玉を貶しているとかではないですよ!?」

「そんな必死に弁明しなくても分かってる。二人には煙玉の実用性は分かって貰えてると思ってるからな」

「それならなんで『バリオアンスロ』に興味を持っているんだ? 情報を知りたい別の理由でもあるのか?」

「いや、単純に面白そうだから興味があるだけだ。色々な街を回っていると様々な話を聞くからな。自然とその手の刺激的な話が好きになったってだけだ」


 かなり強引だとは思うが、適当な理由をつけて誤魔化した。

 今日のところは、これ以上の情報を引き出すのは難しいかもな。

 『バリオアンスロ』について知りたい何かしらの理由をでっち上げてから、また改めて二人から情報を聞けばいいだろう。



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