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第216話 デート


 日はあっという間に過ぎて行き、いよいよ明日は出立の日となった。

 色々と心配していたが『シャ・ノワール』は順調のままで、客足は遠のくどころか人は未だに右肩上がりで増えている状況。


 二号店の方も順調で、開店の目途はもう立っている。

 残念ながら開店に立ち会うことはできないだろうが、無事に二号店を出せるという情報だけで俺としては十分すぎる。


 あとはレスリーと従業員のみんなに託すだけ。

 今日くらいは色々と思い出に耽りたいところだが……今日はスタナと出かける日。


 色々と緊張しているが、スタナが紹介してくれる店を回るだけだから特に問題はないはず。

 一応自分にできる最大限の身だしなみを整えてから、待ち合わせ場所である門の前にやってきた。


 さすがに待たす訳にはいかないため、集合時間よりも大分早く着いたのだが……。

 トレバーやテイトと同じように、門で待っているスタナの姿が見えた。


 二人はまだ分かるのだが、スタナに関してはこんな早い時間に来ている理由が分からない。

 一瞬、俺が集合時間を間違えたかとも思ったが、前日からあれだけソワソワしていたし絶対に間違えていない。


「スタナ、もう来ていたのか。俺が時間を間違えた訳じゃ……ないよな?」

「ジェイドさん、おはようございます! 大丈夫ですよ。私が早めに来ただけですので!」


 そう笑顔で答えてくれたスタナ。

 時間を間違えていなかったのは良かったが、それでも待たせてしまったという気持ちがあり、少し申し訳なくなる。


「時間を間違えてなかったのは良かったが待たせたのは悪かった。今日は何か奢らせてもらう」

「大丈夫ですって! 私が勝手に早く来ただけですから! それより早く街を回りましょう! 色々と計画を立ててきたんです!」

「それは楽しみだな。今日は全部スタナに任せる」

「任せてください! きっと楽しい一日にできると思います!」


 両手を握り、気合いを入れた様子。

 何はともあれ、最後のヨークウィッチで過ごす日を楽しく過ごそう。


 集合場所である門を離れ、向かったのは最早懐かしさを感じるピンク通り方面。

 流石にいかがわしい店が立ち並んでいる場所には向かっていないが、スタナと共にこっちの治安の悪いエリアを進むのは少し緊張するな。


「こっちの方面に向かうと思ってなかった。スタナがよく来る店があるのか?」

「そうなんです。私もあまり近寄らないんですけど、このお店のためだけにたまに来るんですよね! 今日はジェイドさんもいることですし、何かあっても安全ということで行くことに決めました!」


 確かに街にいるチンピラくらいからなら余裕で守ってあげられるが、そもそもこっちのエリアにそんな良い店があるとは思えない。

 どんな種類の店なのかも想像がつかず、色々と想像しながらスタナの後を追って歩いていると、どうやら辿り着いたらしく立ち止まった。


 外観は西のエリアにふさわしい汚らしい一軒家。

 どっからどう見ても店のようには見えないし、看板なんかも出されていない。


 ダンの店もそうだったが、スタナは一風変わった店を知っているよな。

 どの店も質が高かった訳だし特に心配はしていないが、間違いなく一人では見つけることすら不可能な店なことは間違いない。


「スタナ、この店は何の店なんだ?」

「コーヒーの専門店です! 豆のみを売っていて、基本的には自分でお店を持っている人しか来ないお店なんですけど……とりあえず中に入ってみれば分かりますよ」


 コーヒーの専門店。

 俺はあまり好んで飲まないが、別に嫌いではない飲み物。


 専門店というくらいだし、とびきり美味しいコーヒーを飲むことができるのかもしれない。

 そんな期待に胸を膨らませながら、スタナの後を追って店の中に入った。


 扉を開けた瞬間からコーヒーの良い匂いが鼻を衝き、心地いい気分になる。

 店の中は本当にコーヒー……しかも豆しか置いておらず、気軽に立ち寄れる店の雰囲気ではない。


「すいません! ジルーさんいますか?」


 外装も内装も怪しい店で、明るく声をかけたスタナ。

 すると奥から足音が聞こえ、姿を現したのは一人のかっこいい爺さんだった。


「スタナか。連れと一緒とは珍しいな」

「どうしてもこのお店を紹介したくて来ちゃいました! いつものを二つ頼んでいいですか?」

「ああ。まだ営業前だし構わない。適当に座っていてくれ」

「ありがとうございます!」


 サロンエプロンを身に着けたかっこいい爺さんは、そう言うと再び奥へと戻っていった。

 適当に座れと言われていたが、見る限り店内に椅子らしきものは見当たらない。


「テーブルどころか椅子すらないがどうするんだ?」

「店の奥に行きましょう。さっきのあれは許可がもらえたってことですので!」


 そう言ってかっこいい爺さんが消えていった方向に歩き、店の奥に進んで行ったスタナ。

 関係者以外は入れない場所に進むのは若干の抵抗もありながらも、俺もスタナについて店の奥へと向かった。



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