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【完結】勇者殺しの元暗殺者。~無職のおっさんから始まるセカンドライフ~  作者: 岡本剛也
第5章

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第167話 新人


 翌日の早朝。

 昨日は久しぶりに休日を満喫でき、心も体も休めた気がする。


 『パステルサミラ』の料理に二人が喜んでくれたのはもちろんのこと、ケイトも大はしゃぎするぐらい喜んでくれた。

 最高の料理のお陰で壁がなくなった感じがするし、『パステルサミラ』には毎度のことながらお世話になりっぱなし。


 料理を食べた後はすぐに解散となり、俺はそのままの足でスタナと合流し買い物に付き合った。

 時間は短かったものの久しぶりにスタナとも会え、最高の休日と言える日を過ごすことができた。


 昨日の思い出を振り返りながら歩いていると、あっという間に『シャ・ノワール』に着いた。

 いつもよりも早い時間だが、新しい魔道具が完成間近なため少しでも作業を行いたい思いでやってきた。


「おう、ジェイド! 今日も相変わらず早いな!」

「レスリーも変わらず早いだろ。それと……ブレントももう来ていたのか」

「ジェイドさん、おはようございます。まだまだ覚えなくてはいけないことがたくさんありますからね。ここのお店は色々と特殊な部分が多いので、レスリーさんから教わっていたんですよ」


 レスリーの横に立っていたのは、先週から新しく従業員として働いてくれているブレント。

 おっさんということで俺が雇うのを反対していた人物だが、こうして早朝から来ている時点でやる気に満ち満ちていることが分かる。


 仕事の覚えも早いし、物腰も軟かく接客も丁寧。

 大衆向けの道具屋といった感じだった『シャ・ノワール』が、良い意味で二回りほど格式高くなったと思うほどしっかりとした人物。

 他の二人もやる気があって元気で申し分ないが、今回雇って一番良かったと言えるのは間違いなくブレントだろう。


「もう一人で業務のほとんどをこなせるもんな! 色々とスマートだし、本当に雇って良かったぜ!」

「そう言ってもらえるのは嬉しいですね。年齢のせいで雇ってもらうことすら難しかったのに、こうして良い職場で働けているのは本当に幸運です。こんな私を雇ってもらった訳ですし、全力で働かせて頂きますよ」

「ああ、よろしく頼む! ……ただ、無理はしすぎないでくれよ! 互いに無茶をできる年ではないからな!」


 がっはっはと大きく笑いながら忠告したレスリーだが、明らかに一番頑張っているのはレスリーなんだよな。

 少し休んでもらいたいところだが、全然休もうとしない。

 ブレントにはレスリーを休ませるという意味でも、早いところ全ての仕事を覚えてほしいところ。


「そういえばなんですが……。ヴェラさんとジェイドさんは何をやっているんですか? 仕事終わりに何かしていますよね?」

「魔道具の開発を行っている。今日早く来たのも魔道具を作るためだ」

「そうなのですね。二人はそっちのスペシャリストとして雇われたとかでしょうか?」

「いや。新しいアイテムのアイデアを出せば買い取ってくれると言われたから、二人で色々と考え始めただけで俺もヴェラもド素人だ」

「素人で魔道具を作っているって凄いですね!」

「そうだろ! 今売ってる髪を乾かす魔道具も、この店で一番売れている煙玉も二人が発明したんだぜ!」


 レスリーは自分のことのように開発したアイテムをブレントに自慢し始めた。

 大袈裟に褒められ過ぎて恥ずかしくなってきたため、レスリーが考えたオリジナルアイテムで話を逸らすとしよう。


「俺のよりもレスリーの考えたアイテムの方が凄いと思うけど」

「えっ。レスリーさんもアイテムも作れるんですか?」

「ジェイド、おいやめろ! 俺のアイテムのことは教えなくていいんだよ!」

「そっちの奥にあるアイテムがレスリー作のアイテムだ。ブレント的にはどう思う?」


 埃の被った微妙すぎるレスリーオリジナルアイテムを指さし、ブレントにそう尋ねたのだが、困ったようにキョロキョロしながら言葉を必死に探している様子。

 雇った初日ですらここまで狼狽えていなかったため、ブレントが慌てる姿は凄く新鮮だな。


「え、えーと……味が合って私はいいと思いますよ。好きな人には刺さるアイテムかと」

「ほ、ほら見ろ! 道具屋で働いていたブレントがこう言ってんだ! いつかは絶対に売れる!」

「本当に良いと思ったのか? 銅貨五枚で売ってくれるとしたらブレントは買うか?」

「銅貨五枚――は……レスリーさん申し訳ございません。いりませんね」

「おーいッ! 銅貨五枚でもいらねぇのかよ!」


 本当に申し訳なさそうにしているブレントと、ぬか喜びさせられたレスリー。

 その対比が面白く、思わず笑ってしまう。


「店を大きくして客を増やし、いつか買ってくれる人が現れるといいな」

「ブレントでもいらないって判断をされると、なんだか一生売れない気がしてきたわ! と、に、か、く、俺のアイテムの話はするな! 分かったな、ジェイド!」

「話のネタになるし良いと思うがな。お客さんもたまにあのアイテムを見て笑っているし」

「駄目なものは駄目だ! 一つでも売れるまでは禁止!」

「……まだ一つも売れてなかったんですね」


 朝からそんな会話をしつつ、楽しい気分で一日を始めることができた。

 せっかく早めに来たのに魔道具制作に着手できなかったのは痛いが、ブレントと距離を近づけれたことだし良しとしよう。



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