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【完結】勇者殺しの元暗殺者。~無職のおっさんから始まるセカンドライフ~  作者: 岡本剛也
第5章

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第166話 成長


 一応周囲に何もいないことを確認してから、諸手を上げて喜んでいる二人の下まで歩く。


「ちゃんと見てたぞ。よく倒すことができたな。戦闘の内容も完璧だった」

「えへへ! テイトがディープロッソを完璧に防いでくれたのが大きかったです! そのお陰で僕は動きと攻撃パターンを見ることができましたので!」

「トレバーの初撃も良かったですよ。それに動きを見たからといって対応できるかは別問題な訳で、以前のトレバーなら動きを読むなんてことはできていませんでしたから」

「テイトの言う通りだな。攻撃を完璧に防いだテイトも素晴らしかったが、短い時間でしっかりと対応したトレバーも良かった。どちらか一方のお陰って訳ではなく、二人共に最高の戦いをしてみせた」


 俺がそう褒めると、トレバーは目に涙を浮かべながら嬉しそうに笑った。

 短期間で驚くほど強くはなったが、涙脆い部分はあまり変わっていないようだ。


「本当に頑張ってきて良かったと、身に染みて感じてます! 自分が強くなるために鍛錬を積んできましたが、ジェイドさんに褒められるとやっぱり嬉しいですね!」

「でも……私はまだまだ満足していませんよ。西の森で一番強いと言われる魔物は倒せましたが、多分一人ではまだ倒せませんから。以前戦ったベノムマンティスですら無理だと思いますし、もっともっと強くなります!」


 テイトも頬をひくひくとさせて嬉しそうにはしているものの、トレバーのように手放しで喜ぶ姿は見せない。

 ディープロッソを倒しても高い目標を宣言しているし、浮かれることなく切磋してくれそうだ。


「ああ。俺ももう少しだけ指導を続けるつもりだ。せめて俺に一撃くらいは浴びせられるようにならないとな」

「確かに! 僕達、まだ一発も攻撃を当てられていませんもんね! ディープロッソで満足はしていられないのか!」

「そういうことだ。それじゃ素材となる部分を剥ぎ取ってから、街に戻るとするか」

「あの……。感覚が良い内にもう一体倒したいんですけど駄目でしょうか?」

「駄目というか厳しいな。ディープロッソは群れる魔物ではないし、縄張り意識が強くて付近にいることは滅多にいない。俺でも探すのに数時間はかかるから、戦うとなったらかなりの時間がかかるぞ」


 ベノムマンティスの時と同様にすぐに戦わせてやりたい気持ちがあるが、ディープロッソと戦うとなると難しいものがある。

 それに前回は失敗を経験し、今回は大成功を経験できたというのもバランスが取れているし、このまま戻るのが精神的にも好ましいはずだ。


「そうなんですね……。すぐに戦いたかったところでしたが、それなら無茶は言えません」

「僕も戦いたかったですけど、いないなら仕方ないですね! 早く帰りましょう!」


 落ち込んだ表情を見せたテイトとは対照的に、花が咲くような笑みを見せたトレバー。

 口ではこう言っているが、絶対に戦いたくなかったというのが表情から分かる。


「ご飯にも行く予定だしな。今日はもう戻って昼食を取るとしよう」

「ディープロッソとの戦闘で忘れてたけど、ご飯の約束をしてたんだった! 早く帰ってご飯を食べましょう!」

「そうですね。素材を剥ぎ取って戻りましょうか」


 大量の血を流して死んでいるディープロッソから、高値で売れそうな部分を剥ぎ取り、死体をしっかりと処理してから西の森を後にした。

 片道二時間で一戦だけというのは非効率にも思えるが、相手が相手なだけに二人にとっては今後の糧になる戦闘が行えたはず。


 自信をつけることができただろうし、成果としては万々歳の結果。

 さてお腹も減ってきたし、早いところ街に戻るとしようか。



 ディープロッソを狩ってから街へと戻ってきた俺達は、一度解散してから再集合することとなった。

 小川の水を使って血を流したはいいものの臭いまでは落とせなかったため、一度風呂に入らせてから『パステルサミラ』に向かう。


 テイトも血は浴びていなかったものの、ディープロッソの獣臭がしていたからな。

 あの臭いをさせたまま飲食店に行くのは気が引けてしまう。


「ジェイドさん! お待たせしました!」

「臭いはちゃんと落とせたか?」

「はい! 服も変えましたしバッチリです!」


 先に戻ってきたトレバーの臭いを嗅いでみたが、確かに完璧に落ちている。

 これならば問題ないだろう。


 それからテイトが戻ってくるのを待っていると、遠くからこちらに向かってくるテイトと……小さな女の子の姿が見えた。

 あれは確か、妹のケイトだったはず。


「ジェイドさん、遅くなって申し訳ありません」

「いや、別にそこまで待っていないぞ。それより……」

「はい。どうしてもついていきたいと駄々をこねられてしまいまして、一緒に連れていってもいいですか?」

「もちろん構わない」

「ありがとうございます」

「……ありがとぅござぃま」


 恥ずかしがっているのか声が聞こえづらかったものの、ありがとうと言ったことは分かった。

 以前、闇市で見た時は元気に手を振ってくれた気がするのだが……。


 こうしてしっかりと対面すると色々と違うものなのだろうか。

 何はともあれ、お腹も空いたし早く『パステルサミラ』に向かうとしよう。



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