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【完結】勇者殺しの元暗殺者。~無職のおっさんから始まるセカンドライフ~  作者: 岡本剛也
第5章

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第164話 努力の才能


 自信満々だったため、どれくらいできるのか楽しみにしていたのだが……。

 トレバーとテイトは地面に寝転んだまま肩で息をしている。


 動きは格段に良くなっていたものの、俺に攻撃を当てるまでには至っていない。

 アバルトや直近でシャパル達と戦闘を行ったということもあり、やはりどこか物足らなさがある。


 前回はフィンブルドラゴン。

 今回は『都影』との激しい戦闘後だったため、俺の動きがキレている上に比較対象が強敵なのは可哀そうだが、こればかりは仕方がないこと。


「ぜぇー、はぁー……。な、なんかまた強くなっている気がする!」

「はぁー、はぁー。明らかに強くなっていますね。前回は元々強いからと納得していましたが、動きのキレが絶対に増しています」

「ただでさえ強いのに、僕達以上の成長速度ってあるんですか!?」


 二人肩を並べながらそんなことを話しているが、俺は決して強くなっている訳ではない。

 暗殺者としての実力が戻っているだけであり、以前までの俺が不甲斐なかったと言える。


「またしても攻撃を当てることはできなかったが、二人共に成長しているのはよく分かった。特にトレバーは頑張っているな」

「えっ!? テイトじゃなくて僕ですか?」

「テイトは元々戦闘の才能があった。逆にトレバーは戦闘の才能がない中、よくテイトについていっていると思う」

「え、えへへ。なんと言いますか、直球で褒められると照れてしまいますね!」


 トレバーはおどけた感じを見せているが、本当によくやっていると思う。

 変な顔の泣き虫って印象しかなく、テイトにおんぶに抱っこの状態になることも想像していたが、ちゃんと正当に強くなってきている。


 動きも見違えるほど良くなっているし、何より思い切りの良さがいつまで経っても失われない。

 大抵の人間は怖い経験をすると良い意味でも慎重になるものだが、トレバーは一切変わらずに攻め込んでくる。


 これを突き詰めることができれば、相当な武器になると俺は感じた。

 戦闘の才能はなかったものの努力できる才能を持っていて、そこに持ち前の強靭なメンタル。

 俺の最初の想像とは裏腹に、冒険者としては大成するかもしれない。


「実際にトレバーに助けられる場面は多いです。小心者なのに魔物と対峙した時は一切ビビりませんからね」

「それはテイトがサポートしてくれるって分かっているから! 一人ならすぐに逃げてる!」

「信頼できているのは良いことだな。良い相乗効果が生まれているみたいだし、二人を組ませて良かったよ」


 それから模擬戦について気になったことを話した後、二人の体力が回復をしたのを確認してから移動を開始した。

 前回に引き続き、今回も西の森で実戦訓練を行う。


 『ハートショット』の材料とやらを探す片手間に、二人の実力に見合った魔物の捜索も行っていた。

 西の森でも屈指の魔物であるベノムマンティスと戦ったわけだし、今回は更なる難敵を見つけてきた。

 森の奥の方に生息しているため移動には少しだけ時間がかかるが、格上相手でないと意味がないからな。


 その目的の魔物の場所へ向かうため、既に全容を把握している西の森を進むこと約二時間。

 その魔物が生息している付近に到着した。


「着いたぞ。この付近に今回戦ってもらう魔物がいる」

「大分深いところまで来ましたね! 一体何と戦わせるつもりなんですか?」

「何だかんだ教えてもらえずここまで来てしまいましたし、私も気になります」

「もうそろそろ見えてくるだろうしいいか。今回戦ってもらうのは……ディープロッソという魔物だ」

「ディープロッソ!? 僕でも知っている魔物ですよ! 確か、西の森で一番危険とされている魔物ですよね?」

「ああ。ディープロッソを倒すことができれば、実質西の森の魔物を全て倒せるということになる」


 そう。今回二人に戦ってもらう魔物は、あのディープロッソ。

 ヴェラと一緒に西の森に来た時に襲われた魔物であり、俺が一撃が屠った魔物。


 あの時のディープロッソはゴブリンキングの影響で弱っていたが、今回戦うディープロッソは体調万全の個体。

 ベノムマンティスと良い戦いを繰り広げた二人にとっては、申し分ない魔物と言える。


「私達二人だけで倒せるんですかね? 剣が通らないと聞いたことがあります」

「そんなことはない。確かに毛が硬い上に剛毛。皮膚も分厚く、その下には脂肪それから筋肉と鉄の鎧なんかよりも硬いが、連続で斬りつければ刃は通る」


 これは実際にヴェラがやっていた戦い方。

 同じ個所を何度も攻撃することでディープロッソを斬ることが可能というのは、俺が実際に見ている。


 それに目や口からも攻撃は通すことも可能だし、絶対に勝てない相手ではない。

 二人の実力ならば、互角の戦いを挑むことができるはずだ。


「連続で斬りつければって言っても、堅いだけじゃなくて強いんですよね?」

「俺の三倍くらいはある魔物だからな。弱い訳がない」

「そんな相手に連続で斬りつけられるんですか?」

「そこは工夫次第だろ。二人のコンビネーションを見せつけてやれ。それに、俺がいる限り死ぬことはないから大丈夫だ」

「うぅ……わかりました! ディープロッソに僕達の力を見せつけます!」

「ですね。死なないと分かっているなら、戦わない手はありません。せっかくの機会ですので全力をぶつけます」


 名前を聞いて萎縮した様子を見せていたが、どうやら覚悟が決まったようだな。

 それじゃ――ディープロッソをこの場まで誘き出すとしよう。



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