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【完結】勇者殺しの元暗殺者。~無職のおっさんから始まるセカンドライフ~  作者: 岡本剛也
第4章

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第156話 捕縛


 この研究員から聞けることはこんなものだろうか。

 ほとんど何も知らされず、ひたすらに『ハートショット』という違法ドラッグを作らされ続けていたみたいだし、聞き出せる情報がかなり限られている。


「とりあえずここがどんな施設で、お前達が何をしていたかは分かった。情報提供感謝する」

「……てことは、俺達を解放してくれるのか?」

「いや、まだこの製造部屋に留まってもらう。レッドを捕まえるのが俺の目的だから、レッドが現れるまではここから出す気はない。レッドはどれくらいの頻度でここに来るんだ?」

「最近は何かあったのか、ほぼ毎日来る。夜が更けてからが多いから、まだまだ来ないと思うぞ。……殺さずにはいてくれるんだな?」

「ああ。情報を話せば殺さないという約束だからな」


 “約束”したことに関しては、どんなことがあろうと必ず守る。

 これは暗殺者ではなくなったからではなく、暗殺者の時からそうだった。


「それなら一安心できる。俺達は、もう『ハートショット』の製造は行わないと誓わせてもらう」

「生きてここから出られたのなら、そうするのが賢明だ。次、別の形で俺と出会った場合は――必ず殺すからな」


 俺の言葉に対し、この場にいた研究者全員が生唾を飲んだ。

 今までの脅し文句ではなく、本心からの言葉だけあって響いてくれた様子。

 それからレッドが現れるまで俺は研究者たちと共に、『ハートショット』の製造部屋でただ待ち続けた。



 ほぼ無言の状態で待つこと数時間。辺りが暗くなってきたぐらいの時間だろうか。

 そんなタイミングで製造部屋の上から何やら物音が聞こえ始めた。


 無言で研究者のリーダーに合図を送ると、激しく首を縦に振った。

 想定していた時間よりも大分早かったが、どうやらレッドがやってきたようだ。


 音を聞くために開けていた上へと繋がる扉を静かに閉め、カモフラージュとして研究者たちには作業を行ってもらうことにした。

 俺は製造部屋に隠れ、レッドがこの部屋に入ってくるのを息を殺して待つ。


 聞こえた足音は二つ。

 先ほど北の富裕層エリアで予想していた通り、レッドは護衛を一人だけに絞って気配で悟られないように行動していた。


 本当に慎重であり、良い意味で臆病な性格。

 そして、頭のキレる人間であることに間違いない。


 戦闘能力が皆無だからといって決して油断せず、確実にレッドを捕まえる。

 護衛の一人は一度無視し、動けなくさせるだけのダメージをレッドに与える――そう頭の中で復唱しながら待っていると、先ほど閉めた上へと繋がる扉が開いた。


 先に下に降りてきたのは、身のこなしからして護衛。

 レッドはすぐに下りてくる気配がなく、絶対に見つかることがないであろう製造部屋であろうと、安全が確保されるまで入ってこないという徹底ぶり。


「何か臭うが……気のせいか?」

「臭いですか? 先ほど麻袋を破いてしまったことが関係していますかね?」


 完璧に気配は消しているが、この部屋に侵入した時にできたであろう微妙な違和感までは消せない。

 臭いで勘付かれるとは思っていなかったが、研究者のリーダーは俺を庇ってくれた様子。


 俺が隠れていることを伝えられていたら即戦闘。

 上にいるレッドには逃げられていたかもしれなかったため、隠してくれたのは本当に助かった。


 怪しいと思ったが研究員の発言で大丈夫と判断したようで、上に待機していたレッドを中に引き入れた護衛。

 ゆっくりと下へと降りてきた人物は、やはり前回尾行した時に見た黒服のスラッとした男。


 すぐに逃げられない位置まで入ったのを見計らってから、俺は飛び出してレッドの下へと向かった。

 高速で近づく俺に対してレッドは一切反応できておらず、すぐに気づいた護衛が攻撃を行ってきたが――安全と判断していたこともあって、完璧にカバーし切れる位置に立てていない。

 

 俺を止めるための中途半端な護衛の攻撃を軽く躱しつつ、『ハートショット』を製造するためのマジックアイテムを蹴散らしながら、レッドの懐へと潜り込んだ。

 激しい物音によって、ようやくレッドが俺の存在に気が付いたようだが――もう遅い。


 抉り取るように放ったボディブローが、レッドのみぞおちに完璧に決まった。

 呼吸することができずに蹲ったレッドに対し、追撃で両足を踏みつけてへし折る。

 そのタイミングでようやく護衛が俺に追いつき、まともな攻撃を打ち込んできたがレッドは逃げられる状態にはないため、これでゆっくりと護衛と対峙することができる。


「……う、うっぐ、うぐ……。い、い、息が……で、できな」

「落ち着いてください。蹲らずに胸を張るんです」

「……あ、あ、足も、やら、れた」

「俺がこの襲撃者を殺します。ですので、落ち着いてまずは呼吸を整えてください」


 慌てるレッドに対し、非常に落ち着いた声音でそう話しかけた護衛。

 自分で言うのもアレだが、俺と護衛とでは実力がかけ離れている。


 戦闘能力はアバルトにも及ばず、せいぜい先ほど戦ったとフォラスと同程度の力しかないのはさっきの攻撃で分かった。

 護衛も俺を殺すと口では言っているが、どうにかレッドを逃がす算段を立てようとしているはず。

 実力差があれど、捨て身の策でも講じられたら分からないため、思考させる間もなく俺から攻撃を開始するとしようか。



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