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【完結】勇者殺しの元暗殺者。~無職のおっさんから始まるセカンドライフ~  作者: 岡本剛也
第4章

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閑話 新しいアジト


 『ブラッズカルト』のお陰で順調に事が進んでおり、新しく建設したアジトにはかなりの数の構成員がいる。

 大半は元チンピラや冒険者崩れだが、『ブラッズカルト』が恐怖政治を敷いてくれているお陰で統率だけは取れている状態。


 俺の手も煩わせることもなく非常に快適ではあるが、やはり能力不足は否めないのが難点。

 馬鹿ばかりなため仕事は常人の半分しかできず、かと言って戦闘能力に長けているかと言えばそういうことではない。


 本当に気性が荒いだけのゴミばかり。

 本部に要請したお陰で使える人材がちょくちょくとやってきているため、なんとか回ってはいるが……どうにかしないといけないな。


 注意を惹くという意味でチンピラや冒険者崩れには、使い捨て覚悟で派手に暴れてもらうのもアリかもしれない。

 強盗や窃盗、恐喝なんかで雑に金を稼いでもらいつつ、こっちのアジトに注意を向かせる。


 体勢が整うまでの間に色々な方法を考えてきたが、使えなさ加減を見るにこれが恐らくベスト。

 現状からそう判断した俺が『ブラッズカルト』の面々に伝えて、行動に移そうと思った丁度その時――凄まじい衝撃音がアジト内に響き渡った。


 瞬時に襲撃が来たのだと認識し、俺の部屋のすぐ外に待機させているアバルトを中に招き入れる。

 俺の身を最重視し、すぐに逃げようとしたのだが……この衝撃音を発した正体が襲撃者でないことが聞こえてきた声で分かった。


「おーい! ケリー!!! 俺様が来てやったぞ! 出てきやがれ!!!」


 無駄に大きい声で俺の名前を叫んだ人物。

 頭に響くようなこの声は忘れたくても忘れることはできない。


「アバルト、警戒を解いていいぞ」

「いいのですか? 敵意を剥き出しのようですが」

「あれがデフォルトだから気にしないでいい」


 部屋に入れたアバルトにそう伝え、俺は一人で部屋から出る。

 そして、アジトにやってきた大柄の男に声をかけた。


「誰かと思ったがヴァンダムか。随分と遅かったな」

「よお! 失敗したってのに、随分と偉そうじゃねぇか!!」

「俺が失敗した訳じゃない。部下が失敗したんだ」

「んなもん一緒だろうがっ!! そのせいでわざわざ俺がこんなところまで来てやったんだぞ!! 礼の一つくらい言ったらどうだなんだ? あ!?」


 ヴァンダムは一階の玄関。

 対する俺は二階から奴を見下ろしている状態なのだが、圧が凄まじく目の前で怒鳴られている感覚に陥る。


 実際に奴の攻撃の範囲内であり、攻撃の意思があれば一秒も持たずに俺は殺される距離なため、俺のこの感覚に狂いはない。

 戦闘能力を持たない俺にとっては臆病なのは重要な能力であるため、この感覚を大事にすると再確認しつつ、キレているヴァンダムを宥めるために頭を下げた。


「すまない。俺が不甲斐ないせいで手間をかけさせたな。わざわざ来てくれて助かった」

「まずはその対応が普通だろうがッ! ――上から何か言われようが、お前の腕の一、二本へし折るくらいなら躊躇なくやるからな!!」

「ああ、分かっている。とりあえず部屋を用意してあるから休んでくれ。仕事の話は明日しよう」

「ケリー、女と飯は用意してあるのか!?」

「この街で一番質の高いものを用意してある」

「なら……許してやろう! がっはっは! 移動で疲れたから楽しみだな!!」


 床が突き抜けるのではと思うほど強く踏み込みながら、自室へと向かって行ったヴァンダム。

 感覚としては言葉がギリギリ通じる猛獣。

 逆鱗に触れないように下手には出つつ、戦闘能力だけは長けているヴァンダムを上手く利用してやる。

 

「中々に厄介な人物を招き入れたのですね」


 振り返るといつの間にかにアバルトが背後に立っていた。

 警戒していたのに気づかなかったため、少しだけ心臓が高鳴る。


「この街には“何か”があるからな。馬鹿で気性も荒いが戦闘能力は随一。リスクを承知でヴァンダムを呼んだ」

「良い判断だと思います。ヴァンダムという人物には、『ブラッズカルト』の面々でも一対一なら勝てるものはいません。それにジーンがやられたことを考えても、“何か”がいることは間違いありません」

「同じ考えで良かった。ヴァンダムの件で更に迷惑をかけると思うが、目的を達成するまでは引き続きよろしく頼む」

「もちろんです。ジーンの失敗を取り返すために全力を尽くさせてもらいます」


 変なタイミングでヴァンダムが来たせいで作戦に大きくズレが出そうだが、注意を惹いてくれるのであればヴァンダムが暴れたとて構わない。

 失敗がないよう状況を大きく見ながら、『ハートショット』の製造を推し進めていくとしよう。



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