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【完結】勇者殺しの元暗殺者。~無職のおっさんから始まるセカンドライフ~  作者: 岡本剛也
第3章

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第100話 後悔


 レスリーが売り場の方へと戻り、ニアが飯を食っている姿を眺めながら待っていると、十分ほど経ってからようやくヴェラが姿を見せた。

 言葉を交わさずとも疲れきっているのが分かり、客への対応に追われていたのが分かる。


「大分お疲れの様子だな。今日は客が多いのか?」

「めんどい客がいただけで普通くらい。はぁー、魔道具作りに専念したい。……それで休日なのに何の用?」


 ただでさえ喜ぶ姿を想像できないのに、機嫌が悪いとなったら厳しい。

 この状況でプレゼントの件を切り出したくないのだが、マットが大きすぎるし別の機会というのはありえない。


「ニアやレスリーにも渡したんだが、ヴェラにもプレゼントを買ってきた」

「……もしかして背負っている奴?」

「そう、布団の下に敷くマットだ。睡眠の質が向上するだろうから使ってくれ」


 案の上、なんとも言えない微妙な表情をしているように見える。

 本当に今更だが、マットじゃなくて枕にした方が渡しやすいし良かったかもしれないな。


「嬉しいけど、持って帰るの面倒くさい。家まで運んでおいてほしい」

「いや、流石に自分で持って帰ってほしいんだが」

「え? 背負って帰れってこと? ジェイドは背負えているけど、私は地面に着くと思うけど」


 冷たい目を向け、淡々と自分で持ち帰りたくない理由を言ってきた。

 確かにマットが地面に擦る可能性も高いだろうし、持って帰るのは非常に億劫だろうが、俺が今から一人でヴェラの家まで運ぶというのも少し違う気がする。


「……分かった。今日はひとまず置いておいて、次にヴェラの家で話し合う時でいいか?」

「それまで何処に置いておくの?」

「この物置か、俺の部屋」

「えー、嫌。マットが臭くなりそう」


 臭くなりそうだから嫌って、本当にとんでもないな。

 マットをヴェラに買ってきたことを早くも後悔しつつも、どうするかを尋ねることにした。


「なら、どうすればいいんだ? 他に置く場所なんてないぞ」

「だから、今すぐに持って行ってほしい。それか私が仕事を終わるまで待つか」

「今すぐに? 家には誰もいないんじゃないのか?」

「今日は父さんが休み。兄も恐らくいる」


 母親ならまだしも、ヴェラの父親がいるなら絶対に行きたくない。

 かと言って、ヴェラの仕事が終わるまで待つってのも絶対に嫌だ。


「大丈夫。そのマットだけ置いて、すぐに帰れば何もない。朝にやってる配達と一緒」

「……窓からこっそり侵入してってのは駄目か?」

「駄目」


 究極の二択だが、せっかく買った訳だしこうなったら届けるしかない。

 ヴェラの言う通り、いつもの配達の要領でマットをヴェラの家まで届ければいいだけだ。


「分かった。届ければ使ってくれるんだろ? せっかく買った訳だし、届けるから使ってくれ」

「うん、ありがとう。大事に使う」


 ヴェラはにっこりと笑顔を見せてお礼を言ってから、売り場へと戻っていった。


 …………今思ったが、ヴェラが笑ったのを初めて見たかもしれない。

 やはり無表情よりも笑顔の方が、可愛らしいし好印象を持つ。


 元の顔立ちが整っているんだし、いつも笑っておけばもう少し抱く印象も変わると思うんだが……。

 まぁ常に愛想の良いヴェラなんて気持ち悪いな。


 笑顔も見れて、感謝の言葉も言ってもらえたし、気を取り直してヴェラの家へと向かうか。

 父親がおらず兄だけがいることを願いながら、俺は『シャ・ノワール』を後にしてヴェラの家へと向かった。



 近いこともあってすぐにヴェラの家へと辿り着き、大きく深呼吸をしてからベルを鳴らす。 

 開錠し、扉を開けたのは――ヴェラの父親。

 俺の願いは届かず、ちゃんと父親が家にいたようだ。


「お、お前はッ!? ――この間家に来ていた奴じゃないか! ヴェラはいないぞ! 一体何しにきた!」


 唾を飛ばしながら、頭の血管が切れるのではないかと心配になるほどの声量で怒鳴ってきた。

 やっぱりヴェラとは似ても似つかない性格。

 母親もそうだったし、本当に親子なのか疑ってしまうほど元気だな。


「荷物を届けにきたんだ。中に上がらせてくれ」

「ぜ、絶対に駄目だ! 俺の家に一歩たりとも入れさせはせんぞ!」


 両手を広げ、絶対に入れさせないという意思を全身で見せてきた。

 知人の親の悪口を言いたくないのだが、なんというか非常に鬱陶しい。


 年齢も俺と同じか、ちょっと年上ぐらいだと思うんだが……。

 俺も娘を持ったらこうなってしまうのだろうか?


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