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【完結】勇者殺しの元暗殺者。~無職のおっさんから始まるセカンドライフ~  作者: 岡本剛也
第3章

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第95話 魔石選び


 午前中に今日の分の配達を終わらせ、早朝に選んだ店へと向かった。

 大通りにあった魔石の専門店『ラウビア』。


 魔石の売っている道具屋を探していたのだが、まさかの魔石専門店を見つけた。

 相場もどんな魔石が良いとかも全く分からないが、専門店があるのであれば専門店一択。

 他の道具屋は無視し、魔石専門店『ラウビア』に足を踏み入れた。


 中は武器屋に近い内装をしている。

 手前が安い魔石が乱雑に置かれていて、奥に進むにつれて透明で頑丈なショーケースに入れられた高価な魔石が売りに出されていた。


 やはり目がいってしまうのはショーケースに並べられた高価な魔石で、俺は吟味するようにショーケースに飾られた魔石を目利きしていく。

 宝石のように綺麗な魔石や、四元素の魔石とは違う特殊な属性の魔石なんかも売られている。


 色々なアイデアを考えていた身としては、闇属性や光属性の魔石も気になるし、音属性や雷属性といった実用性の高い魔石も気になった。

 ただショーケースに飾られているだけあって、どれも高価で購入は厳しい。


 闇と光に関しては一つで白金貨一枚と、破格の値段がつけられていた。

 いつか稼いで買ってみたい気持ちもあるが、白金貨一枚稼いで購入するぐらいなら自分で見つけた方が手っ取り早そうでもある。


 そんなことを考えながらショーケースを一通り見終え、なんとなく魔石の相場や良いとされている魔石の判断軸ができた。

 四元素以外の属性は基本的に高価で、四元素の魔石で高価なものは第一に色合い。


 宝石と似た扱いなのか、魔石の持つ魔力保有量よりも見た目の綺麗さで値段が高くなっている印象を受けた。

 もちろん色合いの良い魔石は大抵保有している魔力量も多いのだが、くすんでいる魔石から魔力量の多い魔石を餞別することは可能なはず。


 まさか、こんなところで魔力感知の能力が活きるとは思っていなかったな。

 一般人として生活してみて思ったが、必要のない能力なんてないのかもしれない。


 暗殺者として学んだ技術や経験が全く関係ない場所で活かせているし、過去は辛い思い出でしかなかったが、今は経験しておいて良かったと思えていることが幸せ。

 環境次第で考え方もこれだけ変わるということを実感しつつ、俺は店の前に雑に置かれた安価の魔石の餞別を始めた。


 属性ごとに分けられた大きな箱に入っている魔石を手に取り、一つ一つ餞別を始めていく。

 どれも低級属性魔石として同一の商品として売りに出されていることもあってか、俺の他に属性の魔石を餞別している人はいない。


 ただ、一つ一つの魔力保有量は確実に違うため、見比べながら魔力を多く含んだ火属性の低級魔石を十個選んだ。

 時間をかけて選んだ甲斐があって、どれも魔力を多く含んだ良い魔石。


 同じように風の低級魔石も十個選び、これで実験用の魔石は十分だろう。

 俺が目利きして購入すれば質の高い魔石を選べることも分かったし、質の高い低級魔石の基準も分かった。


 学びの多かった買い物に満足しつつ、二十個の低級魔石をかごに入れ、勘定場へと持っていく。

 片眼鏡をかけた何処か胡散臭そうな店主が立っており、少し躊躇ったがかごにいれた魔石を渡した。


「これを購入させてほしい」

「かしこまりま……ん? 少し見てもよろしいですか?」

「ああ。まだ店の物だしな」


 胡散臭い店員は買い物かごに入った魔石を見るなり、一個一個じっくりと片眼鏡を通して確認し始めた。

 なんだか悪いことをしている気分になるが、禁止事項として書かれていなかった訳だし犯罪ってことはないはず。

 少しだけ動揺しつつも、店員が確認を終えるのを待っていると――急に俺の方を向き直してきた。


「うーむ……どれも低級魔石にしては最高のものを選んでいますね。こんなことを聞くのは失礼だと思いますが、どうやってこの魔石を選んだのですか?」

「良いと思った魔石を選んだとしか言いようがない。もしかして選ぶのは禁止だったりしたか? そうだとしたら謝らせてもらう」

「いえいえ。決してそんなことはありません。四元素の低級魔石は一律で同じ額ですので、より良い物を選ぶのは当たり前のことです。……ですが、全てが質の高いものばかりでしたので、少し気になってしまったのです」

「大丈夫なようなら良かった。質問に上手く答えられずすまないな」

「不躾な質問をしたのは私ですから、謝らなくて大丈夫です。それでは金貨六枚頂きますね」


 魔石専門店だけあって、店員も魔石の良し悪しが分かるんだな。

 選ぶのが大丈夫ということなら良かったが、選り好みしすぎるのもあまりよくないのかもしれない。


「はい、ちょうど金貨六枚頂きました。また利用してくだされば嬉しいです」

「ああ。魔石を使う機会が増えそうだから、また来させてもらう」

「ありがとうございます。……お名前を窺ってもよろしいですか?」

「『シャ・ノワール』で働いているジェイドだ」

「ジェイド様ですね。私はこの店のオーナーのゲンマと申します」

「オーナーだったのか。道理で魔石に詳しい訳だ」

「小さな店ですので、こうして接客もやらなくてはいけないのですが……」


 ゲンマはそう言うと、恥ずかしそうに頭を掻いた。

 小さいといっても大通りに店を構えている訳で、確実に『シャ・ノワール』よりも客は入っている。

 ショーケースに入れられた魔石は高価だったし、詳しくないものを働かせたくないってだけで相当儲かっているはずだ。


「オーナーと知り合えたのは良かった。また必ず来させてもらう」

「私は基本的にお店にいますので、来店された時はぜひお声掛けください」


 ゲンマと軽い挨拶を済ませてから、俺は『ラウビア』を後にした。

 いきなりオーナーと知り合えたし、色々な発見もできたから実りある買い物だった。

 さて、すぐに戻ってヴェラと話を進めていくとしよう。


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