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転生魔王の配信生活  作者: 白神 怜司
第三章 『魔王軍』始動
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おいでよ、魔法の世界へ Ⅰ




 レイネいわく、トモとユイカ、このみんにバレているという私の力。

 当然ながら私からは特に何も言っていない。


 というかレイネ、なんで私の交友関係知ってるの、って思ったけど……まあ、レイネなら私の近くにいる存在ぐらいはマークして背後を洗うぐらいはするよね、うん。

 その程度の事には驚かないよ。だってレイネだし。


 ともあれ、どうしようか。

 単純に魔法や魔力の存在を伝えるっていうのは、別に私としても構わないと言えば構わないんだよ。

 共犯……げふん、理解者がいれば魔法を使っていても誤魔化せるようになるかもしれないし、単純に私にとっても色々と楽と言えば楽なんだよね。


 前世については、まぁ言うつもりはないかな。

 これについてはベースとなるのが〝前世の妾〟か〝今生の私〟か、なんて話にもなりかねないし、複雑に考えても仕方のない迷いみたいなものを抱えさせる必要もない。


 ぶっちゃけ、私は私でしかないからね。

 そりゃあ性格を形成した時期によって考え方や価値観、根底の部分は左右されるかもしれないけど、私の場合は〝今生の私〟が前世を思い出した、というものだし、変わりようがない。


 ……いや、うん。

 我ながらこう、遠慮とかそういうものがなくなったとは思うけど、それはそれ。


 あー、どうしようかなー、教えちゃった方がいいかなー……。




 ――――そんな事を悶々と考えている内に、明けて翌日。




 相変わらず熱気の凄まじい夏の陽気。

 行き交う人々は汗だくになりながらハンドタオルで汗を拭ったり、日傘で太陽を避けたりしている。


 よくもまあ、魔法もないのにこの炎天下の中を出歩くよね……。

 いや、私だって去年まで――というか、記憶を取り戻すまでは普通に気温と付き合って過ごしてきてたけど、必要最低限しか外に出なかったもの。


 基本的に家で過ごす、オンラインで完結する社会の、なんと素晴らしいことか。

 買い物は通販、お腹が空いてどうしようもなければ宅配。

 引きこもっていても不便ではない社会で良かった。


 ちなみに、記憶を取り戻してからは買い物とかも服はなるべくお店に行って買うようにしている。

 通販で買えなくはないんだけど、そういうのは多少はサイズ感が合っていなくてもいいような服だけだね。


 ほら、お店独自のサイズ設定みたいなのってあったりするから。

 細かい採寸はレイネがしてくれるからどうにでもなるんだけど、自分にどういう服が似合うのかとかは私もいまいちよく分かっていないし。


 でも、結局考えるのが面倒くさくなって無難なものを選んじゃうんだよね……。

 ほら、背伸びして似合わなかったらダメージ大きいから、無難なのでいいやってなるんだよね。

 だから普段はレイネと一緒に買ってたりする。


 今日はユイカとトモ、このみんと一緒にショッピングモールで買い物しようっていう話になっている。


 駅前で数年前から大規模なショッピングモールを建てるって事で工事していたんだけれど、そこがこの春に完成したんだよね。

 人気ブランドのお店とかもいっぱい入っていて、よく学校の人達なんかも帰りに立ち寄ったりしているらしい。


 で、そこで水着を買おう、という話になっている。

 ついでに服とか、夏用のアクセとかも見たいね、って話。


 そんな訳で、私は姿を消して空を飛び、そのままショッピングモールの立体駐車場屋上に着陸。

 誰もいないカメラもない場所を確認して認識阻害を解除して、そのままエレベーターで直接施設内に入って、待ち合わせ場所になっている全国チェーンのカフェに向かう。


 んー、やっぱり視線が多い。

 髪色、目の色といった見た目からして日本人とは全然違うし、目立つんだよね。

 そのせいかさっきから行き交う人がちらちらとこっちを見てくる。


 ホワイトブリーチ? いいえ、地毛ですが、何か?

 あと外人って言い方やめなさい。失礼でしょ。


 そんなこんなでカフェ到着。

 呪文詠唱よろしく長い名前の飲み物を指差して注文。


 飲み物を受け取り、周りを見回すと――あ、いた。

 トモとユイカがこっちに手を振ってるのを確認して、そっちに向かって歩いて行く。


「やほやほ」


「おつー。つかリンネ、遠くから見ても超目立つね。ガッコで見るより目立ってる気する」


「ホント。その髪もそうだけど、なんかオーラがヤバい」


「オーラ?」


「そそ。なんかこう、もう声をかけるなんて恐れ多い、みたいな?」


「なにそれ」


 おかしなのに絡まれるよりはいいし、実は意図的なんだよね、それ。

 魔力を纏っているものだから、普通の人間から見れば近寄り難く、まるで威圧されているようにも思えるようになる、っていうのは私も理解している。


 実際、魔力をコントロールしようともしないまま前世で人間と遭遇した時なんて、すっごい怖がられたもんね……。

 人様の顔を見るなり「ひぃ……ッ!?」って本気で腰を抜かして涙を流してあまつさえ……うん、細かく思い出すのはやめておこう。


「あ、このみんだ。おーい」


「おはよー。あー、あっつい……」


 トモの声に反応したこのみんが飲み物を手にこちらへとやって来て、私の隣の椅子に腰掛けるなりパタパタと顔を仰いだ。


 ……それ、風量ないんじゃないかな。


「このみん、なんかお嬢様っぽいね、服装」


 このみんの服は半袖のふんわりとした袖が肩から二の腕にかけてかかっている白いブラウスに、赤いタイリボン。ハイウエストの黒に近い紺色のロングスカートで、確かにお嬢様っぽい。


 ちなみにトモは少しだぼっとしている模様の入った白ベースのシャツに、デニム生地のショートパンツにスニーカー。

 ユイカは身体のラインが分かるような少しぴっちりとしたシャツに薄手のパーカーと黒いスキニーパンツで、二人揃って動きやすそうな服装だ。


「いや、私お嬢様って呼ばれるような立場ではあるんだけど……」


「あ、そっか。社長令嬢だもんね」


「そんな呼ばれ方をする程の上流階級って訳でもないけどね。というか、そんな上流階級っぽさで言ったらリンネが一番お嬢様っぽいでしょ……」


「え、私?」


「あー……。なんていうか、リンネはアレなんだよね……。お嬢様っていうか、貴族令嬢的な?」


「わかる」


 いや、確かに今日の私の服装は黒のアシンメトリーワンピースで、当然ながらレイネコーデではある。髪もしっかりと結ってセットしてくれているし。


 でも、別に我が家が上流階級とか貴族階級にあるような家でもないんだけどね。

 別に名家って訳でもないし、そういうパーティーみたいなのに参加する訳でもないし。


「そういえばリンネの家庭の話とか、何も聞いてなかったよね」


「んだねー。家族構成とかどうなってんの?」


「んー、まあその辺の話はあとでショッピング済ませてからでいい? こういう所で話すのもアレだし」


 トモ、ユイカの質問に答えてしまってもいいんだけど、さっきから私達、割と注目されてるんだよね。

 ちらちらと見られているというか、聞き耳立てているような人もいるっぽい。

 そんな中で、お母さんの職業とか家庭環境とかについていちいち公言するっていうのもどうかと思うしね。


「あ、うん、おけおけ。んじゃ、飲んだら早速いこー」


「お昼どうする? 適当にお店探して気になったとこでいい?」


「それで。つか水着買ってどこいく? 海? プール?」


「海はパス。遠いし、変なのいるもの」


「あーね、ナンパとか。盗撮とかも怖いし」


「確かに。プールの方が安全なイメージはあるよねー」


 トモとユイカの矢継ぎ早に続く会話に、このみんもしっかり合わせて乗ってる。

 このみんが海を嫌がる気持ちも分かる。

 夏の海イコール陽キャの溜まり場、っていうのが私の理解だし。

 ノリと勢いで全てが許される、ノリと勢いを理解して当然、みたいなああいうの、私も嫌いだもの。


 ……うん。

 こうして話していて、この3人には魔力とか魔法とか教えてもいいかもなぁ、と思う。


 トモとユイカは見るからに顔やスタイルがいいから変なのに付き纏われたりするかもしれないし、このみんだって明らかにお嬢様な感じではあるし小さくて可愛らしいから、おかしな事を考えるような連中だっているかもしれない。


 万が一、突然何かされた時の自衛の手段とは、後手に回ってなお上回れるような、それこそ相手以上の力でなければ意味がない。

 たとえば力づくで押さえつけられた時、膂力に劣る女子は不利だしね。


 それに、この3人なら変に魔法を使って力に溺れたりはしないだろうしね。 


 ……まあ、おかしな事をしたらその時はどうなるか、釘を差すぐらいはしておこうかな。

 海を割って見せて、「調子に乗って悪用しないようにね」とでもにっこり伝えれば自重ぐらいしてくれるだろうし。


 そんな事を考えつつ、私たちは飲み物を飲み終えて買い物へと繰り出した。





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