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転生魔王の配信生活  作者: 白神 怜司
解き放たれる魔王節
20/201

顔合わせ準備

 なんとなくもやもやとした気分を抱えてはいたけれど、一時間目の授業が終わる頃にはそういう気分もすっかり忘れ……んんっ、気分を切り替える事ができた。


 その日の授業は眠気との戦いに終始した。


 というのも、昨日ユズ姉さんのお土産プレッシャーがあって、そのせいで少し夜に胃もたれというか、胸焼けして眠りが浅かったんだよね。

 さっさと魔法で癒やせば良かったんだけど、眠すぎて身体動かすのも億劫で、魔法を使わずに惰眠を貪ろうとしたせいで眠りが浅かったらしい。


 ちなみに、さすがに今朝は魔法を使った。

 耐えられなかった。

 眠気が消える魔法とか開発しようかな……。


「リンネー、買い物行くんだけどどうするー?」


「ごめん、今日色々と用事あって無理なんだ。また今度で良かったら誘って」


「ん、りょー。トモのアレ(・・)で何を作るか決まったみたいだから、買い物行こうって話になったんだ」


「あ、そうなんだ」


 ユイカとトモはどうやらバレンタインデー準備があるらしい。

 今日は二月九日だし、あと五日しかないもんね。


「あ、そうだ。明日はどう?」


「明日?」


 明日は土曜日だし何も予定は入ってない。

 強いて言えば、できればそろそろお絵描きゲーム配信をしようかなと思っていた所ではあるかな。

 今日はエフィールさん達との挨拶があるし、一回はコラボしようって話になってるからできれば空けておきたいんだよなぁ。


「んーと、今夜連絡するでもいい? 予定が空くか分からなくて」


「おぉ、なんか忙しーね。おけおけ、それでだいじょぶー」


「ありがとう。じゃあ今夜連絡入れるね」


「あいよー、んじゃねー」


 短く言葉を交わしてさて帰宅――と思ったら、じとりとした粘着質な視線を感じた。

 東條、だっけ。

 あれが妙に粘着質な視線をこちらに向けていたかと思えば、今度はその視線が私とは離れた位置にいるトモとユイカに向けられた。


 ……うーん、それでも話しかけてくる気配はないんだよね。

 この前のトモの一件以来、特に私も話しかけられるなんて事はなくなったんだけど、あの視線は何かを企んでいるようにも思える。

 一応、少し警戒を密にしておくようにしておいた方がいいかな、なんて考えつつ、私は帰路についた。




 学校から帰宅。

 すでに時間は十六時になろうとしている。

 一応今日の顔合わせは配信者時間の朝――昼夜逆転が多いらしい――に当たる十七時から開始予定なんだけど、まだ少し余裕があるね。


 ユズ姉さん曰く、十八時からは配信が動き出したりする時間になるらしい。

 なので、できればその時間は他の配信チェックをしたいらしく、かつ配信者が起きていて私に都合のいい時間と考えると、この時間がベストなのだとか。


 たまに配信者の人が昼夜逆転だって話は配信でも聞いてはいたけれど、大体それって朝陽が見えてきた頃になって眠って昼過ぎぐらいには起きているとか、そういう印象だったんだけどなぁ。

 ガッツリ夕方まで寝てたりするんだね。


 ともあれ、この時間は少し小腹が空くので、とりあえず冷蔵庫に入れた抹茶クリームのシュークリームとホットコーヒーを用意。

 ミルクと砂糖はもちろん入れる。ブラックコーヒーは飲めない訳じゃないんだけど、基本的には眠い時専用の飲み物。苦いし。


 制服からラフな私服に着替えてパソコンを起動する。

 スタートアップで起動された『Connect』を確認していくと、ユズ姉さんから今日の顔合わせでの自己紹介は素でいいだとか、色々と注意文が書いてあった。


 あー、うん。

 キャラクターを作って普段から話す訳じゃないものね。

 私の場合、どっちも素と言えるから別にどっちでも構わないと言えば構わないのだけれど、さすがにこっちの世界だと浮くだろうから今の私基準にしている訳だし。


 抹茶シュークリームうまぁ。

 あ、ユズ姉さんからまたチャット届いた。


『学校から帰って落ち着いたら一度チャットもらえる? サーバー作るからそっちに入ってもらったり、色々やってもらいたい事もあるから、時間前に繋がっておきたいのよね』


 あ、そっか。

 そういえば『Connect』ってグループというか、サーバーっていうのを作っていく事でそこに参加しているメンバーだけが見れたり話したりできるようになっているんだよね。


 あの大会の話もあるだろうし、専用のルームは作っておくべきだよね。


『ただいま。一応こっちはもう通話もできるように着替えとかも終わって抹茶シュークリームうまぁってなったよ』


『おかえりなさい。あれ、少し塩気があって美味しいわよね』


 ……塩気?

 この抹茶シュークリームにそれっぽい味なんてないけど……。

 ……あ。


『……ユズ姉さん、それってユズ姉さん涙目になってた時に食べたからそう感じただけなんじゃない? 塩味なんて全然ないよ?』


 ユズ姉さんが抹茶シュークリームを食べてたのって、確かあの泣き出しモードに入りかけていた時だもんね。 


『……そうかも。えっと、とにかく三十分頃になったら通話かけるから、ちょっと待ってて』


『はーい』


 ユズ姉さん、多分今頃思い出して顔赤くなってるんじゃないかな。


 ちなみにお母さんからはユズ姉さんの半泣きシュークリームもぐもぐ画像をお気に入りにしてしまったらしく、どうやら私の写真と分割して待ち受け画面に設定したらしい。

 昔からずっと私とか、私とユズ姉さんの写真とかそういう写真ばっかりだったし、やりそうだなぁ、とは思ったけど。


 ユズ姉さんって今はキリッとしたデキる女、みたいな感じなんだけど、昔は真面目過ぎて何かと一生懸命で、周りから頼られると断りきれなくてパンクしちゃって涙目になっていたり、お母さんに振り回されて涙目になっていたりと、割りと涙目になってしまうのがデフォルトだったらしい。


 そんな顔が可愛くて、たまにいぢめ(・・・)たくなるのだとか。

 鬼かな、お母さん。

 元魔王の今の私の母は鬼だったか。なんか妙に納得できそう。


 とまあ、昨日お母さんがわざわざ電話してきて、写真の感想と一緒にそんな話まで聞かされてしまったんだよね。

 ユズ姉さんに教えたらどんな反応をするのやら……。


 お母さんが帰ってから一緒にいる時に暴露しようね、なんて話になって私もノリノリで返事してしまったので、今は言う訳にはいかない。


 シュークリームもぐもぐタイムを挟んでコーヒーを飲みながら軽くパソコンの設定をいじりつつ最近のエフィールさん達の切り抜き動画を流していると、時間通り『Connect』がユズ姉さんからのコールを知らせる効果音が鳴った。


 ……デフォルトの着信音、なんか不穏なんだよね、このツール。


「もしもーし」


《もしもし、リンネ。聞こえるかしら?》


「うん、大丈夫。こっちも聞こえてる?」


《大丈夫よ。マイク設定も良さそうだし、カメラもバッチリあなたが映ってるわ》


「あぁ、カメラオンのままになってるんだ。消しておく?」


《そうね。箱の内部だけで打ち合わせだったりだと顔も映して顔色とか見たりもするんだけど、あなたは一応は外部だし、お互いのプライバシーの配慮って事でカメラはオフでいいわ》


「へー、そうなんだ。わかった」


 マネージメントもしたりするんだったら、確かにそういう顔出し配慮とかは必要だったりするんだろうね。

 寝起き丸出しだとバレたりするんだろうなぁ……。


《それじゃ早速だけど、サーバーを作ったから先に招待を送るわね》


「ん、了解。お、きたきた。これに参加でいいんだよね?」


《えぇ、そうよ。そっちのVCルームに『初顔合わせ』っていう部屋があるの見える? 一度通話を切ったらそっちに入ってもらえる? 私はエフィ達に招待を送るわ》


「はーい」


 そんな感じで、私の顔合わせに向けた準備は着々と進んでいくのであった。

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