エリサちゃんの武器!
「おつかれ、奈苗。何とか勝てたね!」
「ほんと何とかだよ〜。」
広いバトルフィールドから、元の狭い石造りの部屋に戻ってきた。初戦闘を終えた私をエリサちゃんが笑顔で迎える。
「やっぱり盾で格闘ゲームは厳しいよ…。」
格闘ゲームにおいて、攻撃手段が無いというのは致命的だ。一対一で守備に徹していても、良くて引き分け。むしろ負けることの方が多いだろう。
「…エリサちゃん、やっぱりこの武器ハズレ…」
「いやいや!武器にハズレなんて無いよ!…多分。」
「多分って言ったよね!?…あ〜私のPWM終わった…。」
せっかく楽しみにしてたのに、出鼻をくじかれたような気持ちだ。
「まあ盾ってのも奈苗らしい武器だよね。」
「…そうかなあ。でもエリサちゃんの武器が魔導書って意外だよね。もっと剣とか近接武器かと思ってた。」
「…あ〜うん。まあねえ…。」
盾が私らしい武器ってのは、しっくりこないが…。
「あ、そうだ。エリサちゃんの戦ってるところも見たいなあ。」
「…ええ!?私!?」
「うんうん!経験者の実力、見せてよ!」
エリサちゃんは発売日からやっているので、もう半年以上プレイしている。かくいう私はエリサちゃんに誘われてPWMを始めたクチだ。
「…しょうがないなあ。じゃあ見せたげる!」
そう言うとエリサちゃんはメニューを操作し始めた。また光に包まれたと思ったら、バトルフィールドに来ていた。今度は観戦者として、だが。
CPUのレベルは…。MAXの9!?さすがはエリサちゃん…。やりこんでるなあ…。
「…よーし。じゃあ見ててね、奈苗!」
「うん!頑張ってね、エリサちゃん!」
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『Battle Start!!』
まず最初に動いたのはCPUだ。私の時とは違い、大きな刀を腰より低く落として突進してくる。レベル1のCPUとは動きが明らかに違う。
エリサちゃんが動いた。左手に持っているのは…ノート?
「…っ。『ダークバインド』ッ!」
エリサちゃんの言葉に反応するようにノートが光り、突き出した右手から黒い光が放たれる。CPUに命中し、光が敵の回りを漂う。見るからに動きづらそうにしているCPUを見ると、おそらく行動阻害系の魔法だろう。HPバーもほとんど削れていないようだ。
すかさずエリサちゃんはノートのページをめくる。
「『シャドウレイ』ッ!」
動きを止めているCPUに向かって、新たな魔法を繰り出す。今度もしっかり命中し、HPバーをドンドン削っていく。
CPUもやられっぱなしではない。行動阻害魔法が切れたのか、エリサちゃんの魔法をかわす。
エリサちゃんのHPは全く減っていないが、CPUのHPバーを見ると半分近くまで減っていた。
「エリサちゃん…強い…。」
CPUがエリサちゃんに向かって刀を切り上げる。エリサちゃんはそれをギリギリでかわし、またノートのページをめくる。
「…くっ!『ブラックウィンド』ッ!」
エリサちゃんの右手から黒い突風が吹き荒れる。まともに食らったCPUが、かなり吹き飛ばされる。距離さえとれば魔法に分がある。
「今だっ!『邪神黒炎波』ッ!!」
エリサちゃんの右手から黒い炎が放たれる。吹き飛ばされ体制の整っていないCPUは避けることも出来ず…。
「You Win!!」
圧勝だった。CPUとはいえレベル9の敵に何もさせない戦いだ。
「…ふぅ。どうだった?」
「すごいねエリサちゃん。完勝だよ。」
バトルが終わり石造りの部屋に戻ってきた。
「まあね。CPU相手じゃ負ける気もしないよ!」
対人戦もやっているであろうエリサちゃんなら、CPUは相手にならないのだろう。
「その『ダークグリモア』!カッコイイよねえ…。普通のノートみたいだけど、色んな魔法が使えるんだね。」
「…う、うん。魔法を使うには使いたい魔法が書かれたページを開かないとダメなんだけどね…。」
なるほど。好きなように魔法を使うには、使いたい魔法が書かれたページを正確に開かないとダメなのか。使いこなすにはかなり努力が必要そうだ。
「でもいいなあ。私も盾じゃなくて魔法の杖とかが良かったなあ。」
「まあまあ。盾にもきっと使い方があるはずだよ。これから考えていこ?ね?」
エリサちゃんはホントに優しいなあ…。
「あっ!もうこんな時間だ!夜ご飯食べたら、またやる?」
「もちろん!」
夜ご飯を食べた後、またエリサちゃんと合流した。一通りCPU戦をこなし、十二時を回った頃、明日も学校なので解散となった。