初めてのバトル!
私を包んだ光が消えた時、既にそこはバトルフィールドだった。
「奈苗!前にいるソレが敵だよ!一番弱い敵だから、気軽に戦ってね!」
「…気軽って…。私初めての戦闘だよ…!?」
私の少し前に、全身甲冑を着込んだCPUが立っている。右手には片手剣を持っているようだ。
私も剣だったらなあ…とか思っていると、視界の上の方に表示されている『試合開始まで:30秒』の数字が減っていくのが見えた。
「ルールは知ってると思うけど、一応!相手のHPを削り切るか、相手を場外に出したら勝ち!円の外に出たら場外負けだから気をつけてね!」
エリサちゃんはバトルフィールドから一段低い所から応援してくれてるみたいだ。
「…大丈夫!ルールは前に調べたから!」
バトルは直径10メートルの円の中で行われる。この円から出た時点で場外負けになってしまう。
「でもこれじゃ勝てないと思うんだけど!?」
何せ私の武器は盾だ。攻撃する術なんて何も無い、武器とも言えないような、もはや防具といった方が正しい気がする…。
『Battle Start!!』
「…ちょっ!もう始まるの!?」
「とにかく武器を構えて!来るよ!」
武器顕現ボタンを押し、左手で盾を構える。
CPUは片手剣を振りかぶりながら突進してくる。一番弱い敵だけあって、動きも遅い。振り下ろされる剣に合わせて盾を突き出す。
「ギャイーン!!」
少しの衝撃はあったが、無事受け止められたようだ。私のHPバーは少しも削られていない。攻撃を防がれたCPUは大きくよろけながら後ずさる。
攻撃を防いだ盾は、内側からキラキラしたものを少し撒き散らした。
「…これが回復出来る光ね…。」
白盾から撒き散らされた光は、身体に触れると少し温かい気がする。
「攻撃からは守れたけど……。どうやって勝つの!?」
「盾でガンッて殴ろ!それか盾を構えて突進だよ!」
エリサちゃんがアドバイスをくれる。よおし。じゃあこうして…。
「…えーーい!!」
両手で盾を持ってCPUに向かって走ってぶつかる。
「ガンッ」と鈍い音が聞こえる。これならどうだ!とCPUのHPバーを見る。
…ほんの少しだけ、1ドットだけHPバーが減っていた。
「…これ、どうしよエリサちゃん!?」
「えーと…。削り切るのは無理そうだね…あはは…。」
「ダメじゃんこれ!!」
私の盾にぶつかられたCPUが剣を振りかぶる。すかさず盾を構える。
「ガキン!」とさっきよりも少ない衝撃を受け止めた白盾は、先程より更に少ない光を撒き散らした。
衝撃の強さによって、光の量が変わるんだ…。そう思っていると、CPUの次の攻撃が来る。
「ガキン!」
CPUの剣は、一番弱いだけあって威力もスピードも全然だ。ただ私は防ぐことしか出来ず、受け止める度に光を撒き散らすだけ。
「場外に出す…のは無理か…。突進してもビクともしなかったし…。」
「奈苗!これはホントに最後の手段だけど…!耐えて!制限時間が切れたらHPの多い方が勝ちになるから!」
「…ええ!?このまま耐えるの!?」
CPUは規則正しいリズムで私の盾を攻撃し続けている。受け止めるには問題ないが、制限時間の残りは…あと二分!?二分間も攻撃を防ぎ続けるってこと!?
…でもそれ以外に勝ち筋は無い気がする…。とにかく耐えるんだ!
「ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!」
CPUが剣を振り下ろす。
私が盾で防ぐ。
CPUが少しよろける。
白盾がほんの少しキラキラを出す。
CPUが体制を整える。
また剣を振り下ろす。
また盾で防ぐ。
………。
『Time Up!! You Win!!』
…永遠にも思えた初のCPUの戦いは、私の勝ちで幕を降ろした。